Blue: Kelly's Book Review, “Pachinko” by Min Jin Lee
パンデミック初期、隔離生活中のアメリカ人の友達から読めと半ば強制されて読み始めた、その名も"Pachinko"。
オリジナル(英語版)と同じく日本語版のタイトルも、「パチンコ」。
日本人であれば、二度見するようなタイトル。時は戦前、若く美しい少女が恋をし、生きるために朝鮮半島から日本に移住し、家族4代に渡る壮絶なストーリー。作者、Min Jin Leeが大学生の頃からリサーチを始めたと言われている。日本のディープな裏社会は日本人でも想像を絶する現実が描かれている。
彼らが住む国のネイティブ日本人として、(心の中で)逃げ出したくなったり、目を覆いたくなるようなシーンもたくさんある。私たち日本人は「私たち以外の人」に無関心で、知らず知らずのうちに社会的、精神的に苦悩を与えていることもある。明治維新後の植民地時代から続く「移民」に対しての侮辱や嫌悪感は、現代に至るまで差別や偏見に繋がっている。
この作品が唯一無二の理由として、読者がどんなルーツを持つ者であっても、主人公と同じ感情を味わえること。
最終章は涙が止まらない。心を揺さぶる感情、土壇場の底力、儒教的家族愛。新境地として移住し「よそ者」扱いを虐げられても、強く生き抜く壮絶な魂レベルの戦い。まるでアジア版の「怒りの葡萄」(By John Steinbeck)を読んでいるよう。
日本で欧米諸国の「移民問題」は他人事のようにニュースで流れる。まるで遠い国の話を聞かされているかのように、多くの人が無関心である。日本の移民に対しての法律は、人道的寛容さに欠け、先進国の法律ではない。どちらかというと、鎖国時代の法律に近い。「移民」=「よそ者」。欧米諸国の差別や偏見よりも、もっとたちが悪い。島国が理由なのか、鎖国の名残なのか。
私たちは「差別」という言葉をあまり理解していない。今の日本の法律では、日本で生まれ、日本で育ち、日本語しか話せなくても、両親が外国籍なら、外国人であるということ。何代に渡っても、「在日」という枠を越えることができない法律である。身体的には似ていても、守られている法律やパスポートは異なる。
人が人として生まれた時、平等になんの引け目や恥じらいもなく、生きていくことのできる社会。そんな社会を作ることができるのは、物理的に豊かで教育の行き届いた国、成熟した先進国だけである。
そこに生きる人あって、「国」が生まれる。この「島国」では理不尽で古臭い法律が未だ存在し、国を動かすことにとって都合の悪いことは、義務教育の学校で教育せず、メディアも報道しなければ、我々「島民」たちは知らずに済む。
私はこの本を英語版で読んだので、日本語版では同じような揺さぶられる感覚があるか、わからない。ただ、日本に対してネガティブな思考がある場合は、翻訳される時に排除されているか、または曖昧にされている場合がある。実際のところ、この作品は世界的大ベストセラーになっているが、日本ではあまり宣伝されていない。
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これから海外進出を考えている方、留学予定の人達は是非読んでいただきたい一冊です。私たち日本人の当たり前の感覚を客観的に見ることで、新しい価値観が生まれ、次なる領域、またはレベルに進むことができるはず。
これは英語版のReviewではありますが、留学経験者や、英語を読むのにあまり抵抗がない方、もちろん勉強中の方も英語版で読んでください。
英語版なので上級者向けではありますが、移民問題に興味のある方、英語に自信がない方は、日本語版を補足として一緒に読むことをお勧めします。
Happy Reading!
Love,
Kelly