不登校と中学受験(22)
子ども達の逆襲
7年前の秋のことです。
小学生のお母様が子どもが不登校になったとご相談に来られました。
お子さんは小学5年生の男の子です。公立小学校に通っているのですが不登校になったのだとおっしゃるのです。
進学塾の◯学園に通っていて、かなり上位のクラスにいたのですが、塾も行かなくなったとのことでした。
そのお母様の手は、一眼見てわかるくらいにあざだらけでした。
お子さんがお母様に暴力を振るっていることは、誰の目にも明らかなくらいでした。
小学校1年生の頃から、お父様が一生懸命に勉強を教えてきて、小学4年生からは塾とお父様との勉強で最難関中学を目指していたそうです。
でも、ある日、お子さんが「テレビが見たい、ゲームがしたい、僕には自由がない!」と勉強することを拒否したのです。
お父様はものすごい剣幕でお叱りになり、大喧嘩になりました。
その日以来、お子さんは学校にも塾にも行かなくなったそうなのです。
そして、お父様はお子さんとは会話をしなくなり、知らん顔をするようになってしまいました。
お子さんはお母様に、「僕がもっと遊びたかったのに、お前らが僕の自由を奪った。」と、暴力を振るうようになっていったというのです。
このような話は、毎年のようにご相談いただくことなのです。
「親が頑張らないと子どもがいい結果を出せませんよ、あなたの責任ですよ」って、中学受験大手進学塾はご家族に平気で言います。
これは、カルトと同じです。
完全に洗脳だと私は思っています。
たかが中学受験です。
されど、中学受験、ではないのです。
たかが中学受験なのです。
でも不合格は「失敗」となるのです。
「失敗」したらもう終わりになるのです。
子どもの受験「失敗」は親の「失敗」になってしまっています。
だから、親は何としても「失敗」しないように全力で子ども達を合格させようと躍起になります。
躍起どころか、必死になります。
失敗すれば、もうそれでおしまいなのです。
第一志望校に子どもが合格できなかったら、おしまいなのです。
まして、全て不合格になれば・・・。
この中学受験大手進学塾の「洗脳」がどれほど子どもの心に傷を残すか、考えたことがありますか?
子ども達がどう受け取っているか、考えたことがありますか?
自分の意思で決めた勉強でもなければ、受験校でもないとすると、子ども達は何のために中学受験の勉強をしているのですか?
合格しても通う可能性のない中学校の受験など、何の意味もありません。
塾の宣伝ために踊らされ、たくさんの中学校を受験する子ども達が、本当に数多くいるのです。
もちろん、通ってみたい、通う可能性がある中学であれば、受験してもいいと思うのです。
関東の塾が行っている「灘中受験ツアー」など、私は全く無意味だと思っています。
受験慣れのためというかもしれませんが、不合格になった時の子どものショックを考えたことがあるのかと、塾にもご家族にも問いたくなります。
灘中を受けてみるというレベルであれば、開成中や筑波大附属駒場中を狙える子どもなのでしょう。
それならば、ギリギリまで、第一志望校のために努力をさせてあげればいいだけだと思うのです。
もし、灘中を不合格になったときに子どもが受けるショックを考えたら、開成中か筑波大附属駒場中あるいはその両方かわかりませんが、第一志望校の受験だけを考えるのが良いと私は思うのです。
あまりにもリスクが大きいのです。
子ども達の心の傷が、その時だけならいいのですが、一生、その心の傷を抱えていく子ども達がいることを、ご家族も塾も理解して欲しいと思うのです。
子ども達の一生を辛く苦しいものにしてしまう可能性があるのです。
受験させた大人には、どうやってもその責任を取れないのです。
不登校の現場に長年いて、強く言いたいのです。
過度な中学受験を煽る中学受験大手進学塾と、その塾に踊らされ、まるで、洗脳されたかのように子ども達に受験勉強を強いるご家族は、子ども達の心のことを、本気で考えて欲しいと思います。