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二年生の国語の授業

2021.1.6【93限目】

昔話「かさこじぞう」(東京書籍)

2年生の「かさこじぞう」は、1967年 ポプラ社発行の昔話の題材をもとに、教科書のために、いわさききょうこさんが、書き下ろした作品です。

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昔話の授業

・導入(範読)

授業の始まりは、範読からです。範読は子どもたちを昔話の世界に連れていく、大切な導入なので、私は、前もって何回も読む練習をします。昔話独特の語り口が生きるように読み聞かせるために、CDを聞いて、今の話にはない言い方を練習し、その意味を、前もって調べておきます。

その上で、範読すると、昔話特有の語り口や表現の面白さを子どもたちと共有することが出来ます。

1年生の国語下の本(付録)には「はなさかじいさん」が教師による読み聞かせのための資料として掲載されています。子どもたちはこの「花さかじいさん」を読み聞かせをしてもらった経験がありますが、本格的な授業としての昔話が登場するのが「かさこじぞう」です。

昔話は、語り始めから、しめくくりのところまで、全部が語り伝えられたお話です。


1)授業の進め方 (教科書参考)

〇 音読する中で今のお話に無い言い方をさがして、その意味も理解する。
〇 お話の中でおこった出来事を確かめる。
〇 昔話の面白い所を見つける。(発表し合う)
〇 お話の始まりと、終わりをくらべる。
〇 さまざまな昔話を読み、面白い所を見つける。 等

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2)「かさこじぞう」の段落分け(教科書参考)

お話は、5つの場面に別れています。

①の場面(家の中)
 餅を買うために、かさを作って売ることにした、貧しいじいさまとばあさま。
②の場面(町)
 大年の市でかさが、1つも売れず帰途につくじいさま。
③の場面(野原)
 雪に埋もれた地蔵さまを気づかい、売り物のかさと自分の手ぬぐいをかぶせるじいさま。
④の場面(家の中)
 互いに思いやって年を越すじいさまとばあさま。
⑤の場面(家の周り)
 じぞうさまのおかげで、よい正月を迎えることが出来たじいさまとばあさま。


3)教材で学ばせたいこと

このお話の中で、人物(人柄・行動)物語の展開や変化による面白さを味わう。

じいさま、ばあさま(じぞうさま)が、厳しい状況の中に生きています。冬の厳しさ、寒さ、生活の厳しさ、貧しさが文中に繰り返し語られている中での、じいさま、ばあさま、じぞうさまの心のやさしさ、あたたかさもくり返し語られています。

じいさま、ばあさまは、厳しい状況の中にいるからこそ、やさしく、思いやっている。と、いうとらえ方をすることで、人間の本質が、ことば、せりふの上でも、行動の上にも、繰り返し現れてきます。そこをしっかり押さえて、人間の見方、考え方を学ばせることが出来ると思っています。

様子や、気持ちを考え、それを通して本質的なこと「人間というのは、厳しい状況に生きているからこそ、お互いやさしく、あたたかく思いやりがある。」と、いう事も学ばせたい。

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4)じいさまとばあさまのお互いに寄り添って、思いやっている会話

①の場面(家の中での会話)
じいさま「ああ、そのへんまで お正月さんがござらっしゃるというに、もちこのよういもできんのう。」
ばあさま「ほんにのう。」

じいさま「何ぞ、売るもんでもあれば、ええがのう。」
ばあさま「ほんに、なにもありゃせんのう。」

ばあさま「じいさま、じいさま、かさここさえて、町さ売りに行ったら、もちこ買えんかのう。」
じいさま「おお、それがええ。そうしよう。」

④の場面(かさこが売れずに帰ってきたじいさまとの会話)
じいさま「ばあさま、ばあさま、今、帰った。」
ばあさま「「おお、じいさまかい。さぞつめたかったろうの。かさこは売れたかね。」

☆ばあさまから「売れたかね。」と、最初から聞かれると、じいさまは、胸が痛いと思いますが、「おお、じいさまかい。さぞつめたかろう。」と、ねぎらいの言葉があるのが、やさしい

じいさまが、じぞうさまが、雪で埋もれていた話をすると、ばあさまは嫌な顔一つしないで、「おお、それはええことしなすった。じぞうさま”も”この雪じゃさぞつめたかろうもん。さあさあ、じいさま、いろりに来て当たってくだされ。」と、言う言葉の中の”も”が、じぞうさまだけでなく、じいさまもさぞつめたかっただろうなあというやさしさがあります。

そして、「さあさあじいさま、いろりに来てあたってくだされ。」という話の中から、じいさまが帰て来たら、すぐに体を暖められるようにと、いろりに火をおこして待っていたのです。

そして、じいさまは、いろりの上にかぶさるようにして、冷えた体を暖めました。よほど冷えていたのでしょう。

じいさま「やれやれ、とうとうもちこなしの年こしだ。そんならひとつ、もちつきのまねごとでもしようかのう。」「米のもちこ、ひとうす、ばったら。」と、いろりのふちをたたきました。

すると、ばあさまも、ほほとわらって「あわのもちこ、ひとうす、ばったら」と、あいどりのまねをしました。

☆ばあさまが「そんなことしなさんな。」などと言ったら、せっかくのじいさまが、ばあさまの気持ちを明るくしようと、おどけていることが、残念な気持ちになるのが分かるから、ばあさまもあいどりのまねをしたと思います。それから二人は、つけな かみかみ おゆをのんで 休みました。

これらの会話を通して、じいさまもばあさまもおたがいの話に寄り添って、日々思いやりを受け止め、思いやりのある言葉を返して、穏やかな生活をしています。


5)昔話を読み返して(お正月に)

じいさまとばあさまの会話や様子から、私たち夫婦も改めて、お互いを思いやり、寄り添って穏やかな日々を過ごしたいと思いました。

「かさこじぞう」に限らず、絵本は、子どもだけのものではなく、大人になっても、私たちの心に響くものだと、改めて読み返し、そう思いました。


昔話の本の紹介(2年生の教科書から)

 〇「ちからたろう」 いまえ よしとも=文 たしま せいぞう=絵
 〇「やまんばの にしき」 まつたに みよこ=文 せがわ やすお=絵
 〇「さんまいの おふだ」 みずさわ けんいち=さい話 かじやま としお=画
 〇「はなたれこぞうさま」 かわさき だいじ=文 おおた だいはち=絵
 〇「ふしぎな たいこ」 いしい ももこ=文 しみず こん=絵
 〇「ももたろう」 まつい ただし=文 あかば すえきち=画
 〇「十二支の はじまり」いわさき きょうこ=文 ふたまた えいごろう=画
 〇「びんぼうがみと ふくのかみ」 おおかわ えっせい=絵
 〇「したきりすずめ」 いしい ももこ=さい話 あかば すえきち=画

授業が終わって、学校図書館や市図書館などで色々な昔話を読むきっかけになれば嬉しいです。

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【編集担当より】
2年生の国語の教科書に掲載されている昔話は、不思議なもので結構思い出すことができるものが多いですね。だいたい絵本だったでしょうか、絵のイメージまで思い出すものもあります。

母親が小学校で働いていたので、実家にはたくさん絵本や本があり、片っ端からよんでいたように思います。あまり記憶が定かではないですが、自宅で読み聞かせのようなことをしていたのでしょうか。物心つく頃には、暇があれば字を追いかけているような子供でした。おかげで国語の現代文のテストだけは、常によかったですね。

昔話や逸話など、現代まで続くモノガタリには、何かしら心に響くことや教訓となることがあるかと思います。温故知新ではないですが、意外と伝統的なものや古いものに触れることで、新しいアイデアをひらめいたり、自分の殻を破ることにつながったりするかもしれません。

文化・風習・規範などが今とは全く違う世界でも、同じような情動があるのは、よく考えると不思議なものです。いま現在に正しいと思うことや当たり前のことは、千年後も同じではないかもしれませんし、同じかもしれません。そう思うと歴史を紡ぐというのは、なかなか趣のあることかと思います。

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