水害からの完全復興を期待したい熊本県人吉市
<はじめに>
人吉・球磨地方は2020年7月水害で大打撃を受けた。温泉地であるので被害を受けた旅館が多かったけれど復旧をしつつある(概ね復旧しているが途上
のものもある)。また、人吉城趾の石垣復旧も途上である。一方、JR肥薩線
・・八代から人吉を通って鹿児島に抜ける線・・の復旧は全く白紙の状態である。
1.人吉市の地理的位置
熊本県南部にある球磨地方の中心地で鹿児島との県境にある。九州縦貫自動車道ができるまで、人吉の人々は例えば東京との往復で飛行機を使う場合、鹿児島空港を使う方が便利だった(鹿児島空港自体が鹿児島市内から可成りの距離がある霧島方面にあるということも関与している)。
人吉は周囲を山に囲まれた盆地である。秋~冬の朝は、市内を流れる球磨川から朝霧が発生することでも知られる。
2.人吉市の歴史概要
人吉市は小規模ながら小京都ともいわれ人吉城址(繊月城とも呼ばれる)もあることから歴史ついて簡記しておきたい。この地は嘗ての相良藩(人吉藩が正しいようであるが相良藩で通っている)の城下町である。従って町名に紺屋町、鍛冶屋町など町名が残り、実際に鍛冶屋もまだある。ここを治めていた相良氏は鎌倉時代の地頭から始まり明治維新まで大名であった、歴史に詳しい人なら、田沼意次が所領していた遠江の相良藩を思い起こすと思う。ルーツはそこらしい。
3.人吉の観光資源・特産
筆者は中学時代に1年9月住んでいたほか、2010年以降も4-5回行っている。観光資源のWeb情報は後掲するとして、自ら考えるものを挙げる。
(1)美人の湯と言われる温泉地
入ると肌が滑々とする温泉である。「火の国熊本」と言われるように温泉はかなりの数があるが、代表地は次の3つである
①菊池川沿いの温泉群(上流から菊池・山鹿・玉名)
山鹿は山鹿灯籠踊り、八千代座で全国的に有名
②人吉温泉
③阿蘇の黒川温泉(地元では新参者で県外・九州外の客向け)
湯質評価は①と②で甲乙つけがたいという評価もあるが、風光明媚さという意味では人吉が上であろう。
(2)日本三急流・球磨川の川下り
(3)川魚の恵・・鮎とうなぎ
①鮎・・球磨川および支流での鮎漁は全国でも有名
毎年1月に開催されマスコミで取り上げられる新宿京王百貨店「全国の駅弁と旨いもの大会」に熊本代表として人吉の「鮎の姿寿し」がよく出ている。鮎と言えば塩焼のイメージがあると思うが、珍味の「うるか」や干した鮎の甘露煮もある。
②うなぎ
有名店が2軒あり午前10時の開店前から行列が出来ている。市外、他県からの客が殆どと思われる。東日本のように蒸さず、且つ天然の鮎なので弾力
がある。
(4)国宝「青井阿蘇神社」
(伝)大同元年/806年創建とされる。2023年に「通潤橋」が国宝になることが決まったが、それまでは熊本唯一の国宝であった。全国有数の由緒を持つ阿蘇神社の3大神社の一つである。尚、加賀・前田家と並ぶ2大美術品蒐集家として知られる肥後・細川家は国宝を多く保有していたものの、東京の永青文庫に収蔵されているため熊本の国宝になっていない。
(5)工芸品「キジ馬」
くまモンが今や熊本県(本来隈本で熊に関係なし)のシンボルであるよう、人吉のシンボルはこれである。平家の落人が作り始めたとの謂われがある。人吉の出身者に寄れば、東北のこけしが東の横綱ならキジ馬は西の横綱とのことである。人吉土産に止まらず熊本土産の定番である。キジ馬と合わせて作られている花手箱は女性に大変喜ばれる。筆者は実際に工房を訪れたことがある。
(6) 日本最高の米焼酎・球磨焼酎
人吉に限らず、球磨地方は米のみから造る米焼酎・球磨焼酎で知られ、球磨焼酎酒造組合のWebサイトを見ると27蔵がある。
https://kumashochu.or.jp/ (球磨焼酎酒造組合ホームページ)
米焼酎を造っている蔵は全国各地に散在するものの、これだけ集中しているところは他になく、米焼酎の最高峰が球磨焼酎であることに異論を唱える人は居ないはず。市内に無料で全銘柄を試飲可能な蔵もある(筆者は2ヶ所に行ったことがある)。ついでながら、国内の低迷に比して海外輸出が伸びている日本酒に鑑みれば、米焼酎が一番日本酒に近く海外での拡販余地があると筆者は考える。
<参考>人吉温泉協会人吉観光案内 https://hitoyoshionsen.net/
4.最後に・・2020年水害について
2020年7月の集中豪雨で人吉・球磨地方は壊滅的打撃を受けた。国宝の青井阿蘇神社も水没し有形文化財指定の温泉宿群も2階まで浸水。復旧はかなり進んだものの、肥薩線の復旧は全く白紙の状態で人吉駅はクローズしたままである。全国的にも知られた駅弁売り(前述の鮎の姿寿し弁当など)もなくなっている。人吉市が開示しているデータ(2021年まで)で観光客が大幅に減っていることが分かる。幸い九州新幹線の新八代から高速バスが出ていて嘗てのJRを使う旅程より大幅な短時間で人吉まで行ける。早期の観光回復を望んでいる。
尚、周知のとおり、水害家を契機に凍結されていた川辺川ダム建設の検討が再開した。恐らく砂防ダムとなる(元の計画では貯水ダムだったので、住民は保証料をもらい既に他所に移住済み)。参考までに水害にかかる地理的な情報を以下に付しておく。