クレーム対応~言葉と口調
例えばお客さまからお怒りの言葉を頂戴したときに、その言葉に耳を傾け、体から湧き起こる共感の言葉をお伝えするのと、トークスクリプトに載っていた謝罪の言葉をただ読み上げるのでは、お客さまの反応が全く異なります。
言葉と口調で全てを伝える
電話を通して伝わるのは、言葉(=言語表現)と口調(=非言語表現)だけです。これが伝わるものの全てです。
それでも、わたしたちがお客さまの怒りを自分のからだの中にまで取り込み取り込んだことで湧き起こった言葉なのか、そうでないのかは伝わります。
同じことを言っているのにクレームが収まらない人、クレームではなかったのにクレームにしてしまう人の中には、これを行っていない人がいます。
何を伝えるのか
では、その言葉と口調で何を伝えるのでしょうか。
私たちにとってあなたが大切なお客さまであるということを伝えるのです。
それは、現実的な問題と精神的な問題のうち、精神的な問題を先に解決するべきと言ってもいいでしょうし、友好的な関係を築かないうちに現実的な解決策を提案しても聞いてもらえないから、と言い換えてもいいでしょう。
例で考えてみる
例えばあなたが喫茶店でアイスが乗ったメロンクリームソーダを頼んだとしましょう。果たして店員が持ってきたのはアイスの乗っていないただのメロンソーダでした。
ここで、何も言わずに我慢する方も多いと思いますが、あなたは私が注文したものではないと言ったとしましょう。
そこで店員が、謝罪の言葉もなくアイスを持ってきて目の前のメロンソーダに乗っけたら、あなたは満足するでしょうか?
おそらくは、それで満足する人のほうが少数派です。
気持ちを受け止め、自ら気づく
自分がクレームを言う側だと思えばやってほしいことは明確です。
そのサービスがいかに客を失望させたかを感じ取り、それが本来提供すべきサービスとかけ離れたものであったと自ら分かってほしいのです。
その気持ちを受け止めず跳ね返したり、受け止めたフリをされるのであれば、乗っけられたアイスどころかメロンソーダを飲む気も失せます。
逆に、あなたの言葉からその奥にある気持ちまでをきちんと受け止め、申し訳ないことをしたと気づいてくれた店員が持ってきてくれたアイスなら、気持ちよく受け取ることができます。人間とはそういうものではないでしょうか。
せっかくご縁があったなら…
どんな辛いことも悲しいことも時間が解決してくれるということはあるでしょう。そして、嫌なことがあっても声に出さず我慢するお客さまのほうが圧倒的に多いと言われています。
そんな中、せっかくご連絡をくださったお客さまがいらっしゃるなら、精一杯対応してもいいんじゃないでしょうか。
気持ちを大切に受け止めたことが伝われば、その分怒りは溶けていきます。“怒り”や“悲しみ”や“悔しさ”などを“吐き出す”ためには、その吐き出したものを“受け入れる”場所が必要なのです。それが自分たちが作り出してしまった感情であれば、受け入れ溶かして差し上げるのは、できることならぜひさせていただきたいことであるはずです。
言語と非言語による適切な感情表現は、お客さまが悪いもの、汚いもの、嫌なものとして吐き出す感情を浄化します。それは「お客さまが見せてくださった感情はとても繊細で人間らしくて美しいものですよ」というメッセージでもあります。
最後には、そんなメッセージが伝わることが、クレーム対応で目指す関係です。
それでは、また。
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世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。