広島で、市井の人々の創造性を考える
2024年2月下旬、広島に1週間滞在したときの話。
東広島市志和町:古民家暮らしとパン屋
学生時代に過ごした東広島市。当時リノベーションワークショップに参加した古民家に、いまは後輩が住んでいる。泊めてもらった。
ご近所さん、大学の先輩、後輩、いろんな人が毎晩出入りして賑やかだった。便利な場所ではないけれど、意思のある人間どうしが集まって喋るのは楽しい。
この家がシェアハウスになった経緯や雰囲気はこちらからどうぞ(少し古い情報ですが…)。
週末は、アパレルブランドitobanashiが毎月開催している「ししゅうと暮らしのお店」へ。会場は志和町内の別の古民家です。
ポジティブなコミュニケーションが連鎖していてとてもよかったです。
安芸高田市:市民の創造性
東広島市のお隣、島根との県境に位置する安芸高田市へ。名物の夜叉うどん(辛い!)を食べたり、「たかみや湯の森」でひとっ風呂浴びたり。
夕方からは、「Yoyon堂」店主の中村健太郎さんにガイドをお願いし、市内探索!はじめて訪れた安芸高田市のディープなところにグッと入り込む貴重な時間でした。
Yoyon堂 Instagram
広西時計店 ハンドメイド腕時計。ずっと眺めていられる……
茶房いなだ マスターがオリジナルソングを歌ってくれた。壁面はギャラリーになっていて、とにかく情報量が多いのにまとまりのある不思議な空間。
ほかにも元遊郭の建物を探して歩いたり、地元の商店の方とお話したり。
Yoyon堂も茶房いなだも、いわゆるアートシーンでは語られない市井の人々の創造性が空間に滲み出ていて、「そういう市民性を活かした芸術祭とかできたらおもしろいかもね」と話していた。だって壁や天井に近所の人のグラフィックやら詩やらなんやらがグワァーと迫ってくるんですよ!こんな地域なかなかないと思う。
いなだのマスターに教えてもらったYoutube「ReHacQ旅」もおススメです。次は神楽門前湯治村に行ってみたい。
ちなみにこのReHacQ旅の終盤は、県境をまたいで島根県邑南町が舞台になっていて、以前私が地域新電力で勤めていた時に同じ業界団体に入っていた「おおなんきらりエネルギー」のオンサイトPPAの話が出てきます。オンサイトPPAっていうのは……雑に言うと、公共施設等の屋根に太陽光パネルを敷いて自家発電比率を高めることで電気代を抑えて再エネ率も高めようみたいな話(雑すぎる)。めっちゃ出演者に詰められているけど(笑)、いまの地域新電力の役割としてすごく大事な取り組みをされていると思います。
邑南町もオススメスポットがたくさんあります。しばらく行っていないのでまた行きたいな~。
広島市:文学フリマ広島6/広島市現代美術館
広島市、広島産業会館で開催されていた「文学フリマ広島6」へ。東京の文フリに以前一度行ったことがあって楽しかったので、地方のはどんな感じなんだろうと参加してみた。もちろん規模は東京より小さい(というかたぶん東京がデカすぎる)のだけれど、出店者は中国地方からだけというわけではなく、じゅうぶん楽しめました。買ったやつはこれ↓
そして、学生時代には行ったことがなかった広島市現代美術館。「コレクション展 2023 - Ⅱ」の期間中で、「コレクション・リレーションズ (ゲストアーティスト:小森はるか+瀬尾夏美)」を目当てにお邪魔してきました。
岩手・陸前高田の嵩上(かさあ)げされた街と、天国と現世、現世と死者が眠る土壌。生活史的な語りに「上」や「下」への想像力が加わり、なんの上に立っているんだっけ、とか、上をめざすってどういうことなんだろう、とかぐるぐる考えながら鑑賞しました。
東広島市立美術館「民藝 MINGEI」
現在は東京・世田谷で会期中の「民藝 MINGEI ー 美は暮らしのなかにある」。このときは東広島市立美術館に来ていました。
正直、観る前はあまり関心がなく、帰りの時間までの暇つぶしくらいにしか思っていなかったけれど、すごく良かったです。「民芸品」と聞くと少し古くさいイメージを抱いてしまいがちですが、民藝という概念そのものが、暮らしのなかでつくられる実用的なモノの美しさを中心とした思想である以上、モダンデザインと切っても切り離せない。だからその時代時代にとって非常に現代的なもののはず…。
その意味で特に「民藝の産地 ― 作り手といま」のインタビューはすごく心を打つ内容ばかりで、図録も買ってしまった。気候変動や成熟国での供給制約が次第にそのインパクトを強める現代にあって、ここに取り上げられているような作り手のインタビューは、生き方のレベルでインスピレーションをもらえる内容になっていると思う。おすすめです。
世界は偉くない人でできている
今回訪れた場所に共通していたのは、「権威をありがたがる系」のスポットに行っていないということ。歴史上の偉人が眠る神社とか、一大エンタメのテーマパークとか、そういうところがこれまでの観光地としては人気だったのかもしれません。でもそういうのには個人的にあまりピンと来ないのです。「みんな行ってるから、有名だから、わたしも行く」って気がして。ひねくれすぎかな……
みんなで直した古民家、友人が焼くパン、市民が勝手につくったギャラリー、ZINE、知らない誰かの語り、そして民藝。べつに誰ひとり有名じゃないし権威性もないけれど、だからこそ、それぞれの表現に心が動くんだと思うのです。
広島は4年間過ごしたからそういうところまでアクセスできたけど、他の地域にもそれぞれ、未知の素敵な過ごし方があるんだろうな。
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