正直な価格表示で本当に売れる?「コミコミ価格」を掲げる工務店の営業スタイル

一見、安そう。一見、お得そう。しかし、フタを開けてみれば、安くもお得でもなかった、という苦い経験を持つ人は少なくないだろう。

お客様の立場に立ったら、正直でわかりやすい価格表示が理想だ。一方で、企業のリード獲得においては「安い」「お買い得」は強力なフックになり得る。競合と比較され、正直であるがゆえに価格の印象で負ける可能性も否めない。

それでも僕が経営する工務店、株式会社あいホームでは2008年6月1日に独自ブランドを立ち上げて以来「コミコミ価格」を貫き、企業成長を遂げてきた。「正直でも売れる」住宅販売のスタイルを紹介したい。


あいホームが「コミコミ価格」にこだわる理由

実は、住宅販売において価格表示の明確な基準は存在しない。住宅会社の中には、本体価格や坪単価を安く見せて集客し、後々になって付帯工事やオプション工事、諸経費等で料金を上乗せする業者もある。

家を売って終わりなら、そのやり方でも通用するだろう。しかし、あいホームの「家づくり」は家を売ってからが本番だ。お客様があいホームの住宅で暮らし、家の中が笑顔で満たされて初めて「家」が完成する。だから、お客様の予算やライフプランに合わない住宅を強引に売り付け、無理なローンの返済によりお客様の笑顔を奪うようなことがあってはならない。

「家づくり」に対する僕たちの思いを込めたブランドスローガン。詳しくはこちら

だから、僕たちは「コミコミ価格」にこだわっている。あいホームの「コミコミ価格」には、本体価格に加え、屋外給排水工事費、仮設工事費などといった付帯工事費、図面作成・建築確認申請費用・地盤建物調査・保証費用などの申請・検査費用、照明器具 ・オーダーカーテン、そして消費税までが全て含まれる。(2024年11月現在。出典:あいホーム「こだわりの「コミコミ価格」」)

2023年には「入魂価格」を商標登録。「入魂」には2つの意味を込めた。

1つは、言葉通り、魂を込めて値付けをしているという意味だ。お客様がお買い求めやすい価格を目指し最大限に努力したうえで、嘘のない価格表示で勝負する。そうした企業姿勢をこの言葉に込めた。

もう1つは「入魂(ニュウコン)」の語呂にかけて”New Concept(ニュー・コンセプト)”という意味を持たせた。不透明な価格表示が常態化している住宅業界に新たな風を吹かせるという意志表示だ。

商談を有利に運ぶ「コミコミ価格」のメリット

もちろん、実際には他社より低い価格設定だったとしても、「コミコミ価格」であるがゆえにお客様に「高い」と誤解されるリスクはある。あいホームの住宅営業において、そのリスクを感じたことはないものの、一般論としてはあり得るだろう。

ただし、そのリスクを上回るメリットが「コミコミ価格」にはある。

商談で「お金の話」ばかりをしなくて済むことだ。広告・宣伝時に価格についてお客様に十分な情報を提供しなかった場合、最初の価格表示と実際にかかる費用とのギャップをお客様に納得してもらえるよう説明しなければならない。その結果、商談の多くの時間を「価格の説明」や「買ってもらうための説得」に割くことになる。

それは、本当にお客様とする必要がある会話だろうか?

つじつま合わせの説明や押し売り文句は、お客様の購買意欲を下げると僕は考える。「いつ建てるんですか?」と購入を催促するような言い方はもってのほかだ。

それより大切なのは、お客様が「家を買おう」と思い至った時の楽しい気持ちを共有するとともに、家に対する考えを理解することだ。そのために、住宅の購入を検討しようと思ったきっかけや、購入に向けて家族でどんな会話をしたのか、などのエピソードを「質問」する。「押し売り」の対義語は「質問」といっても過言ではない。

「質問」を通して信頼関係を築き、エピソードを踏まえ、お客様と共に理想の家のかたちを探っていく。信頼をベースとした僕たちの営業スタイルは「コミコミ価格」と相性が良く、相乗効果を生み出しているといえる。

お客様との信頼関係さえあれば、「価格」のみを理由に他社と競合する可能性は極めて小さい。商談に入る前に、お客様のことを知るフェーズで「競合他社がいない状態」をつくっておくのが理想だ。

相性が良いお客様とのマッチングで営業効率アップ

上記は商談のフェーズにおける「コミコミ価格」のメリットだが、実は、その前段のリード獲得のフェーズにおいても正直な価格表示がプラスに働く側面がある。

価値観を共有できるお客様と出会いやすいことだ。

予算を抑えて理想の家を手に入れたいという思いは自然だが、「安ければ安いほどいい」と安さのみを追求するお客様の価値観と、僕たちの価値観は交わらない。

「安い家を買いたい」ではなく「信頼できる『人』から家を買いたい」と考え、「コミコミ価格」の根底にある正直さや親切さに価値を感じる人こそが、僕たちが向き合うべきお客様だ。「コミコミ価格」を通じて、そのようなお客様のみと出会うことで、一人ひとりと向き合う時間や労力を十分に確保でき、その結果サービスのクオリティが上がる。

反対に「安さ」だけで何人ものお客様を呼び込み、営業担当が対応に追われる状況では、僕たちが理想とする「お客様に尽くす」スタイルのサービス提供は難しいだろう。特に少数精鋭の地方中小企業では、営業担当を疲弊させる事態になりかねない。

あいホームの広告において、住宅の「安さ」や「性能」を謳うのではなく、「人に尽くす」という企業姿勢が伝わるメッセージを押し出しているのはそれが理由だ。

お客様にとって親切か?「コミコミ価格」をブラッシュアップ

ありがたいことに、お客様からは「価格表示がわかりやすい」「安心して家づくりをお願いできる」「信頼して任せられる」と言っていただけることが多い。

そうした評価を頂ける企業であり続けるために「コミコミ価格」の内容や見せ方を時代の変化とともにアップデートしている。

例えば、住宅を建てるには「建築確認申請」という手続きが必要で、申請には費用がかかる。その費用は、あいホームではなく役所や検査機関に対して払うものなので、以前は「コミコミ価格」に含めず、別途「諸経費がかかります」と都度説明をしていた。

しかし、誰に対して払うものであれ、お客様にとっては、家を建てるのにかかる費用に変わりはない。であれば「コミコミ価格」に含めるのが親切なのではないかという結論に至った。

あいホームの「正直」を支える13年のノウハウ

価格について、お客様に正直でありたいという思いはあっても、なかなか思うようにいかないことは多いだろう。

正直な価格表示に合った営業スタイルに加え、すぐに価格を算出できる仕組みや体制も欠かせない。特に住宅の場合、建築に使われる部材が無数にあり、為替や仕入れ元の事情によりそれらの値段は変動する。何種類もの住宅商品があるなかで、それぞれの価格を事前に見積もるのは簡単ではない。

だが、僕たちには「商品部」がある。部材の仕入れから、住宅価格の算出までを担う専門部隊だ。商品部を立ち上げて以来、13年間ノウハウをため続け、今ではデジタルの力も借りて運用が強化されている。

あいホームが「コミコミ価格」を武器にできているのは、間違いなく「商品部」のおかげだ。

「正直」は簡単ではない。でも、確実にお客様のためになり、結果的に企業成長につながる。この記事を読んで共感してくれた経営者や営業担当者は、ぜひエッセンスを取り入れてみてほしい。

編集/三代知香

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伊藤 謙|あいホーム
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