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建材メーカー訪問記 vol.7 吉光工業

2025年2月初旬、弊社サイト「建材ナビ」掲載企業の
株式会社吉光工業様の決まった案件の施工現場へ訪問させて頂きました。

今回採用頂いた、東京近郊のマンション現場の施工事例

今回のご訪問では製品への思いや、今後の展望、昨今の建築業界の動きでについて等、メーカーかつ工事店である吉光工業様ならではこその思い、感想を頂けました。


1.Woven Ceramic Echizenのコンセプト、魅力について

よく県産材という言葉が上がるけれども、
県が違っても、木材自体にはさほど違いがないのが現状でした。

この製品のコンセプトとしては、繊維王国・福井と呼ばれる繊維産地と、
約850年前の平安時代末期から始まった越前焼
良質な粘土が取れる地域で戦国時代には作られていた越前瓦
組み合わせる着想から、 福井県の歴史を内包した新しい県産材です。

平織状の立体格子は、継ぎ目がわからず
一枚の布のように大面積を覆うこともでき、
風や光を通し、視線を遮ることで
都市と暮らしの間に、ゆるやかな緩衝帯を作ることができます。

越前瓦は、北陸の厳しい気候に対応する為、独自の技術を磨いてきました。吸水率が低く、耐寒性に優れた瓦が生み出されます。
また、重い雪質にも耐える強度も生み出します。
その強度は、JIS規格が定める曲げ破壊荷重1.5kNを大きく上回り、
倍近い数値を誇ります。
越前瓦の低い吸水率は、寒冷地でも安心してご利用いただける性能です。

還元焼成で生み出される優美な「銀鼠」色は、
自然と融和する落ち着いた色合いで福井の街並みを彩ってきました。

スティーブ・ジョブスが親しんでいた曹洞宗の大本山である永平寺や
歴代福井藩主の菩提寺である、臨済宗の大安禅寺など、 福井の歴史ある建物も、越前瓦が葺かれています。

歴史を、新たな形で纏う。 そういった点に価値を感じる方に
提案したい商品です。

▼ 株式会社吉光工業 製品一覧 ▼

2.今後の展望について


まずは認知を広げて国内で使ってもらえる機会を増やしたいです。
ホテルや邸宅、店舗等のプロジェクトでの採用に加え、
アルミフェンスに代わるエクステリア商品としての使用方法も
注文しやすく、使いやすい形態でまとめていきたいと考えています。

越前瓦は銀鼠と窯変の2色展開ですが、
地域の風景を作っている釉薬・いぶし等での表現依頼にも対応できるように、 を進めていきます。

他にも織物状の意匠を実現するための特許を軸に、
海外メーカーとのライセンス契約・代理店契約を進めていき
海外展開もチャレンジしていきます。

阪神淡路大震災以降、 瓦業界はずっと右肩下がりの状態が続いていて、
越前瓦も産地としては縮小の一途でした。

一連の販売活動を通じて、
越前瓦の産業振興と、瓦の供給の持続化に貢献して、
大きく言えば、地域の風景を守る一助になればと思います。

店舗での使用例(窯変) 「御料理 小松屋」

3.昨今の建築業界の動きについて

人口減少、価格高騰、職人の高齢化が気になる3大要素です。

仕事の減少と職人の減少のスピードが同じであればいいですが、
古い建物をしっかり直せる技術者を育てられる環境を
どう組織的に、経済的に実現していくか
が工夫がいるなと感じています。

建築は総合芸術で、年々知識と経験が深まっていくと
見えてくるもの、実現すべきものが変わってくると思います。
個人的には、地域資源、歴史、日本らしさという部分の再考
環境的にも経済的にも持続的にしていくことに、
設計者としてどう関わっていけるか、
現場に近い位置での接点をもっと増やしていけるかに
関心と行動が集まるといいなと思います。

自然素材で再利用出来る点も大きな魅力(色: 銀鼠・窯変)
実際の現場で撮らせて頂いた原寸サイズ

4.メーカー様より伝えたい事


屋根・外壁・雨樋の工事をしている当社は、
新築やリフォーム、修繕などの現場にいます。

田舎の建物の屋根を見に行くと、 日常に装飾の文化が組み込まれていて、
身近な素材を使いながら、他とは違うものを実現する
という
職人の想像力を感じさせながら 地域としては、
素材的な統一感もあり 落ち着いた佇まいを感じます。

都市部では発想力・想像力・技術力が詰まった建築が実現しており、
幾何学的に自由な形態を実現しようと思うと、
瓦には制約が多く、金属等の資材にはかなわない部分もあるなと思います。

ただ、焼き物の魅力、瓦の魅力という点で考えると、
自然素材で、揺らぎがあり、耐久性が高く、一枚から交換可能
その良さを改めて新しい形で表現した本商品が、
都市部に取り入れて貰えたらと思います。

また、織物状の構造で特許を取得していますので、
違った織り方なども新たに開発していきたいと考えてます。
デザイン・製造・施工がチームで動いていますので、
こんなの作ってみたい等の問い合わせもお待ちしてます。

立体的で重量感もありながらも、軽やかな印象を持つ本製品が、
瓦離れが続く現代で、改めて瓦の話をする機会となり、
身近な素材の事、地域の歴史の事を考えてもらえる事を期待しています。

越前瓦を活用した新しい建材「Woven Ceramic Echizen」

5.まとめ

今回吉光工業様とお会いし、施工現場を見ながらお話を聞かせて頂き、
福井への思いと越前瓦の可能性に深く感銘を受けました。

また、実物を拝見した際に写真以上のインパクトと質感に驚きました。
想像以上に実物は軽く、それでいて表面は瓦の質感
組み合わせると意匠性の高いファサードに変化するという、
「Woven Ceramic Echizen」の可能性を実感しました。

今後も東京を始め、様々な所で
吉光工業様の製品を見る機会が増えることを期待しています。



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