ヨーロッパ在住のぼくがおすすめする本
ヨーロッパ在住10年経ってめっきり本を読むことが減った。けれど、Kindleのおかげでぼくはできるだけ本を読むようにしている。昔は怪奇小説短編集などもたくさん読んだものだが、ここのところまったくだ。それに、怪奇小説傑作選といったような本はそもそもKindleで売っていないことも多いから、どうしてもという場合は紙の本で買ったりもしている。
読む本は基本的には楽しめるような本を買っている。
ぼくはアンジャッシュの渡部建設という芸人の本や番組はできるだけ見るようにしている。食レポに代表されるものを砕いてわかりやすく語るトークはほかのタレントの追随を許さないものがある。そんな渡部建「超一流の会話力」はコミュニケーション能力に不安を感じているすべての方が読むべき本であると思う。
長年ぼくが愛好している小説も、おススメする本として外すわけにはいかない。それはスコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」である。村上春樹が翻訳したことで読まれた方も多いと思う。著作権が切れているということで、4種類程度の翻訳があり、読み比べるという面白い体験もさせてもらったが、やはり村上春樹は作家というだけあり、文章の持つパワーは村上春樹訳がいちばん存分に発揮されているのではないか。
色々な解釈がある作品であり、こういうとぼくがバカなんだと思われるかもしれないけれど、じっさいぼくはこの作品を恋愛小説としてエンタメ的な視点から楽しんでいる。もちろん文学的深みや心を打つ名言などが散りばめられていて、恋愛小説として語るにはちょっとすごすぎる作品といえるけれど、文学を文学として語ってしまうことはある意味、若い読者を遠ざけてしまうのではないかと感じている。自分に少し弱いセンシティヴな一面があるという方は、この作品の持つチャンネルとどこか合致するポイントを見つけることができるのではないかと思う。
もうひとつ、「アイ・アム・レジェンド」という作品は外すわけにはいかない。
ぼくが長年愛好している作家のひとりで翻訳された全作品は読んでいること思う。図書館で過去の雑誌掲載のみの作品なども読み漁った記憶があるほどだ。この作家の作品は現在ほとんどが絶版になってしまっているが、機会があれば絶対に読んでほしいと思う。
「アイ・アム・レジェンド」は映画とはだいぶ異なり、どちらかというとゾンビではなく吸血鬼が登場するので、ストーリーはだいぶ異なっているが、根本的な部分では似ているといえる気がする。
孤独感を描かせたらこの作家以上はいるのだろうかというほどで、この作品ではマシスンの良さが存分に出ていて、どこか心に残る忘れられない作品となっている。
マシスンは短編の名手として知られると同時に、テレビ業界でも様々な脚本に携わっただけあり、映像的でエンターテイメント性に富んだ作品の数々を残しており、映画化されて名作的なポジションになっている作品も多い。「地獄の家」は「ヘルハウス」というタイトルで、「ある日どこかで」「奇跡の輝き」という作品は同じタイトルで、ほかにもウィル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」やヒュー・ジャックマン「リアル・スティール」なども知っている方は多いと思う。マシスンの短篇はどれも奇抜な発想でアッと驚くような意外性のある短篇ばかりで、膨大な量の下調べをもとに書かれた作品群には圧倒される。
「ある日どこかで」「奇蹟の輝き」は(SF的作品ではあるけれど)恋愛小説と、サスペンスやホラーを多く残している作者らしからぬ作品ではあるが、この作家らしさのディテールの書き込みやリアリティといった感じは、マシスンの作品を何冊も読んできた方はニヤリとする作品だと思う。
小説を読むことは中学時代までなかったが、マシスンの作品は読みやすく適度に軽く、しかし小説を読みなれている方も楽しめるような作家でもある。名前がそれほど知られていないのが惜しまれる。
こんな感じでヨーロッパ在住に直接かかわりのある本はなかったけれど、ぼくが愛好してやまない作家や参考になった本の作品なども紹介したいとは思うものの……もっと時事的な書籍も紹介できたらなと思う。でも同時に、小説を読む人が減っている昨今、小説についても紹介していければなと思っている。