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[すこし詩的なものとして]0168 ほおずきが落ちる

記憶の断片に灯るのは
おぼろげな灯りと
ビルの池の境目を区切る
一直線の境界線
辿り着くのは弁天堂
線香の匂いと
夏風のあたたかさが
背中にまとわりつく

鬼の灯りと書いた
それに照らされ人々の影が落ちる
重ねる口は
意外と冷たかった

どこかから聞こえる
祭りの音は
世界と世界をつなぐ
テープレコーダーは
かりそめの儀式
知らないどこかは
その先の町

飾るほおずき
風に揺れる
いっさいの夏はここで燃える
鬼の灯りに照らされて
一夜のくびきは
影絵のようにうっすらと
然もありなん

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記憶の片隅に歩いた道には、小学生が育てる朝顔のように、画一的にほおずきが並んでいる。見た目に美しいとは思わなかったが、あのフォルムだけはいつまでも明るく記憶に残っている。割ると現れる実は、トマトのようだが、食べられるのかわからずに、月日が経った。

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