「エビデンスは?」なんて言う前に、普通に見れば分かる
こういうことを言うと度々「エビデンスがない」と批判を受けるが、数字を見るまでもなく普通の感覚で分かることはある。
今日から『セイバーメトリクスの落とし穴』という本の感想を書いていきます!
著者はお股ニキさんというハンドルネームの方で、内容は野球についてかなり踏み込んだものです。
ただ、これから何回かに分けて書くこの本の感想シリーズで、専門的な内容はほぼ取り上げないか、取り上げるとしても丁寧に説明するので、野球をよく知らないという方も安心してください(?)
とりあえず、タイトルに一応触れておくと『セイバーメトリクス』というのは、一言で言うと『データを選手評価や戦略立案に活かそう!』という考え方のことです。
最近はビジネスの現場で『データドリブン』なんて言葉も使われ、データの重要性が日々叫ばれていますが、その波が昨今はグラウンドにも押し寄せてきました。
ただ、本のタイトルは『セイバーメトリクスの落とし穴』になってるので、本書自体の主旨は『最近データとか数字とかに偏重しすぎじゃない?』というものです。
そういった前提のもとで、今後の感想については書いていきます。
ということで、第1回は主題に沿って『普通の感覚の重要性』について話をします。
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今日のnoteの冒頭で引用した一文は、『送りバントは作戦として良くない』という主張を展開したあとの言葉です。
こういうことを言うと度々「エビデンスがない」と批判を受けるが、数字を見るまでもなく普通の感覚で分かることはある。
ちなみに、送りバントというのは、塁に出たランナーを次の塁に進めるために、バッターは打つ代わりにバントをすることを指します。
引用記事:https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201709130002-spnavi
日本はこの自分がアウトになってでも味方を塁に進める、いわゆる『自己犠牲』的な精神が好きな人が多いのか、他の国と比べて送りバントを多用します。
ただ実際のところ、送りバントは作戦としてあんまり優秀じゃないんですね。(時と場合によるという大前提つき)
そんな不合理な戦術に拘泥し続ける日本の野球に、著者のお股ニキさんは苦言を呈したわけですが、やっぱり予想される反論に対する反論が強烈ですね。
『そんなもの数字を見なくたって、普通の感覚で分かる』って、冷静に考えたらめちゃくちゃ雑な反論です。
『普通の感覚』の『普通』ってなんだよー!って話なので...
ただ、まあ一旦ここは『普通の感覚』の定義を『大多数の人が持っている感覚』として、ぼくもこの『普通の感覚』は今後とても重要になってくるなと思いました。
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ここで『普通の感覚』と対をなすのが『データ』、もっと言うなら『セイバーメトリクス』ですね。
ただ、本中でも度々指摘されるんですが、やっぱりデータはどこまでいってもデータで、それが現実世界をそのまま投影しているわけではありません。
なんらかのフィルターを経て、数字に変換されています。
そして、そのフィルターを透過するときに抜け落ちた情報こそが、勝利のカギを握っていたりもするんですね。
そんなとき、その抜け落ちた情報を拾うことができるのが『普通の感覚』なのです。
『データとしてはこういった傾向が出てるけど、実際はこうじゃないのか?』という、定量的な情報だけでは見えてこない真実を導き出すのに必要なのが『普通の感覚』です。
そういった意味で、『普通の感覚』は大事です。
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あともうひとつ、『普通の感覚』が大事な理由があって、『データはデータそのものだけでは使い物にならない』からです。
どういうことかと言うと、さっきも言ったように、データはどこまでいってもデータで、『手段』以外の何者にもなりえません。
そして、その手段である『データ』を使いこなすには『普通の感覚』による『解釈』が必要なのです。
データは見方のわからない人にとってはただの数字の羅列なわけで、そこに息を吹き込むきっかけは、『普通の感覚』がもたらす『切り口』です。
センスのいい『切り口』と『解釈』があってはじめて、そのデータはデータたり得ます。
ということは、これからますますデータ社会、データ野球が進むなかで、逆説的に『普通の感覚』の重要性は高まってくるのではないでしょうか。
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ということで今日は、『普通の感覚』の大事さについて書きました。
データは万能ではなく、現実世界から数字への変換の過程で抜け落ちたものが絶対にある。
それでその漏れを拾うことができるのは『普通の感覚』なのだと。
そして、これからますますデータが大量に収集することができるようになる時代のなかで、その集まったデータをゴミ屑の山にするのか宝の山にするのかは、『普通の感覚』による『切り口』と『解釈』に懸かっている、つまり『普通の感覚』の重要性は高まってくるよという話でした!