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【読書感想文】『こうえんで4つのお話」

イギリスの児童文学作家、アンソニー・ブラウンの作品。

公園で4人のそれぞれ異なる性格をしたキャラクター(ゴリラ)が、とある一つの出来事について一人称で語っていく。

この絵本では、特別なことは何も起こっていない。公園での何気ない一幕があり、それを4人のキャラクターがそれぞれが見たように感じたように話すだけだ。

最初に話すのは、傲慢な女の人。
次に話すのが、気落ちしている男。
次が寂しげな少年。
そして最後に話すのは、元気いっぱいな明るい女の子だ。

4人が同じ出来事を経験したはずなのに、4人それぞれが全然違うことのように語る。

人生におけるあらゆる全ては、結局「自分」というフィルターを通して解釈される。

この絵本で言えば、傲慢な人は全てを傲慢な態度で見る。
気落ちしている人は、全てを落ち込んで見ている。
寂しげな人は、全てに寂しさを纏わせ、
明るい元気な人は全部を楽しそうに明るく経験する。

この4つはあくまで例であって、僕たちは一人ひとりが全く異なる固有のフィルターをかけて、人生を経験している。

というよりはむしろ、世界という共通の事象に「自分」というフィルターを通して経験する一過性の移ろいを、「人生」と呼ぶのだろう。

僕は最近、「同じ」ということがそもそも存在するのかどうか、を考えているが、それに通ずるところがある。

「同じ」という観念は存在する。しかし「同じ」という実在はないのではないか。

二つの水素原子を並べて、この二つは「同じ」だと言うことはできても、実際には二つ並んでいる時点で、別の水素原子なのだから、本当はこの世界において「同じ」ものは何一つとして実在していないのだ。

話が逸れたが、とにかく一つの出来事をあらゆる解釈で捉えることができる不思議さを描いた絵本だった。

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