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エッセイ)愚兄賢弟
私には5つ下の弟がいる。残念な兄とは違い昔から頭も良く、現在は公務員として毎日ちゃんと働いてる。
子供の頃、祖母が
『仲良く分けて、買いなさい』
とオヤツ代として500円玉をくれた。
私がお金を預かり弟と2人で近所の駄菓子屋さんに行く事にした。弟は小学1年生だったが公文のおかげで、既に小学校で習う算数は大抵できるほど頭が良かった。駄菓子屋さん迄の行きすがらに
『500円貰ったから半分ずつな』
と伝えた。
2人で駄菓子屋に入ってお菓子を選ぶ。
こういう時に優柔不断な私は選ぶのに時間がかかる。弟はすぐに選んでお会計をしてもらい、店員さんに、お金は後から兄が支払う事を伝えてご機嫌で先に家に帰って行った。
暫くして、自分もやっと250円分のお菓子を選んでお会計をしてもらった。
既に弟が250円分買っていて、自分も250円分買ったんで500円玉を渡して帰ろうとすると、
『150円足らないよ』
えっ?足らない?ぴったりの筈なんだけど…。
確認すると弟は400円分買ったみたいで、私の分は100円しか残っていなかった。仕方ないので足らない分のお菓子は返却して100円分だけのお菓子を買って帰宅した。
帰宅後に弟を捕まえて
『なんでそんなに買うの?お兄ちゃん100円分しか買えやんだやん!』
と怒った。
『そんな怒らんといてよ。好きなん持っていっていいから』
弟はそう言って自分の袋を差し出した。
袋の中にはチョコレート系のお菓子しかなかった…。私は幼少期にチョコの食べ過ぎで大量の鼻血を出して以来、チョコレートは食べられなかった。
『食べられるやつないやん!』
私は弟の頭を叩いて、袋を返した。
弟は半ベソをかきながら、
『痛ぁ。お婆ちゃんは仲良く分けろって言うてたやん。』
と私に訴えた。
公文ではしっかりと算数を学ぶだけでなく、
生きる為の知恵まで学んでいた様だ。
家の弟は本当に賢い…。
昔から今も変わらずに…。
終わり