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【詩】豆電球

まだ小学生の兄が 教材の豆電球で 遊んでいる 私は 「それなぁに?」と訊きながら 近づいて 薬指の爪くらいの 小さすぎる電球を 見ている シャボン玉のような 薄いうすい ガラスに 守られた ひかりは 乾電池の 両極に 反応して 生き物のように 明滅し ひかりは ちいさな ホタル になって 目の前の 世界が 白日夢に なっていく

それから 少し経って 私は 高熱を出して 救急車で 運ばれ 入学前の 長い休みに 紛れて 遠くの病院に 入院して 生死を 彷徨い シャボン玉のような 薄いガラスの中の ホタルになった夢でも 見ていたのだろうか そのまま 目覚めたくなかったのに 目覚めた後は 嫌いな 学校が 門を開けて 私を 待っていた

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