重なっていく積み木の高さはお爺さんの思い出の深さ、絵本『つみきのいえ』
大人向けの絵本作品、『つみきのいえ』の紹介。僕が持っているのは、英語版である。
アニメーションも非常にいいので、どちらもぜひ見ていただきたい。12分ぐらいのショートフィルムです。
youtubeで最初の2分30秒だけ無料で見られます。
また現在、Amazonのプライムビデオでも視聴できます。下記リンクより
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B01MRV5XYJ/ref=atv_dp_share_cu_r
『つみきのいえ』のあらすじ
ある朝、一人の老人が目を覚ますと、部屋の床は水でびしょ濡れになっていた。老人が住む家の一帯は水位が上がり続けているようで、部屋が水に沈むとその部屋の上にまた部屋を作り、『つみきのいえ』のように家を縦に伸ばしているのだった……、というお話。
不思議な世界観で、物語は幕を開ける。
家の床が水浸しになると、老人は手慣れた様子で家の上に家を作り始める。やがて家の上の家が完成し、下の階の荷物を上に運び終えると、ふとした表紙に自分のお気に入りのパイプを水の中に落としてしまう。老人は仕方なくパイプを取りに潜水服に着替え、下の部屋に潜っていくと、老人の頭の中にはその部屋で過ごした昔の記憶が鮮やかに蘇ってくるのであった。
老人が思い出を振り返るたびに、水位が上がり続ける場所に家の上に家を作ってまでして住み続ける理由が、だんだん理解されてくる。
今では孤独な老人にも、先立った妻がいたのだ。妻との思い出を振り返りながら、その思い出の中には自分の子供たちの姿も出てくる。その子供たちが生まれる前の、若かりし頃の自分と妻、幼い少年の頃の自分と少女だった妻の姿……、様々な思い出が老人が下へと潜るたびに蘇っていく。
どれだけ水位が上がろうと、もともと住んでいた家が水の中に沈もうと、老人がこの場所を離れないのは、数々の甘美な思い出という堆積がこの場所にあるからなのだ。
それらは『つみきのいえ』のように、人それぞれ違う形をもって積み重なっているに違いない。無骨な家もあるだろう、綺麗な家もあるだろう、変わった形の家もあるだろう……、そのいずれもその家を作った本人にしかわからない『味』や『趣』を持った立派な家(思い出)であるのだ。
いつか自分の人生を振り返った時、この老人のように自分に一杯のワインを乾杯できるような、一生であれたらと思う。
今を、生きよう。いつか思い出となる、この一瞬を大切に生きていく。