小説【ツイン・プログラミング】その6「キラのニコとの共同作業」
登場人物紹介
・沢渡キラ:本当はじっくり勉強する派なのだが、Webプログラミングはアウトプットこそがインプットと知って、若干焦っている。
・沢渡ニコ:双子とはいえお姉ちゃんらしく、側から見てもサーバー環境構築やアップロードができない妹を支えたいと密かに願っている。
仮想化環境の時に、Linuxの基本的なコマンドは一通り勉強してきたので、それなりに真っ黒い画面には慣れています。
しかし、それを実運用するとなると話は別です。
アメリカの超ビッグ大手企業が提携しているコンピュータークラウド。これを使えば、ただサーバーをアップロードするだけでなく、いろいろなことができます。写真や動画を別の場所に一時的に保存したり、流行りのAIコンピューティングもできます。もちろんそんなところまで踏み込んでやったら、私のお小遣いが一瞬で消炭になってしまうのは自明の理ですが……
「どう……できそう?」
ニコが聞いてきました。正直いうと、まだ何もできていません。MacBook Proのプロンプトでサーバーを操作できるようにする(SSH接続)ところまでが関の山です。
最低限のディストリビューションやセキュリティやそこらは、なんとかネット上のコピペで済ませることができますが……そこからは、今の私には難しい、ApacheやMySQLといったWebサーバーやデータベースなどの用語が出てきます。あと、ipアドレスやドメインなども、本格的に理解しないと、この辺りは何も考えずにWeb上に書いてある通りやるわけにはいきません。
ニコの方は、割とすぐにローカルにWebサイトの雛形を作ってしまったようですが、私の方は全然まだまだです。
すると、ニコは私の頭を撫でて言いました。
「いいんだよ、キラ。自分のペースで。だってこんなの私じゃ絶対わからないから、キラに頼んでるんだよ」
私は不覚にも目頭が暑くなってきました。
どちらが難しい作業をしているかはこの際どうでもいい。ただ早くも私は無力感にさいなまれてしまったのです。コマンドを実行する画面で何をしなければいけないのかわからない不安感。それがニコの言葉でブワっと出てきてしまったのです。
「ありがとう、ニコ……」
私は半泣きしそうになりながら、ニコの方を向いてお礼を言いました。
それでも甘えてはいられません。
システムや裏側の作業をやりたいと言ったのは、他ならぬ自分自身なのですから。