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南極×SF×冒険=第64回江戸川乱歩賞!?『到達不能極』を読みました。

江戸川乱歩賞受賞作を読みました。
2017年の第63回江戸川乱歩には受賞作がありませんでした。

そして、次の年の第64回目の乱歩賞の受賞作が本作です。南極へのツアー・戦時中の極秘作戦・ナチスのオカルト研究など大きなテーマがはいっているにもかかわらず、軽やかに描く作者は素晴らしいです。

新人賞ぽい粗削りで、アイデアでサクッと書かれていて、個人的にはとても面白くよめました。感想と、思ったことを綴ります。

あらすじ
南極遊覧中のチャーター機がシステムダウンを起こし不時着。添乗員の望月拓海は、乗客のランディ・ベイカーと物資を探しに「到達不能極」基地へ向かう。そこは大戦中、ナチスが極秘実験を行なっていた基地だった―。過去と現代が大胆に交錯する、圧倒的スケールの第64回江戸川乱歩賞受賞作。『間氷期』併録。(「BOOK」データベースより)

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江戸川乱歩賞は新人に贈られる新人賞です。また、広義な推理小説に対して贈られます。乱歩賞を受賞し、のちに、直木賞など有名な賞を取る方は多いです。ガリレオシリーズ等で有名な東野圭吾、半沢直樹シリーズで有名な池井戸潤など、ほかにもたくさんいらっしゃいます。

本書『到達不能極』が推理小説ぽくありません。SF冒険小説といった方がしっくりきます。ですが、乱歩賞の選考委員が指摘しているように、下調べがしっかりされていて、全体を通して読ませてくる小説でした。

・とにかく文章のリズムが抜群にいい。(今野敏)
・ヒトラーのオカルト趣味を隠し味に使い、半世紀もの時を経て成就するストーリーのスケール感も魅力的だ。(池井戸潤)
・南極の寒さ、そこで生活することの辛さがきちんと伝わってきて、実際に行ったことがあるのかと思えるほどでした。(貫井徳郎)
出典:2018年 第64回 江戸川乱歩賞

選評をみると、特に以下の2つを評価されているようでした。

①リアルが書けていること
南極の寒さや、拳銃の扱い方など臨場感があった。南極観測パートと墜落チャーター機パートでそれぞれ、読者をひきつける描写や登場人物がありました。極論すると、細部がよく書けていたということでしょうか。

②「過去と現在」「都市伝説とリアル」の融合が面白い
2018年に南極で飛行機が墜落するパートと1945年に南極に要人を届けるパートで構成され、全体として、数十年の時間が流れていました。また、ナチスの都市伝説の研究が進み、実験がスタートしました。

ともに、読者を飽きさせない目新しさ、知っていることと知らないこと、身近なことと想像できないことがうまく融合していました。

一方、核心部分の書き方は懸念点になったようです。
それでも、サクサク読めて、とても面白かったです。

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推理小説に贈られる賞で、このような作品もOKなのか!
では、推理小説ってなんだろうか?

と思ったことも確かです。
推理小説等で、出てくる「謎」と「解決」について考えてみました。


コントロールできない事象のこと
事象自体に矛盾があったり、発生過程に論理の飛躍がある。
解決
コントロールできない原因や行動原理が、矛盾なく、説明できること

謎に対して、仮説と検証を繰り返し、解決するのが、推理小説なのかな
という結論になりました。

ただ、小説なので、登場人物が謎に出会い、揺れたり、
動じない探偵が傍若無人に人のプライベートに切り込むことはお約束です。

また、検証する作業は解決の50メートル手前まで、丁寧に描き、
残りの50メートルは探偵役がいっきに駆け上り、説明することもお約束です。探偵役がこの50メートルをいっきに疾走するのが、とても好きな瞬間です。このキレのために、読み込んでいるようなものです。

作者は、コントロールできない事象をつくり、
理解し、分解し、再構成

することが推理小説を書くことでしょうか。
(ハガレンの概念を思い出しますね。)

*

乱歩賞にこの作品を出すセンスと、
乱歩賞にした選考委員のセンスが光る作品でした。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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