見出し画像

ジョブ型ブームは何をもたらす?

 今朝(9/14)配信のNewsポストセブン、『令和の成果主義「ジョブ型雇用」ブームに漂う”負の既視感”』。
 経営学、そして組織論の専門家である同志社大学の太田肇教授によるレポートです。

 テレワークによって顕在化した日本型人事管理システムの弱点に対し、万能薬であるかのように“ジョブ型”が礼讃、待望されていることに対し、太田先生は「ブーム」という言葉を使って冷静な理解と判断を促しています。


 “ジョブ型”すなわち職務型人事制度への移行は、コロナ以前から「グローバル化」や「シニア人材の活用」といった文脈で常にその有効性が叫ばれていました。

 太田先生は、わが国で“ジョブ型”への移行が難しい理由について以下の点を挙げておられます。
1)未発達な労働市場 = 解雇できない
2)年功序列という慣行
3)労働基準法 = 時間による管理が前提
4)企業別労働組合
5)中小企業を支える“多能工” = 国内企業の99.7%

 一方、長くわが国の経済成長や競争優位を支えていた「職能型(メンバーシップ型)」人事制度も、当初の目的(能力→給料)を必ずしも果たしておらず、「能力」の代理指標として「年齢」を用いざるを得なかったことで「年功型」が一層定着したこと、また、1990年代に「成果主義」導入が進んだ際も、一人ひとりの仕事の分担が明確でないため個人の成果を正確に把握することができないことが原因で制度に矛盾をきたしました。

 こうした経緯に対して太田先生は、「(日本型社会システムの)厚い壁にぶつかった結果、職能資格制度も成果主義の導入も、人事評価や処遇において能力・成果の要素を多少濃くするという落としどころ、すなわちマイナーチェンジで終わった。」と分析した上で、「ジョブ型雇用についても導入を検討する中で壁が見えてきたためか、さっそく「日本式ジョブ型」といった玉虫色の表現を目にするようになった。」と現状を表しています。

 年功制にお墨付きを与えた職能資格制度、評価者の裁量をむしろ広げるという想定外の副産物を遺した成果主義に続き、「ジョブ型ブーム」が何を遺すか、という問題提起で本稿は結ばれていますが、太田先生のスタンスは決して“ジョブ型”を否定するものではなく、まずは現行制度下においても「仕事を分ける」ことから始めるべし、であることは著書「超・働き方改革」を読めば解ります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?