オートファジーとサイヤ人
私はふだん朝ごはんを食べない。
数年前にそのような習慣を捨ててしまったのだ。
朝食をとらないという話を周りにすると、よく言われるのが
「三食食べないと体によくないよ」
「朝ごはんを食べないと元気がでないでしょ」
というもの。
中には「酒の飲み過ぎで食欲がでないんじゃない?」などと、失礼な勘ぐりをする者もいる。
そもそも、一日三食が健康によいという根拠がないという。
朝食をとらない方が健康長寿につながるという研究結果もある訳で、健康法の一つとして実践しているのだと家族などには説明をしている。
嫁は意味がわからないといった様子だが、朝食を用意する手間が省けて助かったと、好きにしろと、特に苦言を呈することもない。
もし同じことを息子が言い出したら、目を怒らせて、首根っこをつかんででも食べさせるだろう。
人によって対応を変えてくれる優しい嫁である。
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ではなぜ私が朝食をとらなくなったのか。
それは「オートファジー」の存在を知ったからである。
この三冊はいずれもオートファジーをテーマにした本である。
特に参考になったのが、三つ目のジェームズ・W・クレメント著「SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿」。
オートファジーを簡単に説明すると。
オートファジー(Autophagy)のautoはギリシャ語で「自己」、phagyは「食べる」の意味。
つまり自己を食べる自食作用のこと。
生物が飢餓状態になったときに、自らの細胞内の不要なタンパク質をアミノ酸に分解し、再利用する仕組みである。
何を意味不明なたわごとを言っているのかと思われるかもしれない。
もう少し詳しく説明すると。
日々の食事により、私たちの細胞にはタンパク質のごみや不要物、有毒物質がたまっている。
それらの残骸や異物を掃除しないと、体の炎症の原因となり、さまざまな病気の引き金になる。
オートファジーが起こることで、細胞内の不要物や有毒物質が除去・リサイクルされ、新しい細胞に生まれ変わるのである。
車の部品やパーツを毎日新しいものに交換すれば、ずっと新車と同じ状態を保てるように。
オートファジーによって、体を若々しい状態に保つことができるのだ。
オートファジーは長く健康的に生きるための究極の解毒機能というわけである。
ちなみにこのオートファジーは、2016年に日本の大隅良典氏がノーベル生理学・医学賞を受賞した理論である。
世間で流布しているトンデモ健康情報のような、「○○○でガンが消えた!」といった類の話ではない。
「若々しい体になる」
「健康で長寿になる」
そんな「ドラゴンボール」で叶えるような夢が、自分のちょっとした努力で手に入るかもしれないのだ。
ではどうやったら、そのオートファジーとかいう奇跡の力が手に入るのか。
多くの方が知りたいのは、小難しい理屈ではなく、手っ取り早い実践方法だろう。
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オートファジーを活性化させる代表的な方法がこちら。
「16時間何も食べない」
これだけである。
今すぐ実行できるうえに、1円もお金がかからない。
むしろ食費が減る分、今までよりもお金がかからなくなる。
「16時間も何も食べないなんて、長寿どころか、16時間後には寿命が尽きているではないか」
と絶望の声が聞こえてくるようだ。
そのような間食が欠かせない人に朗報である。
どうしも空腹が我慢できないときに許されている食べ物があるのだ。
・マカダミアナッツ
・セロリ、ラディッシュ、アボガドなどの野菜。
・コーヒー
これらは「SWITCH(スイッチ)」で紹介されている食品。
「「空腹」こそ最強のクスリ」ではもっと幅広い食べ物がよしとされているが、そちらの本は全体的にエビデンスの記載がないので、上記の食材を選ぶのが無難である。
「SWITCH(スイッチ)」では、年に何度か数日間の断食をおこなうことも推奨されているが、どうしても100歳以上生きたい人や、修行僧を目指す人でもない限り、16時間空腹のプチ断食で十分だろう。
ちなみに、私が実践している方法はこちら。
・夕食は20時~21時までには終わり。
・翌日の午前はお茶とコーヒーのみ。
・昼食前に軽いウォーキング。12時以降に昼食(味噌汁や納豆など)。
・間食はしない。
オートファジーは、運動と組み合わせることでさらに効果が高くなるようだ。
なので、昼食前の空腹状態で軽いウォーキングを取り入れている。
飢えながら食べ物を探し回っていた、太古の人類の記憶がよみがえるようで、体が野生に戻るような感覚が生まれるものである。
「「空腹」こそ最強のクスリ」では、空腹16時間を守ったご褒美に、後は何を食べてもOKという感じで、かなりゆるい方法が認められている。
一方で「SWITCH(スイッチ)」の方は、何を食べてもいいわけではないぞと、食事に対する注意事項が多い。
食べるのを控えるべきとされる代表例がこちら。
・糖質(お菓子や清涼飲料水など)
・穀物(パンや小麦粉など)
・乳製品(牛乳など)
・動物性タンパク質(赤身肉など)
乳製品や肉類は、「羊乳のヨーグルト」や、「放し飼いの鳥の卵」など、推奨されているものもある。
一方で、「砂糖・人工甘味料」や「小麦粉」に対しては容赦がなく、まったくとらないのがよいそうだ。
なので、せっかく頑張って16時間の空腹を我慢したとしても。
「ハンバーガーとシェイク」のような昼食をとってしまったら、必死でオートファジーを起こしている細胞たちは、努力が無駄になったと、悔し涙を流しているかもしれない。
参考までに。
「SWITCH(スイッチ)」で推奨されている、ふだんの食事でとるべきとされる主な食品がこちら。
・マカダミアナッツ
・アボガド
・オリーブオイル
・ホウレンソウ
・ブロッコリー
・イワシやサケなど脂質の多い魚
あとはたまに、放し飼いの鳥の卵、果物、穀物やナッツ類といったところである。
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ドラゴンボールというマンガに登場するサイヤ人は、戦闘民族であるため、いつまでも若々しい姿でいる人種である。
瀕死の状態から復活をすると、戦闘能力が大きく上昇するという特徴があり、主人公でサイヤ人の孫悟空は、腹ペコの状態から満腹になると、強さがみなぎるようになる。
さらには、激しい怒りによって「超サイヤ人」という覚醒モードに入ることもできる。
オートファジーは生物の飢餓状態やストレスなど、生命が危機になるような状態でスイッチがオンになる。
そして、活性化のための主要な食べ物は野菜(ヤサイ)である。
地球人の多くがオートファジーを実践すれば、この先、サイヤ人のような人類に進化する可能性があるのかもしれない。
栄養(タンパク質)の供給が途絶えることで、細胞が危機感を感じ、激しい怒り?によって覚醒する。
体は若返り、力がみなぎってくる。
ちょっと長めの空腹時間をつくるだけで、そんなスーパーパワーを手に入れられるのだ。
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オートファジーに興味はあるが、どうしも空腹を我慢できないという人もいるだろう。
そんな方のために、私が考えたオリジナルの方法を最後に紹介したい。
・夕食は20時を過ぎてもよいから、好きな酒をがぶ飲みする。
・焼酎やウイスキーは濃いめがよい。
・酔いつぶれて昏睡するように眠りにつく。
・翌日は吐き気におそわれて起床。胃が朝食を受けつけなければ大成功。
・ナッツは食べてもOK(吐いても知らない)。
・うまくいけば吐き気は昼まで続き、あわよくば昼食もカット。
これで酒を楽しみながら、容易に16時間を超える空腹時間を確保できるわけである。
ただし、体内の細胞たちが酔いつぶれてしまい、せっかく吸収したタンパク質を嘔吐しまくり、細胞内が無残な汚物まみれになっていたとしても、宿主の責任ということでご容赦いただきたい。