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Stay Snake
冬眠から目覚めたその美しいへびは、すぐに気がつきました。守り続けてきた小さな家の気配が、眠る前とは違っていることに。
その白いへびは、むかしむかし、とある川の神様として大切に祀られていました。祠のあるふもとの村は、たとえ大雨が降っても川が暴れることはなく、長いこと守られていたのです。しかし時がたつと村人の数は減り、神様の存在を言い伝えるものが少なくなりました。へびは少しず
『肩の上のじいさん』
六月半ばのある朝、月曜七時半。
眠気を吹き飛ばそうと、洗面台で顔をジャブっと洗う。上を向いた瞬間、鏡の中の俺の右肩あたりで何かがモニョリ、と動いたような気がした。
赤と白の、しましま?
何かいけない物を見てしまったような、イヤな予感がして眼鏡をかける。鏡の中にはボサボサ頭の俺。九百九十円で買った白Tシャツの右肩に、ちょこんと乗っているのは、小さい、じいさん。
『bone』 第15回木山捷平短編小説賞、最終選考通過作品
小説 ああそうか。一年ぶりだ。
姉の家の玄関で、靴を揃えながら唐突に思い出した。あの日、おろしたての靴を見て、亜希ちゃんに似合ってる、と笑美子さんは言ったんだ。ひとり頷きながらゆっくり立ち上がると、
「家内の顔を見てやって」
次郎さんにうながされ、体が硬くなる。
私は、ご遺体をこの目で見たことがない。
「あ、はい。あの、手を洗ってきてもいいですか」
とりあえず洗面所に向かう。柔らかいタオルで