「すぐ先生につないで!」にどう対応するか
医師は「お医者さま」と呼ばれ、医者であることそのものが偉いと誰もが認識していました。そして「医は仁術」として、医師であるだけで「お医者さま」は人格者としても認められてきました。
日本で初めて「インフォームドコンセント」という言葉が論文で取り上げられたのは1970年のことだそうですが、「ガン患者にガンの告知なんてできるわけがない!」という考え方が、今や患者自身が正しい情報を知り、治療の選択肢の決定に関与するのが当たり前という考え方に変わってきました。
そんな中、医療はサービス業の一つとして捉えられ、何も知らない患者は医師の言うことを黙って聞けばいいんだという態度は受け入れられなくなってきました。
そうなると、苦しむのは医療従事者です。
医療知識はたくさん勉強して、点滴や清拭の仕方やらを訓練し、難しい国家資格を突破していても、クレーム対応の仕方を知らなかったり一般的な電話応対研修すら受けていないことも多くあります。
通常業務とは関係ない患者対応で時間を取られ、ストレスがたまるということにもなりかねません。
例えば、以下のようなやり取りはどんな病院でもあるのではないでしょうか。
ああ、とうとう、患者さんを怒らせてしまいました。
応対クレーム
応対クレームとは、電話応対の仕方によって相手を怒らせてしまったことを指します。今回のケースは、電話をかけてきたときには怒っていなかったのに、担当者の応対によって怒らせてしまったので、応対クレームです。
したがって、上記のような患者を、「困った患者だ」と考えていては同じことが繰り返されます。もちろん、「つなげません」と伝えるだけで引き下がってくれる患者も多いでしょう。しかし、怒ってしまったこの患者も、怒りたくて電話をかけてきた人ではありません。
それでは、どのように対応すべきなのでしょうか。
目的を共有する
「先生につないでください」は、患者さんなりに考えた自分の不安を解消するための解決策であり、目的そのものではありません。
一方、圧倒的な知識優位者は応対者である看護師です。
その知識優位性を利用して、今、取り得る最適な解決策を探しましょう。
患者が気にしているのは、「飲み合わせ」です。もっと言えば、これからお昼ご飯を食べた後に、いつも飲んでいる薬も、今日もらった薬も、両方飲んでいいのかということです。
「先生につないでください」はその目的のための手段でしかないのですから、先生につなげないのであれば、先生につながずに目的を達成する方法はないか、目的が達成できないならせめて患者の不安を和らげる方法はないかを考えましょう。
例えば、院内にいる薬剤師に確認することはできないでしょうか。
また例えば、「お昼は飲まずに先生からの返事を待っていてください」と案内することはできないでしょうか。
気持ちに寄り添う
先生の代わりに確認できる人はおらず、お昼の薬を飲まなくていいなどとは看護師が言えない、何も他の解決策はないという場合でも、気持ちに寄り添うことを止めてはいけません。
患者の不安を、自分の不安として共感的に対応すれば、患者はその分、安心します。
相手の言うとおりにできないから断ることに一生懸命になる、のではなく、この人のために何ができるだろうかと考えてください。自分のためを考えてくれているということが伝われば、人はその人に感謝したくなるものです。
それではまた。
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