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クラウドファンディングは信用創造機能を破壊するか?
近年、クラウドファンディングの急成長が目覚ましいです。
個人や企業が銀行などの金融機関を介さずに直接資金を調達できる仕組みは、資金調達の選択肢を広げ、多くの新たなビジネスやプロジェクトの実現を後押ししています。
しかし、この流れが金融システムに与える影響はどうでしょうか。
特に、銀行の「信用創造機能」に対して、クラウドファンディングは破壊的な影響をもたらすかもしれません。
本記事では、この疑問について掘り下げていきます。
信用創造とは?
信用創造とは、銀行が貸し出しを行うことで、新たな資金を生み出す仕組みを指します。
銀行は預金を受け入れ、その一部を準備金として保持しながら、残りを貸し出すことで経済全体の貨幣供給量を増加させます。
このプロセスにより、銀行は経済成長を支える役割を果たしています。
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上図のように、銀行から100万円の融資を受けた場合、その資金が供給されることで新たな経済活動が生まれます。
そして、その資金が別の企業や個人に支払われ、それが再び銀行に預けられることで、さらに新たな貸し出しが可能になります。
この連鎖反応が信用創造の本質です。
クラウドファンディングと銀行の違い
クラウドファンディングは、資金調達の仕組みとして銀行融資とは異なるメカニズムを持ちます。
クラウドファンディングには大きく分けて以下の4種類があります。
1. 寄付型(例:災害支援、慈善活動)
2. 購入型(例:新商品の先行販売、特典付き支援)
3. 貸付型(P2Pレンディング)(例:個人間・企業間の融資)
4. 投資型(株式型)(例:スタートアップへの出資)
クラウドファンディングの特徴は、資金提供者が銀行を介さず、直接プロジェクトや企業、個人に資金を提供する点です。
これは銀行の信用創造機能とは異なり、すでに市場に存在する資金の移動に過ぎません。
つまり、銀行のように新たな資金を創り出すわけではなく、既存の資金を「再分配」していることになります。
クラウドファンディングは信用創造を破壊する?
クラウドファンディングが銀行の信用創造機能を「破壊する」とする主張にはいくつかの論点があります。
銀行融資の代替となる可能性
クラウドファンディングが発展すれば、企業や個人は銀行からの融資を利用せずに資金調達できる機会が増えます。
この結果、銀行の融資量は減少し、信用創造のプロセスが抑制される可能性があります。
しかし、現状ではクラウドファンディングが銀行融資の完全な代替となるわけではありません。
特に大規模な資金調達や長期的な融資では、依然として銀行の役割が不可欠だと考えます。
金融仲介機能の変化
クラウドファンディングは、金融仲介の構造を変化させています。
従来、銀行が果たしていた「資金の需給をマッチングする役割」が、クラウドファンディングのプラットフォームによって代替されつつあります。
ただし、クラウドファンディングの成功率やリスク管理の問題を考慮すると、銀行のような信用審査機能を十分に果たしているとは言えません。
この点で、銀行の信用創造機能が完全に破壊されることはないと考えられます。
金融システムの健全性への影響
銀行の信用創造が過剰になれば、バブルの発生や金融危機のリスクが高まります。
しかし、クラウドファンディングは既存資金の移動であるため、過剰な信用創造を抑制する効果もあると考えられます。
この意味では、銀行システムに対する「破壊」ではなく、むしろバランスを取る役割を果たす可能性があります。
地方銀行・信用金庫への影響
クラウドファンディングの浸透により、特に小規模な地方銀行や信用金庫にとっては厳しい状況が予想されます。
これらの金融機関は、地域の中小企業向け融資を主要な業務としていますが、クラウドファンディングの台頭により、企業や個人が従来の銀行融資を利用しなくなる可能性があります。
その結果、収益悪化や貸出需要の減少を背景に、統廃合が進む可能性があります。
まとめ:共存の可能性
クラウドファンディングは、銀行の信用創造機能を直接破壊するものではなく、むしろ補完する存在として機能すると考えられます。
今後、過剰な信用創造を抑えるバランス機能と、多様な資金調達手段の提供として発展していくと考えられます。
一方、小規模の地方銀行や信用金庫にとっては、競合となり得るため、統廃合のリスクは高まるでしょう。
今後の課題としては、クラウドファンディング市場の健全性を保つための規制や、投資家保護の枠組みが重要だと考えます。
銀行としても新たな金融技術と共存すると考えながら、信用創造機能を維持しつつ、デジタル金融の波に適応していくことが求められるのではないでしょうか。
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クラウドファンディングの進化は、信用創造の「破壊」ではなく、金融の多様化と革新の一環として捉えるべきです。
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