シャングリラへゆく③麗江に夢を見る人達
理想郷のことを人はシャングリラと呼ぶ
雲南の香りに魅せられて僕は旅をした
冒険家が探し求めたシャングリラに想いをよせ
奥へ奥へ雲南省の秘境を旅した記録
「シャングリラへゆく」は第二部です
第一部「チベットへゆく」はこちらから
麗江古城の場所は雲南省の山奥にある
少数民族ナシ族が住み静かな暮らしをしていた
古城は長い歴史の中で戦火を免れ現在に残る
数少ない規模の大きい古城
その為、古城に入るとタイムスリップする
昼と夜の顔がまるで変わり陽が沈み暗くなり
提灯に明かりがともり出すと
もののけが どこからともなく現れ
宴をする
ユラユラ揺れる蜃気楼のように揺れる古城
旅人は、東洋の謎めいた文化に魅了され
この場所に住み着いた
夢追い人はこの街で暮らす為に
商売を始める
ある人は、カフェをだし
ある人は旅館を経営し
ある人は物を売る
まだ中国人旅行者が急増する前の事
世界遺産登録をきっかけに
麗江には外国人が多く集まり
東方に見つけたシャングリラのように
西側には伝り人気があった
麗江の開発を大きく区切るなら
1回目は外人旅行者による開発
2回目は中国人旅行者による開発
3回目は中国企業による開発
初めて僕が麗江に訪れた時期は2回目頃
外人の経営する店も多くあり
個人の中国人開発が入り込みだした時期
この時点でも麗江は商業化へ進んでいたが
今考えるとまだ、それほどでもなかった
麗江古城の古き良き時代だったかもしれない
昔を知らなければ
今がいいか悪いか知る由もないが
西洋人バックパッカーは敏感で
商業化されると西洋人バックパッカーは
離れ、また未開の地を探しに行く
そんな時代背景があり
僕は大理からローカルバスにのり
麗江古城に入った
バスの中から
名もない村らしき山岳村を見つめ
峠を幾つも越える
ドンドン奥へ奥へバスはこの先に
目的地があると知らない限り
入っていかないような
奥へ進む
僕は、本当にこんな山奥に
そんな夢のような場所が
あるのかなと不思議だった
きっとこの山を越えてたどり着いたなら
誰もがシャングリラだと思うかもしれない
飛行機で来たら分からないけど
バスで昆明から大理を経てやってくると
距離感、山奥へ入る感じが伝わる
夕刻にバスは麗江古城入り口に到着
麗江古城は1997年に世界遺産登録
江沢民が書いた文字が入り口に飾られている
下の地図の左上(2基の風車の絵が目印)
外壁に囲まれている訳ではないが
中に入ると
何本もの路が行き来しし
雪解け水の川が流れ
木造建築の資材を活かした
いびつな歪みが逆に美しく
右に左に上に下に地形に沿った
揺れるような石畳を歩くと
直ぐに麗江の魅力に取り憑かれる
古城の中心は四方街と呼ばれる広場
そこから路が右ヘ長く伸びている
七一街、
五一街と
腕が伸びるように大きな2つの路
その路にそって古城は広がっている
日本人には2006年公開した
高倉健さん主演の映画「単騎千里を走る」の
ロケが麗江古城で行われ少し有名になった
この頃の撮影された
麗江古城は古きよき時代をとらえている
麗江古城の散策はとにかく楽しい
異世界…いや明や、清の時代に迷い込んだ街
とくに昼と夜が変わる時間帯
街の様子は一変する
太陽の下で生きる生き物が家に戻り
月の下で生きる生き物が外に出て来る
ぞろぞろと
人の少ない裏通りは
けもの道のような怖さもあり
明の時代、清の時代を連想させる
赤い提灯ライトが石畳に反射し
長くクネクネした路を進む
本当にそんな街だ
妻の劉さんは麗江には1度来ている
初めてではない
以前知り合ったバーの店に顔を出しに行く
らしく僕は別行動で夜の散策をした
宿に戻り、戻って来た妻と話していると
バーで出会った一人の男性
黒竜江省(東北)出身の趙さんと
明日、また会うという
趙さんは、麗江に旅行に来て麗江が気に入り
この街で旅館を経営したいと考えていて
現在、現地のナシ族と交渉中らしい
劉さんは趙さんと明日、お茶でもしながら
趙さんの旅館話を聞く事になったらしい
人間関係の付き合いもあり
顔出すからとして
明日僕も一緒について行く事になった
翌日、あいにく少し雨の中
僕らは 趙さんと待ち合わせ場所に向かう
彼の弟が数珠をうる商売をしていて
その店で待ち合わせ
弟はお茶を用意してくれて店の中で僕らは待つ
しばらくすると趙さんが来て
お茶を飲みながら旅館話を始めた
近くに改修する旅館あるので見に行こう
と言われ僕らはついて行く
そこには、まだナシ族の家族が住んでいて
民族衣装を着た老婆が火鉢で暖をとりながら
座っていた
古い建物で綺麗とは言えないし
中に入ると古い木造なので
ゆがみも多く隙間も多い
特に中は暗く埃っぽく生活感がある
伝統的なナシ族の建築で四合院といい
中庭があり 取り囲むように建物がある
趙さんは僕らに、ここを改造して部屋にする
ここは受付で、ここには池を作ると
旅館のイメージを熱く語り教えてくれた
これから改修する建物がどんな旅館に
生まれ変わるのだろうか?
旅館経営は土地を買うのではなく
この土地の所有者のナシ族の家庭に
場所を借りる形で契約する
5年でいくら
10年でいくら
20年でいくら
と契約はそれぞれ個人間でやり取りされる為
安く借りる人もいれば高く借りる人も
年数も金額も条件は様々で全ては個人交渉次第
建物の内装は旅館に改造される為
もうここには住む事ができなくなる
住民たちは古城の外にある近代的な住宅に
移転することになる
若い世代は経済的目的でレンタルに出すが
年老いた人たちは躊躇する
伝統が失われる
長年受け継いだ家屋が破壊される
一通り今の改造前の部屋をみて
改造案を聞き意見を聞かれたりした
貴方ならどうする?
日本人はどんな部屋がすき?
部屋を見ながら話しをした
趙さんと家を出て外の門前に立ち
中では言わなかったけど
外にでて趙さんは
住民が値段を上げてきていて
困っていると愚痴を漏らす
契約はほぼ完了してて
その後、値段を釣り上げてきて
移転してくれないらしい
長年住んだ家を出て貸すのにためらう
ナシ族は多いが、経済的に賃貸ビジネスで
生計を立てれる誘惑に皆負けて行く
少数民族の暮らしは
こうして時代の波にのまれていく
そんな話を門の前で聞き
ちょうど、道を挟んだ向かいの家も
声をかければ誰かに貸してくれるよ
と教えてくれた
旅館に適した物件だから
悪くないよ
私が住民と交渉してあげるから
君らも旅館やりなよ!って
このころ、旅館したい中国人が
増えだしていて旅館できる建物や
転居してくれる住民を探し交渉していた時期
値段が毎月跳ね上がっていく
早く契約しないと損する旅館経営者と
粘って高く貸したい現地住民
そんな中で交渉は生き物のように
状況が変わっていく
毎月毎月値が上がる
僕が交渉してあげるから
今ならいい物件あるから
一緒に旅館をしよう!と
趙さんは進めてくる
当時、確か趙さんの旅館契約は
20年間で70万元(当時で1000万円程)
一月約5万円弱という旅館規模にしては
破格の安さだった
7部屋の旅館だったので宿泊費を考えると
満室で2日で家賃がペイできる
今、考えたら
とんでもなく安く趙さんは契約している
改装費で数百万とか言っていた
期間が3ヶ月を予定していたが半年かかる
現地の人は働かないから
思うように進まないらしい
冗談半分で聞いていた僕ら
趙さんと別れ僕らは夜ご飯を食べながら
彼は旅館ビジネス成功するかな?と
そんな話をしていた
東北の人だし奥さんと子供は
遠い地元にいるのよ
家族と離れて上手くいくかしらね
家族はどうするのかしら・・・と劉さん
でも一つ言えるのは
現地の人は正直働かない人が多いから
地方の勤勉な人がコツコツ働く人が
長く続くから5年後でも地元に戻らず
この田舎に住めるかが問題よね…
彼は情熱がある人だし、元々田舎の人だから
住み続ける事ができそうだし向いてるかもネ
で僕は劉さんに
じゃ僕らも向かいの場所借りて
旅館ビジネスする?
あんた、ここで生活できんの?
上海みたいに都会じゃないわよ
365日こんなド田舎で暮らせる?
一瞬、日本を捨て
白いひげを生やして
杖をついて麗江を歩く自分を想像したけど
流石に無理!
でも魅力的な話だよね
夢があるというか
夢しかないけど(笑)
全てを捨てて内装費用や諸々で
2000万近く投資して人生賭けて
ここで暮らすには勇気がいるよな~
でも来月には契約1000万じゃないわよ
と劉さんは冷静だった
じゃ保育園に行きだした娘はどうする?
とりあえず明日、麗江幼稚園でも見に行く?
銀行で金借りれる?と冗談いうと
あんたバカなの?
本気で旅館するの?
見るだけならタダだし、麗江小学校も見る?
僕ならウォシュレットだけは付けたい!
何か段々僕の妄想は膨らむ(笑)
じゃ一人で探してきて(笑)
そうやって
麗江に夢を見て住もうとする人は多い
各旅館や飲食店には旅ノートが置いてあり
麗江に旅して、この街が好きになり
夢を見た旅行者がノートに
色んな思いを書き残す
旅人が、そのノートを読み
同じ思いを持つ人に共感する
ノートには失恋して麗江に来た人や
旅の途中に寄った人や
麗江に魅了され帰れなくなる旅人の思いが
ギッシリ書かれている
それから僕らは上海に戻り
旅館ビジネスで駆け上がって
夢を掴む趙さんを遠く上海から
応援する事になる
あれから10年、現在彼は
麗江古城の旅館ビジネスで大成功を掴み
この街で有名になっていた。
夢を掴んだ彼は
シャングリラの景色を見たに違いない。
そんな彼に再び会いに
僕は8月に妻の急に麗江に行くと言う話に
乗っかり
麗江にやってきたのだった
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