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【テンプレ付】Quickwinからはじめよ ~β版プロダクトのカスタマーサクセスがやって良かったこと~

お疲れ様です!
カミナシでCS(カスタマーサクセス)をしている石井といいます。
現在は「カミナシ レポート」のエンタープライズCSと
2025年2月にリリースした新プロダクト「カミナシ 設備保全」のCS立ち上げを担当しています。


このnoteは何?
・新プロダクト「カミナシ 設備保全」のCSを立ち上げる中で実施し効果があった施策 「Quickwinの整理」 について紹介したもの
※実際に使ったスプレッドシートも共有するので、よかったらお使いください!

誰に向けたnote?
・新規事業やリリース前のプロダクトを担当している方(Bizdev、PM、CS)
・プロダクトの価値を端的かつ効果的に伝えたい方(マーケ、営業、CS)
・デモをもっと上手にやりたい方(営業、CS)
・カミナシCSの取り組みに興味がある方



背景/なぜやったのか

2024年7月、COOの河内から「新しいプロダクトのCSやってみない?」と声かけいただき、同年9月から「カミナシ 設備保全」チームにジョインしました。

当時はβ版をリリースしたばかりで、全国の現場を飛び回りながら
テスト運用にご協力いただける企業様探し
・ご契約いただいた企業様向けのβ版キックオフ
を進めていました。

いわば、1回の打ち合わせで「探索・営業・CS」を同時に行っているような状態
その中で 「β版プロダクトの価値をどう伝えるか?」 という課題に直面しました。

課題① 「ない機能」の話に流れてしまう

β版プロダクトには、まだ実装されていない機能が多くあります。正式版に向けて開発を進めている段階なので、お客様とのお打ち合わせでも「こんな機能はありますか?」「こういうことができたらいいですね!」と未来の話で盛り上がることがよくありました。
お客様が期待してくださるのは、本当にありがたいことです。
一方で、今すぐ使える機能の価値を伝えきれないまま打ち合わせが終わってしまうことがありました。
私自身、チームにジョインしたばかりの頃から、開発チームが作り上げた「今ある機能」の素晴らしさに感動していました。それだけに、それをうまく伝えられないもどかしさを強く感じていました。

課題② デモのクオリティが安定しない

限られた時間でプロダクトの価値を伝えるには、デモやハンズオン(お客様と一緒にプロダクトを触ること)が最も効果的です。
しかし、私は長くリテンション(導入後の中長期的な支援)を担当していたこともあり、短時間でのデモに馴れていませんでした。さらに、アドリブに弱い性格も相まって、私のデモは極端に振れがちでした。
台本をガチガチに作ると、機能の説明をただ読み上げるだけになる。
逆に、即興でやろうとすると、何となく伝わるものの、肝心なポイントがぼやける。
端的に言って、下手でした。デモをするたびに、「もっとこうすればよかった」と反省することばかり。
ただ、その反省には良くも悪くも再現性がありました。ならば、デモを成功させるポイントを整理し、仕組み化すれば、誰でも一定のクオリティで価値を伝えられるのではないか? そう考えました。

「誰に対しても、確実に価値を伝えられる仕組み」を作るため、Quickwinの整理に着手しました。

Quickwinの整理とは?

一言で言うと、「お客様がプロダクトを触った瞬間に『お、ええやん』と思えるポイント(Quickwin)を明確にし、スムーズに案内できるようにする」取り組みです

💡 「カミナシ 設備保全」のQuickwin整理では、以下の要素を定義しました

※自己流に(勝手に)定義したものなので、特に「アウトプット」の定義などは一般的によく言われるものと違っているかと思いますが、この場限りの表現としてご容赦ください

最初は「アウトカムを合意する方法から考える」という順番で進めようとした(これまでの自身のCS活動もアウトカムから着手することが定石だった)のですが、
限られた時間の中で端的にプロダクトの良さを手触り感持って知っていただくにはむしろ、「Quickwinをどれだけ体感いただけるか(どれだけお客様に「お、ええやん」と思っていただけるか)」という体験にフォーカスした方が良いと考えました。
※もちろん、アウトカムから伝える場合が良いケースも沢山あると思っています。あくまで「カミナシ 設備保全」のβ版においては、Quickwin先行が良かったという意味です。

具体的には、以下の手順でQuickwinを整理していきました

やったこと

Step1. サービスチームにインタビューを実施し、Quickwinを抽出する

まずはじめに、PMの右田デザイナーの佐藤に時間を取ってもらい、一緒にプロダクトを触りながら「どんな想いでそれぞれの機能を実装したのか」「どんな点にこだわったのか」をヒアリングしました。

  • お客様のどんなご意見から実装した機能なのか

  • お客様に見てほしい、推したいポイントはどこか

  • なぜこのレイアウトにしたのか、なぜこの位置にこのボタンがあるのか などなど

自分たちで企画し、100社以上の企業様にヒアリングを重ね作っていったプロダクト。こだわりポイントはどんどん出てきます。
この時点では内容の粒度は一切気にせず、出てきた「ええやんポイント=Quickwin」を全て書き出していきました。

Step2. Quickwinの「推し度」を決める

一通りのQuickwinが書き出せたら、次は優先度付けです。
この時点で沢山のQuickwinが書き出されているわけですが、限られた時間内で全てを等しく伝えることはできません。
むしろ「より刺さるQuickwin」をいかに凝縮させていくかが大事になっていきます。
これまでの商談の中でもWowが大きかったものや、アウトカムとの関連性が高いものから以下の3段階で「推し度」を付けていきました

☆☆☆ →  絶対に伝えたい、プロダクト価値のコアとなる体験
☆☆  →  可能な限り伝えたい、活用範囲を広げるためのポイント
☆   →  お客様に合わせて判断する、細かな機能や利点

この優先度も、最終的にサービスチームに目を通してもらって確定とします。

Step3. Quickwinのトリガーとなるアクションとスクリプト例を記載する

お伝えしたいQuickwinが決まったので、この後は以下2点を決めます

  • Quickwinのトリガーとなる、先方のアクション

    • お客様にどんな操作をしていただくとそのQuickwinが発動するのかを記したもの

    • ハンズオンの際はこのアクションに誘導することを意識します

  • スクリプト例

    • そのQuickwinによってお客様に直接どのような便益があるのか、1−2行の短いセリフにまとめたもの

    • ちょっとしたユースケース、プチ他社事例などもここに含みます

Step4. 新機能追加の都度&実践の都度ブラッシュアップをする

③まででいったん整理は完了なのですが、ここからが大切です。

整理したQuickwinをお客様にご案内していく中で、明らかに大きなWowが発生していたり、逆に自信満々でお伝えしたつもりがあまり響かなかったり、スクリプトになかったキラーフレーズが生まれたり、実践の中でさらに新たな知見が生まれていきます。
また、日々猛スピードで機能リリースが行われていきますので、伝えたいQuickwinの優先度も週次単位で変わっていきます。

実践と実装の度に、内容を見直していきました。

やってみた結果

① 「今ある機能」の価値で勝負できるようになった

当然ながらQuickwinは全て「今ある機能」に関するものだけを整理しているため、その場ですぐにお客様に体感いただけます。

プロダクト価値を手触り感のある状態で体験いただけるようになったことで、その場でハンズオンしながら「たしかにこれは便利だね」「カミナシ、ええやん」と言っていただける機会が増えました。
また、開発予定の機能の話をする際も「今ある機能」に対する好感や信頼を持っていただけていることでより説得力が増したようにも感じています。

② デモに再現性が生まれた

個人的にはこれに尽きます。

それまでは出たとこ勝負で「上手くやれるかはコンディション次第」という状態だったところから、「いつ、誰に対しても、最低限伝えるべき価値を安定して伝えられる」という状態になりました。

また、後述しますが一辺倒な案内ではなくお客様のお困りごとに応じてご案内するQuickwinを切り替えるという「フレキシブルな再現性」を担保できた点も良かったと感じています。

③ 事業的な成果/数字に繋がった

β版プロダクトにおける定量成果としては

🎉 β版テストユーザーのお申し込み件数
   → 120%達成!
🎉 β版テストユーザーから正式版へのお申し込み(有償契約化)件数
   → 同じく120%達成!

と、しっかり実績につなげることができました。
もちろん、プロダクトそれ自体の素晴らしさやチームメンバーの営業力の高さなど様々な要素が積み重なった結果ですが、
Quickwinを通じて「今ある機能」での価値実感をお客様に持っていただけたことも上記数字の要因の一つではないかと感じています。

ポイント/大事にしたこと

① プロダクトチームの想いを出発点にしたこと

PM右田がnoteに書いている通り、カミナシの開発陣は「現場ドリブン」というバリューに基づき、徹底的な顧客理解を経て一つ一つの機能を実装してくれています。

途中からチームにジョインした私が想像や理屈のみでQuickwinを設定するのは、それまで泥臭く現場に向き合い、考え抜いてプロダクトを作ってきた彼らに失礼だと感じました。なにより、プロダクトの真の価値をお客様に正しく届けることができません。

「現場ドリブンな作り手の想い」を出発点にすることで、改めて「カミナシ  設備保全」が目指す先について理解を深めることができましたし、なによりプロダクトのことを心から信じ、好きになることができました。

② あえてひとつながりのスクリプトにしなかったこと

Quickwinを整理した後、それを元に一つの台本にまとめることもできたのですが、あえてそれはしませんでした。
お客様によって伝えるべきQuickwinが変動するケースが多いと感じていたからです。
そのため、スクリプトはQuickwin単位、行単位でキラーフレーズを記載するのみに留め、順番を入れ替えられる余白と柔軟性を残しました。
「こういうときはこういう組み合わせと順番でQuickwinを伝えよう」と考えるのは格闘ゲームでコンボを組み立てるような感覚で楽しかったですし、商談を重ねる毎に自分の中で案内の引き出しが増えていく感覚もありました。
アドリブが苦手な私にとって、「即興のようだけど、伝えることは決めている」という絶妙なラインはちょうどよかったです。

手順のおさらいと、スプシのお裾分け

…というわけで、ここまで読んでくださった方へ
実際にQuickwinの整理に使っていたシートを汎用的にしたものをお裾分けいたします。
どうぞ!!!

シートの中身に紐づけた具体的な手順は以下の通りです。

① C列にプロダクトのQuickwinを書き出す
  ※できれば作り手にヒアリングしながらがおすすめ
② A列にQuickwinの「推し度」をプロットする
③ D列に「Quickwinを実感いただくための操作」、E列に「Quickwinを伝えるためのフレーズ」を記載する
④ 実践を重ねながら定期でブラッシュアップしていく

※その他、B列には「伝える順番」の項目を設けています。流れがある程度決まっている場合は順番を記載していただくと、F列を上からなぞるだけで簡易デモが行えるようになって便利です。

ぜひ皆様流にアレンジいただきながらお使いいただけますと幸いです。
(「こんな使い方したら良かったよ!」があれば是非教えて下さい!)

これから

アウトカムマップを元にCSフローを設計しています

長々と書いてきましたが、ここまでやりきって可能になったのは「プロダクトの良さを知っていただくこと」まで。
CSとしてはむしろここからがスタートで、「プロダクトを通して成果を出していただくこと」こそが責務となります。

次なる取り組みとして「アウトカムマップに基づいたオンボーディング~リテンションフローの設計」を進めています。
Quickwinからはじめたことで、逆にプロダクト価値とアウトカムの輪郭がはっきりしてきた感覚があり、それをまとめて一つの導線にしているところです。
お客様に感じていただいた「カミナシ、ええやん」をさらに広く、深くしていくべく、設計と実践に邁進していきます。

取り組みの概要と進捗についてはまた次回のnoteでご紹介できればと思っておりますので、お楽しみに!

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2024年からマルチプロダクト戦略に舵を切ったカミナシでは、
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ここまで読んでいただきありがとうございました!
それでは!

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