元・書店員がオススメするアート、デザイン、インテリアの洋書と、洋書を取り扱う書店
アート、デザイン、インテリアの洋書について、「どこで売っている?」、「何を買ったらいい?」という相談を受けることが多い。私自身も、書店員として洋書や洋雑誌に触れるまで、どの本がいい内容で、どこで何を買えるということを知る機会がほとんどなかった。
個人的には、もっと本に、洋書に触れもらって、本の魅力やアートブックの面白さを知って欲しいなと思っています。
日本の書籍も魅力的で、価格が安い。一方で海外の書籍(アートブック)は価格が高く、英語で書かれているため"読書"ができないこともある。だが、日本ではできないような造本、紙面のヴィジュアルや編集の面でも優れているものがとても多い。
ぜひ、洋書の魅力を知って、もっと身近に、インテリアとしてだけではなくアイデアソースとして、暮らしを少し楽しく、豊かにするものとして、気軽に手にとって欲しいと思い、このnoteを書きました。
アートブックの2大出版社
まず、洋書のアート、インテリア、建築関連の書籍を購入したいと思ったら覚えておくと良い、2つの出版社を紹介します。ぜひ、アートブックを探す際はこちらの出版社のウェブサイトをチェックしてみてください。お目当ての本が見つかるかも。
TASCHEN(タッシェン)
PHAIDON(ファイドン)
お手頃かつシリーズで本棚を埋めたいならこれ!
TASCHEN「Basic Art Series」
TASCHENの「Basic Art Series」
まずもって種類が豊富。アート、デザイン、建築の各界アーティストやジャンル(時代など)、デザイナーを取り上げて、1冊にまとめている。名の通り、ベーシックを学ぶのにはもってこいの洋書です。
また、価格も安く本国でUS$ 20、日本で購入すると2,500〜4,000円程度とお手頃な価格帯。
表紙の面でも、タイトルと大きな写真が1枚とシンプルで、部屋においても邪魔にならないデザイン。サイズもW21.5 x H26.4 cmとA4より高さが少し小さめと、日本で販売している本棚でも収まるサイズ感。
Basic Art Seriesのおすすめタイトル
個人的には、バウハウスなどの大きなジャンルがまとまっている書籍と、建築家、インテリアデザイナーを取り上げたものが資料価値的にいいなと思っています。美術のジャンルだと、ちょっと内容が薄く感じたり、もっと大きなサイズで見たいなと思う。
TASCHEN「40th Edition Series」
TASCHENが40周年を記念して、これまでの人気タイトルをコンパクトなサイズかつ、お値打ちな価格で販売するシリーズ。
元々は、高さ30cm、厚さ10cm以上の大きさのサイズで販売しているような書籍をW16 x D5 x H22cm程度のコンパクトなサイズに縮小し、さらに価格もUS$ 30、日本で購入すると4,000〜5,000円程度とだいぶお得に購入できる。
40th Edition Seriesのおすすめタイトル
個人的には、このシリーズになる前は、大きいし価格も安くはないし、買えないなって思っていたティスマンスの写真集や、バスキアの本、adidasのアーカイブ本がおすすめだと思います。
ティスマンスの写真集は、実際に購入して手元にありますが、この価格帯でがっつりとティルマンスの写真を見れるのは嬉しい。
100周年を迎えた出版社のベストセラー100冊
2023年に100周年を迎えたPHAIDON。
PHAIDONの公式サイトでは、ジャンル問わず様々な分野からベストセラー100冊を厳選し、公開しています。
その中でもいい本だなと思ったものを何個かピックアップしました。
KAWS: WHAT PARTY (Black on Pink edition)
アーティスト・KAWSのブルックリン美術館にて開催された回顧展「KAWS:WHAT PARTY」で発売された展覧会図録。
COMPANIONなどの代表作はもちろんのこと、スケッチや下絵、制作中の未公開画像などが掲載されており、KAWSの制作プロセスが明らかになっている。
Dieter Rams: The Complete Works
伝説の工業デザイナー、ディーター・ラムスのカタログレゾネ。ディーター・ラムスは、ドイツの電気器具メーカー「BRAUN(ブラウン)」のデザインチームのチーフとしてプロダクトデザインを数多く手掛け、現代のデザイナーに多大な影響を与えている。
300点のカラー図版が年代順に掲載され、各製品には詳細な説明と仕様の内訳が記載されていて、デザイナー、インテリア好きは必携の1冊。
インテリア系インフルエンサーの部屋によく登場しているので、見たことある人も多いはず。
WA: The Essence of Japanese Design
日用品からパッケージ、インテリアデザイン、照明器具に至るまで、約300点の作品を通して、現代日本のデザインを取り上げている。
日本らしさと、その「日本らしさ」が西洋文化に与えた影響の強さから選ばれたものを、年代順やデザイナーに焦点を当てるのではなく、モノに焦点を当て、素材別に分類することで、日本におけるデザインと素材の強い結びつきを浮き彫りにしている。
また、柳宗理、倉俣史朗から深澤直人、吉岡徳仁に至るまで、日本を代表するデザイナーの作品が掲載され、原研哉による日本デザインについての論評も掲載されている。
Nike: Better is Temporary
Nikeのデザイン哲学をにまとめた書籍。
Nikeへの独占取材に基づく知られざるストーリーや、クリエーター、経営陣へのインタビュー、未発表モデルやプロトタイプなどの貴重な資料を豊富に掲載。1冊を通してNikeの秘密を解き明かしていく。
スニーカーの書籍ではなく、Nikeという企業、デザインを知るための書籍になっている。
オブジェとしての大きな本
日本の出版社にはない洋書の特徴として、オブジェ、インテリア、コレクターズアイテムとして巨大な本を出版しています。
その中でも、TASCHENの「XL」、「XXL」という大きなサイズの書籍や、書見台が付属する「Baby SUMO」と「SUMO」はアート作品的な要素を持ったコレクターズアイテムになっています。
そんな、大きなアートブックを1冊ご自宅に飾ってみては?
1冊は持っておきたい? XL、XXLサイズのアートブック
Kuma: Complete Works 1988-Today
XXLサイズの書籍。サイズは、W34.3 x D6.4 x H45.5 cm
写真、スケッチ、図面など約500点の図版が掲載されており、隈研吾のこれまでのキャリアのすべてを、代表的なプロジェクトから進行中の作品まで、詳しく紹介している。
Peter Lindbergh. On Fashion Photography
写真界の巨匠ピーター・リンドバーグの写真集。40年にわたるキャリアから300枚以上の写真を収録。
2016年に行われたインタビューをもとにした解説が掲載されており、リンドバーグのレンズの裏側を垣間見ることができる。
本が部屋の主役になるSUMO
Helmut Newton. Baby SUMO
20世紀を代表するファッション写真家の巨匠・ヘルムート・ニュートン。そのニュートンの大型写真集。
1999年に1万部限定で刊行されたオリジナルは、その巨大な佇まいの本のページをめくる姿がまるで相撲を取っているように見えることから、「SUMO」と名付けられた。当初$1,500で販売されたオリジナルは瞬く間に完売し、直近のオークションでは$20,000で落札されている入手困難なコレクターズアイテムとなっている。
そのSUMOの一回り小さくなった新たらしいエディション。
David Hockney. A Bigger Book
20世紀イギリスを代表するアーティスト、デイヴィッド・ホックニー。
自らが、様々な角度から、すべての制作過程において密に関わり、450点以上の作品の概観として手書きの序文を寄せた。
「私は過去に生きるつもりはない」また、「この本を作り、どれだけのことをやってきたかに気がついた」とのコメントを寄せた大型作品集。彼の作品や人生を年表のように振り返る600ページの解説本つき。
写真集の出版社といえば、MACK
いい写真集を買いたいなと思ったときに、チェックするべき出版社として上げておきたいのが、「MACK(マック)」。
どれも美しいデザインで、写真集好きや写真家に多大な影響を与え、ファンも多い出版社。
MACKのおすすめ写真集
Transparencies: Small Camera Works 1971-1979
ニューカラーを代表する写真家・スティーブン・ショアの写真集。
『Uncommon Places』制作時にコダクロームで撮影されていた作品シリーズのフィルムが見つかったことから、初めて写真集化されることになったもの。
FAMILY 深瀬昌久
1991年にInter Press Corporationより刊行された写真集『家族』の新装版。
深瀬写真館で撮影された家族の肖像写真が撮影年順に収録され、巻末には原版に収録された深瀬による自伝と、深瀬昌久アーカイブスの創設者兼ディレクターを務めるトモ・コスガによる本作解説が収録されている。
インテリア好き必見の洋雑誌
今までは洋書を取り上げてきましたが、趣向を変えて洋雑誌を紹介します。
インテリアの洋雑誌といえば、日本版が発売されている「ELLE DECOR」や「AD(Architectural Design)」が有名だが、もう少しアートや特集が特徴的なインテリア関連の洋雑誌を紹介したいと思います。
Apartamento
スペイン発のインテリア、ライフスタイル雑誌『Apartamento(アパルタメント)』
整えられた部屋やインテリアを紹介するのではなく、住人の個性が溢れ出る日々の生活の中のインテリアを紹介している。サイズ感も170 x 240 mmとB5より一回り小さく部屋にも置きやすいサイズ。
また、内容もインテリアの詳細を事細かに紹介するのではなく、クリエイターなどの人にフォーカスし、人柄とその部屋について取材。人と暮らし、インテリアの関係性の密接さを知ることができる。
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ARK JOURNAL
スカンジナビア発、年二回刊行のインテリア雑誌『ARK JOURNAL(アークジャーナル)』
2019年にデンマークの有名インテリア雑誌のエディター、スタイリストを長年勤めるMette Barfod(メッテ・バーフォード)が創刊した雑誌。「私たちの周りの空間、そこに置くオブジェクト、そのオブジェクトの作り手」をテーマにしている。建築、デザイン、アートの相互作用にスカンジナビアの価値観や美学を通してフォーカスする。毎号4種類の表紙が用意されている。
▼国内での購入はこちら
日本国内で洋書のアートブックが買える書店
日本国内、主に東京やオンラインにて、古書ではない洋書の買える書店、ショップをピックアップしました。書店巡りや、資料探しの際にご活用ください!
twelvebooks
twelvebooksは2010年に東京を拠点に設立されたアートブック専門のディストリビューター。
ヨーロッパを中心に海外出版社の国内総合代理店として書籍の流通やプロモーションに加え、関連作家の展覧会企画や来日イベントなど数多くのプロジェクトを手がける。
多くの書店、ショップなどに書籍を卸しているtwelvebooks。まずここをチェックしておけば間違いないです。基本はオンラインでの販売になりますが、南青山に「SKWAT / twelvebooks」というサロンをオープン。「倉庫でありバイヤー向けのショールームでもある場所を一般解放する」といった形式的ではない運営方針で、一般のお客さんも書籍を手にとって見ることができる。
POST
POSTは定期的に扱っている本が全て入れ代わる新しいブックショップです。出版社という括りで本を特集し、普段書店では見えにくい「出版社」の世界観も感じながら本を見てもらえるスペース。
お店は恵比寿にあり、ZOZOの新社屋のライブラリーやDover Street Market Ginzaなどのブックディレクションも担当している。
Gallery 5
東京オペラシティ内にある「Tokyo Opera City Art Gallery」に隣接するミュージアムショップ「Gallery 5」。
展覧会に関する書籍はもちろんのこと、POSTが運営を行っておりアート関連の洋書を豊富に取り扱っている。キャプションもしっかりあり、理解しながら書籍を見ることが出来ます。書籍もだが、空間設計を「スキーマ建築計画」が担当しており、店舗空間、什器なども魅力的。
展覧会に行ったあとに必ず寄りたいお店です。
BIBLIOTHECA
銀座の「DOVER STREET MARKET GINZA」7階にある小さな書店。COMME des GARCONSの川久保玲よって「ビブリオテカ」と名づけられた。
POSTのディレクター中島佑介さんと、twelvebooksの濱中敦史さんがキュレーションを手がける。
品揃えとしては、POSTとtwelvebooksとあまり変わりはないが、世界的なブランドの数々と、最先端のアートブックを一同にひとつの建物で堪能できる のは魅力的。
本屋青旗 Ao-Hata Bookstore
アートブックやZINE、プロダクトを中心に、視覚文化を基軸とした本屋として、2020年10月福岡市薬院新川沿いにオープン。書籍やプロダクトと連動した展示を積極的に行い、多くの方に気軽に立ち寄っていただける本屋となることを目指している。
福岡にある書店ながら、数多くの国内外のアートブックを取り扱っている。福岡に行った際はぜひ立ち寄りたい本屋さんです。
Shelf
Shelfは、写真集を中心とした洋書を専門に扱うブックショップ。 1994年11月のオープンから、東京の、日本の写真集カルチャーを見続けている書店。話題の新刊写真集から稀少な絶版本まで 豊富な在庫を持っており、来日すると必ず寄るという写真関係者がいるほどだ。
ON SUNDAYS
ワタリウム美術館にあるミュージアム・ショップ「オン・サンデーズ」。ミュージアムショップではあるのだが、洋書も多く取り扱っている。
1階は雑貨などをメインで取り扱い、地下では洋書、和書、ZINEなどのアートブックを独自のセレクトで販売している。展示関連書籍はもちろんのこと、ストリートカルチャーやグラフィティのZINEなども扱っており、個人的にはこのエリアに行ったら必ず立ち寄るお店です。
North East
North Eastは、グラフィックデザイン、アート、写真など、視覚文化に関する書籍を取り扱う東京都を拠点とするオンライン書店。2013年に設立し、個人の出版物から美術館の展示カタログまで、国内外から独自に収集したコレクションを展開しています。
国内では、あまり見ないような雑誌や書籍を取り扱っていて、探している商品や探しているデザイナー、フォトグラファーなどが明確に決まっている人におすすめ!
flotsam books
ファッション、アート、写真集等のアートブックの古書の販売と、洋書新刊販売をしている。メインとしては、貴重な古書の販売をしているが、独自仕入れで、洋書も販売している。
元々は、オンラインのみで販売していたが、店舗を東京・代田橋にオープン。店舗自体は小さいが、写真集が強い書店で掘り出し物も多いので、写真好きはぜひ足を運んで欲しい。
その他にも、蔦屋書店(代官山は写真集、洋雑誌が豊富。銀座はアートが豊富。)や青山ブックセンターなどの書店でも洋書、洋雑誌は取り扱っています。古書になると数多くの古書店で取り扱っている。ぜひ、自分の趣味にあったセレクトをしているお気に入りの書店を見つけて、洋書を、アートブックを気軽に手にとってもらえると嬉しいです。
書店員をしていて、日本の若い世代は洋書を買うことがあまりないなと思っていました。SNSの発達で瞬時に世界中の流行が手に入る世の中ではありますが、普遍的に優れたデザインやアートをアーカイブした本はSNSにはない耐久性を持ったものだと思います。ぜひ少しでも興味があるようでしたら、1冊でいいので買ってみてください。少しだけ、日常が楽しくなるはずです。
本、書店に関する過去のnote
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