共有フォルダは組織の写し鏡である
多くの会社では、組織で「共有フォルダ」を持っており、作成したデータや企画書を保存している。共有フォルダの中身は、その組織の歴史そのものであり、整ったフォルダ構造は整った組織からしか出てこない。
フォルダにも適用できる「コンウェイの法則」
ソフトウエアエンジニアリングの世界で有名な法則に「コンウェイの法則」がある。
組織体制とシステムの構造には相関性があるとされており、共有フォルダを組織データを管理するためのシステムと考えると、この法則が適用される。
プログラミングによって開発されるシステムに比べ、共有フォルダは専門知識を必要とせず、組織メンバーが直接編集できる(ノーコードで開発できる)点で、より色濃く組織体制が反映される可能性が高い。
最近話題の「逆コンウェイの法則」
近年「DX(Digital Transformation)」といった言葉が流行し、デジタルの力を最大限引き出すために会社の組織変革を促していく流れができている。
そこで出てきたのが「逆コンウェイの法則」である。コンウェイの法則の「組織がシステム構造を定義する」という考え方を逆に利用し、理想のシステム構造に合わせた組織を作っていく、という考え方である。
コロナ禍の中で急成長し、一躍注目を浴びたNetflix社など、大手IT企業が活用して成功をおさめているとされている。つまり、組織とシステムはどちらが優位ということではなく、写し鏡のような存在なのである。
組織を効率化させたいなら、フォルダを整理せよ
フォルダ構造は放っておくとグチャグチャになっていく。
個人フォルダが作られたり、種類の異なるデータが同じところに保管される。逆に同じ種類のデータが別々の場所に保管されたり、迷路のような深い階層が作られたりする。
そういった共有フォルダを持つ組織では、必要なデータを探す手間がかかる。また、過去の経緯が分からず、行き当たりばったりの運営に終始することになる。
そうした非効率をなくすというためだけでも、フォルダは整理されるべきである。
まずはあるべき組織の姿を描け
フォルダを整理するにしても、何から手をつけていいか。どうやってやればいいか分からない、ということもあるだろう。
まずは、会社組織の単位でフォルダを分けることをお勧めする。さすがに、組織の分け方が意味をなしていない、ということは少ないはずだ。
万が一、組織単位でフォルダ構造がうまく作れない、ということであれば、それはコンウェイの法則が示す通り、会社組織のあり方が間違っている可能性が高い。
その組織内でも、仕事の構造は存在する。課長が行う業務分担である。メンバーに割り振る仕事は、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)つまり「漏れなく、ダブりなく」が基本であり、上手にできていればフォルダ構造に反映させられるはずである。
「うちの会社はいろんな事業に手を広げていて、きっちり分けられないから」といった声は、はっきり言って言い訳である。その難しい業務分担を組織構造に落とし込み、最も効果的で効率的な組織を決めるのが上に立つマネージャーの仕事であり、「それができない」というのは組織運営者としての責任放棄である。
とにかく始めて、3カ月で作り上げる
フォルダ整理でよく聞こえるのは、「大掛かりな仕事になるから、大事だけれど『今じゃない』」という声だ。本当にそうだろうか?
組織効率を上げるのに、これほど直接的に組織メンバー全員に影響がある施策はなかなかない。また、実行の進捗もフォルダ構造を見るだけで一目瞭然でモニタリングもしやすい。
まずは業務分担と担当者をしっかり決めて、担当者にその業務の構成を考えさせる、または構成を提示する。「今」から初めて、必要なデータやファイルはそれまでのフォルダから移管していけばいい。
そうすれば、3カ月もすれば、新しいフォルダ構造ができあがる。
大事なことは、柔軟性とルールの徹底
フォルダ構造が完成して安定稼働するまでは、どうしても過去の運用に引っ張られがちだ。当初は想定していなかったような事態が出てきたりする。
そうしたときには、そのフォルダの管理者が柔軟に対応していけばいい。ただ、一方で他社目線(将来の担当者や組織管理者)で分かりにくい構成になっていないか、という視点でのモニタリングも重要である。
はっきり言って、その仕事を理解してない人間は分かりやすい組織構造は作れない。やはり、共有フォルダは組織の写し鏡なのである。