ショートショート#8 深夜バスでスカイツリーへ
「スカイツリーに行きたい」と思っていたのに、現在地はなぜか通天閣だ。
別に大阪に行きたかった訳ではない。
住まいは名古屋だ。
わざわざ深夜バスに乗ってやってきたのだ。
4月に就職して以来、何もかもがうまくいかない。
職場の対人関係も、上下関係も。
友人関係も、交際関係も。
夜、ミミズクが鳴く
対人関係は恭しく
上司との関係は疎ましく
週末が楽しみで仕方なく
夜、ミミズクがせわしなく鳴くように私は働く
楽しみで仕方なかった週末に行きたくもないところにいるというのは残念極まりない。
後悔の念が募った。
高速バスターミナルで泥酔する程、酒を飲むことはないだろうと、自分の行いを憂いた。
その上、アイマスクをして深夜バスに乗ることはないだろうと。
未だにアルコールの鈍重感が頭をもたげている。
とりあえず通天閣周辺を歩いてみることにした。
夜は神経が過敏になり
時計の音が心に響く
自分の心を広く
明日の私は自分らしく
ボヤーッと串カツ屋が見えてきた。
今晩はここで一杯やろう。
その後のことは、なるようになる。
夜、ミミズクがせわしなく鳴く
せわしなく鳴いているのに、なぜか静寂
この小説は以前書いた「詩(1) 夜、ミミズクが鳴く」をショートショートに書き直してみたものです。併せて読んでいただけると嬉しいです。