Kei, Ph.D.

Kei, Ph.D. (工学博士)と申します。専門は有機化学です。X (Twitter)で書ききれない事を書くためにnoteを始めました。化学に関する内容を中心に、メンタルヘルスやその他思うことについても書いていこうと思います。化学の内容は一般~大学生向けを紹介しようと思います。

Kei, Ph.D.

Kei, Ph.D. (工学博士)と申します。専門は有機化学です。X (Twitter)で書ききれない事を書くためにnoteを始めました。化学に関する内容を中心に、メンタルヘルスやその他思うことについても書いていこうと思います。化学の内容は一般~大学生向けを紹介しようと思います。

最近の記事

代表的なエステル

エステル、及びラクトン(環状エステル)は果物の香りを構成する化合物群であることを前回、及び前々回の記事から紹介してきました。今回はその続きとして身の回りに存在するエステルを紹介します。 酢酸イソブチル(図1)はバナナ、メロンやパイナップルなどに存在する香りの成分の1つであり、それらの果物のフレーバーにも利用されています¹⁾。また、香料やフレーバーとしての利用だけでなく、有機化合物を溶かすことができる性質を持つため、塗料や接着剤などの溶剤や、化学反応の溶媒²⁾といった用途もあ

    • ラクトンとは何か?

      前回の記事ではエステルについて説明をしました。復習になりますが、エステルとは図1のような構造を持つ化合物(R-COOR’)のことをいいます。エステルは果物などの香りを構成する化合物群の1つであることが知られています。 ところで、図1中のRとR’の部分が繋がって輪になった構造のエステルは存在するのでしょうか?答えを言いますと、輪になった構造のエステルは存在します。その化合物群はラクトンまたは、環状エステル(図2)と呼ばれています。本記事では以降、ラクトンと表記します。エステル

      • エステルとは何か?

        果物は色とりどりの見た目と良い香り、甘い味わいで我々を楽しませてくれます。ところで、果物の香りの成分はどんなものなのでしょうか?様々な成分が果物中に含まれていますが、香りの成分にはエステルと呼ばれている化合物群があります。聞きなれない言葉ですが、エステルとは何でしょうか?エステルとは図1のような構造を持つ化合物(R-COOR’)です。 構造をよく眺めてみるとカルボン酸(R-COOH)と構造が類似していることに気付くかもしれません(図2)。 何となく予想ができるかもしれませ

        • いつも強い不安に悩まされている人へ

          強い不安にいつも悩まされていませんか?不安障害という心の病気があります。もしも、該当する症状がある場合は心療内科や精神科を受診することで症状の軽減ができ、生活の質が上がるかもしれません。 私は高校生の時から強い不安に悩まされていた記憶があります(うつとは言わないまでも、気分の落ち込みが強いのは中学生の頃から既に始まっていたと思います。)。毎日、目が覚めると倦怠感が強く、しばしば吐き気にも悩まされていました。また、常に頭が不安やイライラで一杯で勉強や読書も手につかないくらい集

          シュリーレン現象

          砂糖や塩を水に溶かす時に、固体と液体の境界付近にもやが出ているのを見たことがあるかもしれません。その現象には”シュリーレン現象”¹⁾という名前が付いています。また、屈折率の違いでもやや揺らぎが見えること”が定義であるので、ウイスキーなどのロックで氷が溶けてお酒と混ざって出るもやや、アスファルトや車などに直射日光が当たって現れる空気中の揺らぎもシュリーレン現象に当たります。 もちろん、実験中のフラスコの中で試薬が溶媒に溶ける際にもこの現象を見ることができます。反応を円滑に進行

          シュリーレン現象

          化学でOLといえば

          世の中には同じ略語でも異なるものごとを表すものがあります。一般的にOLと言えばオフィスで働く女性のことですが、化学でOLと略されることがあるのは、Organic Lettersというアメリカ化学会(ACS)の論文雑誌です。(ちなみにTLと略される雑誌もあります。TLにも色々な意味がありますが、化学でのTLはTetrahedron Lettersというオランダの出版社(Elsevier, エルゼビア)の論文雑誌です。) ここで、Letterというのは短編の論文のことです。いわ

          化学でOLといえば

          自己肯定感について

          私の自己肯定感は低いです。昔から「自信を付けなさい」と言われてきましたが結局、高まることはありませんでした。自己肯定感を無理に高めようとして苦しんだり、無理をして失敗して自己否定に苛まれるくらいなら、高い自己肯定感を持つべきという執着を断ち切ったほうが楽だという結論になりました。 しかし、自己肯定感は低くても、自分自身を大切にすることは大事です。自分自身をいじめたところで何か良いことが起こることはないでしょう。辛い思考のループにはまるだけです。自分自身に厳しくすることと、自

          自己肯定感について

          卒業後も論文が読みたいとき

          「学生の時のように卒業後も論文を読みたい!」そう思ったことはないでしょうか?仕事に関連する物であれば勤務先を通じて手に入れることができるかもしれません。でも、趣味や自己研鑽のために読みたい場合はどうすればよいのでしょうか?今回は卒業後にも自由に論文が読みたい学問を愛する読者の方向けに論文の検索方法と閲覧または入手する方法を4つ紹介します。 論文の検索方法検索方法 興味がある分野や事柄が決まっている場合は論文を検索する必要があります。大学ではデータベースで論文が検索できたと

          卒業後も論文が読みたいとき

          “飲めないアルコール” メタノールとイソプロピルアルコール

          以前の記事では”飲めるアルコール”であるエタノール(CH₃CH₂OH)を紹介しました。 今回は”飲めないアルコール”であるメタノール(CH₃OH)(図1左)とイソプロピルアルコール((CH₃)₂CHOH)(図1右)を紹介します。エタノールの記事の繰り返しになりますが、化学で言うアルコールとは“分子内にヒドロキシ基(-OH)を持つ有機化合物”ということになります。ゆえに、エタノール以外にもアルコールと呼ばれる化合物は存在します。 メタノールとイソプロピルアルコールは一般的に

          “飲めないアルコール” メタノールとイソプロピルアルコール

          大学の保健管理センターとは?

          今回は主に大学生や大学院生向けの記事になります。大学に進学する予定の高校生の方も読んでおくと良いかもしれません。大学生になると慣れない環境で1人暮らしを始める方も多いと思います。身近に心身の不調や悩みを相談できる人がいないとき、どの医療機関を受診すべきか分からないときは、不調や悩みにどう対処したら良いか分からず途方に暮れてしまう場合があるかもしれません。 大学には健康やメンタルヘルスについて相談できる機関が設置されています。大学によって名称が異なるかもしれませんが、多くは”

          大学の保健管理センターとは?

          災害や事故でメンタルが辛い方へ

          この度は年始の災害と事故に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 今年2024年の年明けは、元日の大地震と津波による災害に始まり、翌日以降にもショックな事故や事件が連続して起こりました。特に地震と津波の被害は、東日本大震災の記憶を想起させるため、当時の様子と重なる部分を見出してしまい、気分が落ち込むなどの精神の不調に悩んでおられる方も多いかもしれません。うつ病などの精神の病を抱えておられる方には冬の気候と重なり、直接被害が無くても精神が辛いと思います。 私は被害に遭い

          災害や事故でメンタルが辛い方へ

          明けましておめでとうございます(2024年) Happy New Year

          明けましておめでとうございます。旧年中に仲良くしてくださった方々、記事を読んでくださった方々に御礼申し上げます。今年も引き続きよろしくお願い申し上げます。 新年ということで、今年の目標とやりたいことを挙げてみました。 ・うつ病の寛解と再就職(最重要) ・noteへの投稿を続ける ・化学の論文や書籍を読み知見を広げる ・精神療法の書籍を読む ・Youtubeへの動画投稿頻度を増やす(休眠中からの脱却) ・英語を勉強する(できればVRChatで会話が円滑にできるくらい) 皆

          明けましておめでとうございます(2024年) Happy New Year

          良いお年をお迎えください(2023年) Have a great rest of the year.

          今年1年ありがとうございました。仲良くしてくださった方々、noteの記事を読んでくださった方々に感謝申し上げます。来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。 今年中にうつ病を寛解させて社会復帰をするという目標は達成することができませんでしたが、行動する意欲を取り戻すことができたので、デスクワークのリハビリにと思い11月からnoteを始めました。順調に体力と集中力を戻すことができており、デイケアでの残業を想定したケアに連続で参加できるようになってきました。とはいえ現段階では、

          良いお年をお迎えください(2023年) Have a great rest of the year.

          重曹(NaHCO₃)

          重曹(NaHCO₃)はクエン酸と並んで名前がよく知られている物質の1つです。重曹の呼び名は重炭酸曹達の略です。曹達(ソーダ)とはナトリウム(Sodium)のことです。ナトリウムの元素記号(Na)にもなっているNatriumはドイツ語になります。 重曹は加熱すると分解して二酸化炭素が発生します。その性質を利用してベーキングパウダーとしても利用されています。理科の授業でカルメ焼きを作る実験をしたことがある方も多いかと思います。ところで、カルメ焼きを理科室で上手に作れる人はいるの

          重曹(NaHCO₃)

          VRChatを始めた流れ

          しばらく前にX(Twitter)でVRChatを始めた流れを紹介するタグが話題になりました。私はVRChatもやっています。以下にVRChatを始めた流れを紹介します。 新型コロナが流行り始めた。オンラインの飲み会をリアルの友人とした時にVRChatを勧められた。当時は遊び方が分からず、飲み会の時に友人と1回だけ遊んで休眠。 ↓ うつ病になり、ほとんど寝たきりになってしまい外出ができなくなる。 ↓ 症状が落ち着き始めた時に、VRChatなら外出しなくても人と会えるかもしれな

          VRChatを始めた流れ

          ほうれん草とシュウ酸塩

          緑黄色野菜として知られるほうれん草。茹でてサラダやおひたし、さらにはカレー(サグカレー)まで様々な料理に使われています。ところで、なぜほうれん草は生で食べられないのでしょう?よく言われるのが、アクが強いので食べられないということです。このアクにはどんな成分が含まれるのでしょうか?(生でも食べられるサラダ用ほうれん草という品種も出回っているようです。) ほうれん草のアクの成分は、シュウ酸(図1左)というカルボン酸のナトリウム塩または、カリウム塩である、シュウ酸ナトリウム(図1

          ほうれん草とシュウ酸塩