チベットとラダックの文化を知る本、たかのてるこ『ダライ・ラマに恋して』
大失恋をした著者が、それをきっかけにダライ・ラマに会うべくチベットとラダックに向かい、そこでの文化を体当たりで学んでいくという楽しく読める紀行文。
著者の書き方的にも基本的には楽しく読めるが、内容的には仏教のことやチベットやラダックの文化を充分かつわかりやすく学べる本でもあり、読んでいて優しい気持ちになれる。
物資は少ないが楽しく朗らかに生きているラダックの人々と日本の暮らしを比較した文章が印象的だったので、ここに引用する。
多くを所有することが幸福だと信じてやまない現代社会に対して、本当に人間として大切なのは「何を持つか」ではなく、「自分がどうあるべきか」なのだと本書は告げている。
「生きとし生けるものが幸福でありますように」と毎日祈っているラダックの人たちの心は、地球上の誰よりも朗らかで穏やかであるだろう。
そういう生き方がある。
忙しない世界で忘れさられてしまった、丁寧で優しい暮らしを、再び取り戻さなければならないと強く思った。