【企画参加作品】手のひらの恋
「お嬢さん、あなたは恋をしておられますな。」
おそらく御年70はいってるであろう、占い師の男性はそう私に問いかけた。
「わかりますか?」
「あぁ、わかるとも。お嬢さんの体調が優れないのは、それが原因じゃろうな。」
自分ではよくわかっていなかった。
最近なんだか気分が乗らない、食欲も今一つ。気がつけばぼんやりと、とりとめもなく考え込んでいることも多かった。
今日もそんな調子でオフィスを出たが、なんとなくまっすぐ帰る気にもなれず、いつもと違う路地に入ったりして、偶然たどりついたのがココだった。
「それにしてもねぇ。。お嬢さん。叶わぬ恋、いや、叶いづらい恋というのも、なかなか大変なものよのぉ。」
「えっ?私が好きな男性までお分かりなんですか?」
私は驚いた。彼は直径約15cmの虫眼鏡で、私の右の手のひらを見ているだけ。特に会話をするでもなく鑑定が始まったが、なのにどうして?
「お嬢さんが恋焦がれている男性は・・・back numberのボーカル、清水 依与吏さんじゃろう?」
── 当たってる・・・、えっ?
「ほら、お嬢さんの右の手のひら、ちょうど親指の付け根のあたりから真横にまっすぐ『水平線』が浮かんでおる。」
「ホントだ・・・、全然気づきませんでした。」
「back numberのファンの子に多い手相なんじゃよ。手のひらは全てを物語る。」
「ありがとうございます。なんだか気持ちが少しラクになりました。」
「いや・・・、お嬢さん、それだけではないようじゃが?」
「えっ?それだけじゃない?」
「あぁ、そうじゃ。お嬢さん、自分をごまかしちゃいけない。ここにもちゃんと出ているのだ。」
占い師はそう言って、虫眼鏡の持ち手にあるスイッチを入れ、ライトで私の右の手のひらを照らし始めた。
「人差し指と中指の間から手首にかけて『熱視線』が伸びておる。ということは・・・」
「・・・玉置浩二さん。」
「そうじゃ、気づいてなかったか?」
「玉置浩二さん以外の、他の安全地帯メンバーの可能性は?」
「特に考えずとも良いじゃろう。」
私の手のひらで、気づかずそっと眠っていた恋。
向き合ったことで、私の中で何かが動いた。
「ありがとうございます。気づくことができて本当によかったです。」
「あぁ、それと、これはおそらく遺伝だと思うがね。帰ったらお母様に聞いてみるといい。堀内孝雄と滝ともはるをお好きではなかったな?と」
「南回帰線?」
「そうじゃ。あと、うっすらと『私鉄沿線』も出ておるぞ。」
手のひらの恋は、
世代を超えて、受け継がれる。
いつしか海に流れ着いて
光って
あなたはそれを見るでしょう。
-- 了 --
今回初めて、山根あきらさんの企画に参加させて頂きました。あきらさん、今後共宜しくお願い致します。
企画を知ったのは、ももまろさんのこちらの記事から。いつもありがとうございます。
真面目なトーンでお送りしてますが、よくよく聴けば、どうかしてます。