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地方創生の課題「仕事がない」と言われるまちで、働くことにワクワクする体験とは?
1万人の町、過疎地における課題のひとつ「仕事がない」
高校が廃校になり、中学を卒業したらまちに住み続けることは難しいのが現状です。
そんな課題解決のひとつとして昨年から都農中学校で職場体験プログラム「つのワク」を実施、「都農で働くことにワクワクする」体験を目指しています。
1.地元の仕事を知る意味
都農町に住み続けるために望むことの第1位は「希望する仕事があること」
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都農町のまちづくりに携わるようになり、ぼくなりの優先順位No.1は、町内唯一の中学校である都農中学校で「地元の仕事を知る」「地元で仕事を創る」ためのプログラムづくりでした。
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1万人のまちのいいところは、ほぼみんな知り合い。
ただ、人としては知ってても、その人が具体的にどんな仕事をしているのかは、案外、大人同士でも知らないもの。
職場体験プログラムを考える上で、町内の事業所にとってもよいPRの機会として活用してもらう、そんなWin-Winの関係になることを意識しました。
前職で企画していた「キッザニア」の地方リアル版ともいえます。
2.受け身で終わらない職場体験
職場体験は、中学校の必修プログラムなので全国どこでもやってますが、学校の先生が地元の人ではないことが多く事業所との接点が少ないこと、あるいは民間の仕事をしたことがないので事業所お任せになりがち。
結果、毎年、同じような事業所で同じような体験をやっている感じかと。。
中学生に職場体験のことを聞いてみると、おじさんたちから一方的に難しい話をされて、3日間、言われるがままにアルバイト作業のような体験して帰ってくる、という声もままありました。
事業所の社長さんの言葉が印象的でした。
体験が終わったあと、中学生たちにどうだった?って聞いたら、「疲れた。大変だった」だけで。。
あぁ、あまり楽しくなかったのかなぁと。
もっと楽しんでもらいたいけど、人手不足もあり忙しいため、受け入れるだけで精一杯、簡単な作業させて終わってしまうんだよねと。
このようなヒアリングも踏まえて、受け身の体験で終わらないよう、「総合的学習の時間」15時間を使って事前事後学習と、事業所にインタビューと企画提案を行うプログラム「つのワク企画提案学」を企画しました。
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3.事業所訪問
職場体験で大切なのは、受け入れる事業所の協力。
事前に32事業所をすべて個別訪問し、各事業所の創業の思いや、強み、これからの展望、社長さんの仕事の楽しみ方のコツを教えてもらいます。
こちらからは、「つのワク」の趣旨や、事業所の課題やニーズ、中学生に提案してほしいことのすり合わせを行います。
中学生たちの事前学習にも活用できるよう、ホームページを制作、各事業所のPRもふんだんに。
また、事業所の訪問記録は、Facebookページを活用し、中学生だけではなく、まちの人たちにも知ってほしいなという思いで更新しています。
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体験のコンセプト、3日間のプログラム、事業所のニーズと中学生からの提案の方向性について、やりとりした内容をまとめていきました。
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4.事前リサーチ
中学校の事前学習では、1人1台配布されているタブレットを活用して、ホームページで情報収集。
各事業所が
・何をしている会社か?
・経営者の仕事の楽しみ方は?
・お客様はどんな人か?
をみんなで調べ合い、共有。
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5.インタビュー
職場体験で、事業所の方々から仕事の話を聞くことになりますが、受け身にならないよう、自分たちが聞きたいことを聞く、インタビューの練習をしました。
・そもそもインタビューってなんだろう?
・良いインタビューをするために何が必要か?
自分たちで考えて議論してもらった結果、良いインタビューのために大切なことを4つ、決めました。
・笑顔
・相手を見る
・あいづち
・大きな声
2時間使って、先生やぼくらが仮想事業所になって、中学生からインタビューを受け、見てる人たちは評価していきました。
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5分のインタビュー中に、他の中学生たちは審査員として評価。
応援メッセージを添えてその場で提出。
みんなでインタビュースキルをあげていきます。
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事前にこちらで用意した標準的な質問に加えて、自分たちなりに聞いてみたいことを書き足して、当日のインタビューシートを作成しました。
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いよいよ本番!
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服部さんはなぜ養豚場を始めようと思ったのか?
・中学生の頃には養豚をすることは選択肢のひとつに入っていたそう。
・海外に行きたいという想いが後押しになり、養豚を継ぐことを決意。
・アメリカやデンマークで修行し、今に至る
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その後、You Tubeにまで発展!
6.仕事体験
インタビューを終えて、いよいよリアルな仕事体験。
都農町らしい体験、都農町の社長さんじゃなきゃ聞けない話など、大人が見ていても楽しそうで羨ましくなる体験ばかりでした!
①農の都ならではの体験
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現在の大根の値段が10年前と比べると半額近くになっていることを事例に出しながら、需要と供給という経済の話、都農町の仕事の話、千切り大根農家はまだまだ儲かるなど、話は尽きず。。
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都農町は畜産のまちでもあり、宮崎牛・尾鈴豚・地頭鶏の養育から加工・出荷まで手がける事業所さんからリアルな現場を共有いただきました!
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都農町といえば都農ワイン。
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②1万人を支える職人の技術
都農町ならではの技術、まちのインフラを支える職人さんたちの仕事体験。
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③地域共生を実現させる仕事
人口の40%を超える高齢者や、障がい者・子どもたちが住みやすいまちをつくる地域共生社会づくりが都農町のまちづくりの目標。
児湯郡の障がい者スポーツ大会に4名の中学生が参加。
元気にスポーツを楽しむ障がい者の方々に、フリスビーやじゃんけん、ゲートボールなどの運動補助で貢献してきました!
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7.事業所に企画提案!
最終日はいよいよ、企画提案。
事前学習で、「企画の立て方」を学び、4-5事業所単位で、事業所ニーズを解決するアイデアを、他の事業所に行く人たちも一緒に。
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本番は1人!
事前学習したことも参考にしながら、提案書づくりをはじめます。
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ホワイトボードも使って提案準備
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「子どもがつくる地域食堂」を提案!
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タカラダフラワーでは、インターネットを使って花のサブスクや、入浴剤・香水の販売まで提案がひろがりました。
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これから残り4時間の授業を使って、提案に対して事業所かたもらったフィードバックをみんなで共有して、本格的な企画提案につくりあげていきます。
12月には事業所さんに都農中学校へ来てもらい最終プレゼン予定です!
都農町の仕事のことを中学生が知り、将来、ここで働くことにワクワクする、というのは一朝一夕で実現するものではありません。
ですが、3日間だけでも、毎年、中学生と事業所が真剣に向き合う機会が確保され、習慣化されていくことで、少しずつでも地元で働くこと、地元の若者を雇用することが増えていけばいいな、という思いでこれからも手伝っていきたいと思います。