ケンヨウ

日々の思いや鬱積したものを文章にしてみようとはじめました。池袋に生息中。小さな出版社で…

ケンヨウ

日々の思いや鬱積したものを文章にしてみようとはじめました。池袋に生息中。小さな出版社で働くフツーのサラリーマンです。 BOOTHにて、初めて作ったZINE「避雷針」を販売しています。 https://ken-yo.booth.pm/items/5978746

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  • ケンヨウの階層

    自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。

  • コトバでシニカルドライブ

    頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。 その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴ります。

  • すこし詩的なものとして

    言葉を書き留めていきます。

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[ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

 たぶん誰も気にもしていないだろうと思いますが、今年のはじめの投稿で、ひっそりとしめやかに宣言したこと。あれからずいぶんと時が経ってしまい、当初の予定である春は過ぎ、いつも以上に暑い今夏、ようやく宣言していたZINEが出来上がりました。  先日の投稿で一応のお知らせをさせていただきましたが、販売窓口の方の準備も整いましたので、改めてお知らせいたします。  僕が、初めてnoteへ投稿したのは、40歳を目前とした2019年の8月でした。そこから「毎週火曜日の投稿」という勝手気ま

    • [ちょっとしたエッセイ] 十人十色のエイリアンズ

       会社の屋上に上がった。すこし厚めの扉を開けると。風がワーっと吹き荒んだ。夏のある日。空を見上げると、雲がもくもくと奥の方に広がっている。雨の気配はなく、青空はいつも以上に青かった。すると、北の方角からまっすぐ南の方へ進む飛行機が、頭上を駆けた。するとそんな間隔も空けずに、また大きな飛行機が続くように空を駆けていた。しかし音もなく進むその鉄の塊は、どこかこの世のものではないような気がした。  先日仕事仲間と飲んだ後、カラオケに行くことになった。そんなに気を遣う間柄でもないの

      • [ちょっとしたエッセイ] 僕に東京を教えてくれる人は、もういない

         とある休みの日。急に暇な時間ができたので、スマートフォンでどこに行こうか調べていた。渋谷や新宿、上野…いや面倒くさいな。時計をぼーっと見ながら出掛けあぐねていた。でも、せっかくできた時間だからと、とりあえず外へ出て電車に乗り込む。電車に乗れば、ものの数十分程度で大きな街へ出られる。東京近郊に住んでいると、娯楽には困らない。結局、映画館にふらっと入り、終わったら近くのカフェでお茶を啜り、優雅な時間を過ごしてしまった。生まれて此の方、東京があまりにも身近で、そのありがたみも感じ

        • [すこし詩的なものとして]0169 陽炎

          アスファルトが吐き出す熱気に、蝉の声が重なる。 入道雲は、まるで孤独を映すように、モクモクと広がりを見せる。 雑多な音が織りなすのは、夏の交差点。 汗ばむ肌に、仄かなしょっぱさを覚える。 路地裏の夕焼けは、茜色に染まり、洗濯物が、風になびく。 子どもたちの笑い声、母親の呼ぶ声が混ざり合う。 しかし、この風景は、永遠に続くわけではない。 明日になれば、また違う景色が広がっているだろう。 人は孤独になるために群れをなし、 やがてくる孤独は、向こうに見える夕暮れに溶け出す。 やが

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        [ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

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        記事

          [ちょっとした物語] 花火の降る夜

          ふと、スマホを見ると通知があった。メッセンジャーアプリを開くと、ある女の子からのメッセージだった。 「あの曲最高でした。いい夢見れそうです」 なんてことはない。飲み会で知り合った彼女とのやりとりの中で、音楽の話になり、自分の趣味趣向を語った結末に今がある。なんの目論見もなしに、呆れられることを前提に話しただけだった。 「そんな気に入ってくれてこちらもうれしいよ。いい夢を!」 反射的な言葉を並べて返事をした。特段、この先どうしようなど考えることもなく、僕はソファに横たわ

          [ちょっとした物語] 花火の降る夜

          [ちょっとしたエッセイ]水に流れなかった思い出

           今朝、通勤の道すがら、ある家の軒先に小さなビニールプールで子どもたちが遊んでいる様子を見た。ひとりの子どもがホースから出る水で他の子どもにビャーッと水をかけて楽しそうだった。しかし、時にホースというものは人の想像を超える動きをする。目一杯蛇口をひねったであろうホースは、蛇行に蛇行を重ねて、通勤時間帯の人の波に向かって暴れ出す。水を避けるスーツを着た男性は、一度子どもたちの方にキッとした顔を向けるが、この暑さの中、諦めたように駅の方へ視線を変え、何もなかったように歩き出した。

          [ちょっとしたエッセイ]水に流れなかった思い出

          [ちょっとしたエッセイ] あの日の空も青かった

           今でこそ、映画を見たいなと思ったら、ネットで調べて映画館のホームページから目ぼしい作品を選んでは、その場でポチッとチケットを購入して、座席も確保して、なんの不安もなく映画館へ行けるようになった。単純な性格なので、便利な世の中になったなと、ただただ感心しているのだが、情報を自分から探さなくてはいけなかったり、ふとした偶然で出合う作品はずいぶんと減ったなと、少しひねくれた考えを持ってしまう。  僕が幼かった昭和の後期は、最寄りの駅前に映画館があって、駅の構内などには上映中の映画

          [ちょっとしたエッセイ] あの日の空も青かった

          [ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

           夏も本番を迎えて、なんだかじっくりと煮込まれる鍋にいるような感覚を覚える。今年も暑いな、そんなことを毎年言っているような気がするけど、実際はどうなんだろう。よくわからない。けれども、なんとなく夏を過ごしていると「ああ、生きてるな」っていう得体の知れない生命の本音のようなものが体に流れてくるから不思議だ。暑すぎて、何にもしなくても、暑さから命を守る生物の本能的なものなのかもしれない。仕事をしていても、頭はスッキリしないし、効率も悪い、だから先述のような言い訳を自分にしながら今

          [ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

          [すこし詩的なものとして]0168 ほおずきが落ちる

          記憶の断片に灯るのは おぼろげな灯りと ビルの池の境目を区切る 一直線の境界線 辿り着くのは弁天堂 線香の匂いと 夏風のあたたかさが 背中にまとわりつく 鬼の灯りと書いた それに照らされ人々の影が落ちる 重ねる口は 意外と冷たかった どこかから聞こえる 祭りの音は 世界と世界をつなぐ テープレコーダーは かりそめの儀式 知らないどこかは その先の町 飾るほおずき 風に揺れる いっさいの夏はここで燃える 鬼の灯りに照らされて 一夜のくびきは 影絵のようにうっすらと 然もあ

          [すこし詩的なものとして]0168 ほおずきが落ちる

          [ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

           先日ニュースを見ていたら、東京での若者の孤独死が、この3年間で700名を超えたという話題を目にした。老年層の孤独死が増えてるいるのは前々から問題となっていたが、若年層においても孤独死が増えていることに、なんだか居た堪れなくなった。背景には、社会との接点や関係を断ち、生活能力や意欲を失ってセルフネグレクトに陥っているということがあるらしい。これだけ人がいる場所で、そんな事実があることにどこか驚くとともに、なんだか人ごとでもないなというのが、感想だった。友人や家族がいても、どこ

          [ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

          [ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

           夕方に外で打ち合わせがあったので、今日はこのまま会社に戻らず、仕事を終えることにした。最寄駅についたのは午後5時過ぎ。このまま家に帰るのは少しもったいない気がして、駅中にあるファストフード店でコーヒーでも飲むことにした。夕方なのにも関わらず、外の気温は30度を越している。季節のスイッチが壊れているような、初夏の一日。夏はこれからなのに、すでの残暑のような厳しさが背中から押し寄せていた。冷房の効いたこの店は、そんな灼熱の世界から逃れてきた僕にとって、椅子の硬さややかましい店内

          [ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

          [ちょっとした物語] 彼女のシーン

          海岸を歩く人たちが、砂に長い足跡を残していく。 過ぎた春を洗い流す波は、行っては来てをくりかえし、その小さな足跡をも連れ去ってゆく。 その去りゆく人たちを見上げては行方を気にして、僕は少し不安な気持ちになる。 キラキラときらめく水面を眺め、僕は大きく息を吸った。 まもなく日が沈むそのひととき。あたりは夏の湿った空気が潮風に乗って、頬をかすめる。 ポケットでひとりかなしく震えるスマートフォンを見つけた。 画面を見ると、「うしろ見て」とだけの簡素なメッセージが浮かんだ。 僕は

          [ちょっとした物語] 彼女のシーン

          諦めにも似た願いを七夕に添えて、選挙に行ったけど、結果に対して、やっぱりねと、やはり諦めそうになる。でも選挙は止められないし、投票し続けるしかない。 織姫、彦星を横目にしちゃうくらい自由に天の川を泳ぐ魚になりたい。 https://note.com/kenyo/n/n93ea90e6382c

          諦めにも似た願いを七夕に添えて、選挙に行ったけど、結果に対して、やっぱりねと、やはり諦めそうになる。でも選挙は止められないし、投票し続けるしかない。 織姫、彦星を横目にしちゃうくらい自由に天の川を泳ぐ魚になりたい。 https://note.com/kenyo/n/n93ea90e6382c

          [すこし詩的なものとして]0167 忘れないための生と

          薪をくべるその後に 点火のための余白が見つからない ラジオの音は たゆたう言葉の形を失い 音と火と 燃えるよすがを 探している ルビは小さく この漢字の読みが 誰かの放った声のように なんだか違った 意味で踊り出す 湿った新聞紙に 世紀の大発見がなかなか燃えず 薪は白々とした煙だけを 産んでいく ここにいる 生きた人間と やがて死ぬ人間と すでに死んだ人間と まだ生まれぬ人間と 燃え盛る火を想像しながら 煙の中で交差する 音だけが この世界のよすがになろうか 目は霞み

          [すこし詩的なものとして]0167 忘れないための生と

          [ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

           仕事柄、深夜にメールが届くことがしばしばある。内容にもよるが、すぐに返信してしまうことが多い。特に、フリーランスの仕事相手には、すぐ返信してあげた方がいい場合が多い。担当者として、一区切りの合図というものがあると、お互いに安心するからだ。  先日、深夜2時に届いた、とあるデザイナーから少し様子の変なメールが届いた。ひと通り依頼している制作物のデザインのことが書かれていたのだが、最後に「今日は星がきれいです」とだけ書かれていた。風呂上がりの暇にそのメールを見たので、とりあえず

          [ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

          [すこし詩的なものとして]0166 梅雨はなにかの諦めのように

          カーテンの隙間に見える 目前に迫る梅雨は なにかを諦めたかのように 湿った衣を羽織っている 感情は手に入れた 生命の進化は もしそれが不要なものであるならば 身につくことはない 僕らは 感情を押し殺すことに 慣れすぎてしまった 稚拙で効率的ではないとするのなら 僕らは自らを否定することになるのだろうか 海にボトルを投げたところで 行き先は知らない 人生の崩壊なんて トイレにいても起きる 恥ずかしさが追いつかないうちに 頬を撫で 額を撫でる カーテンの隙間に見えるそれ

          [すこし詩的なものとして]0166 梅雨はなにかの諦めのように