【駈込み訴え】 のユダの一言一句が性癖に刺さりまくり、皆様に興奮を訴えたくて書いた読書感想文
《概要》
新約聖書のユダの裏切りを、太宰治先生が愛憎渦巻く独白に仕上げた新解釈のお話。
《主な登場人物》
裏切り者・イスカリオテのユダ
愛する人・イエス・キリスト
《最高の一文》
私はあの人を愛している。
あの人が死ねば、私も一緒に死ぬのだ。
あの人は、誰のものでもない。私のものだ。
あの人を他人に手渡すくらいなら、手渡すまえに、私はあの人を殺してあげる。
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申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。
ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。
ユダが『旦那さま』に、イエス様がどんなに酷い男だったかを語る場面から物語は始まります。
意地悪くこき使われ、笑われてきた!ひとりじゃ何もできないくせに!弟子たちもマヌケばかり!私がやりくりしないと飢え死にするのに!お礼すら言わない!知らんふりして無理難題を押し付けてくる!貯めたお金も無駄遣い!
しかし、ユダはそんなイエス様を恨みません。美しい人だと思っています。みんなとは比べ物にならないくらい愛しています。健気すぎませんか。
そして次には
私はあなたから離れることが出来ません。どうしたのでしょう。あなたが此の世にいなくなったら、私もすぐに死にます。生きていることが出来ません。
後追いを仄めかすユダ。原作(新約聖書)では実際にします。聖書で自殺・後追いについて書かれているのはユダだけで、彼は特別だそうです。未来永劫語り継がれる罪…。
そんなユダには、いつも一人で考えている事があります。
くだらない弟子たち全部から離れて、また天の父の御教えとやらを説かれることもお止よしになり、つつましい民のひとりとして、お母のマリヤ様と、私と、それだけで静かな一生を、永く暮して行くことであります。
同居懇願宣言(with義母)
しかし断られたそうな。
私は天国を信じない。神も信じない。あの人の復活も信じない。あの人は嘘つきだ。言うこと言うこと、一から十まで出鱈目だ。私はてんで信じていないけれども私は、あの人の美しさだけは信じている。あんな美しい人はこの世に無い。私はあの人の美しさを、純粋に愛している。
ユダの幸せって何だと思いますか?
私は、ただ、あの人から離れたくないのだ。ただ、あの人の傍にいて、あの人の声を聞き、あの人の姿を眺めて居ればそれでよいのだ。そうして、出来ればあの人に説教などを止してもらい、私とたった二人きりで一生永く生きていてもらいたいのだ。あああ、そうなったら! 私はどんなに仕合せだろう。
しかしイエス様は、ユダの無償の愛を受け取らず、さらには嫌っているそう!
6日前、マリヤという村の娘が香油をイエス様にぶちまけ、自分の髪の毛で拭いた姿を見たユダ。失礼な事をするな!と叱ったら、イエス様はユダを咎めました。イエス様の頬は赤く染っていました。
私がこんなに、命を捨てるほどの思いであの人を慕い、きょうまでつき随って来たのに、私には一つの優しい言葉も下さらず、かえってあんな賤しい百姓女の身の上を、御頬を染めて迄かばっておやりなさった。
「こんな女ごときに鼻の下伸ばすな(意訳)」
好きな男性が、女性に心動いた瞬間を目撃し心乱される男性の描写が大好きです。ありがとうございます。
ユダはイエス様に失望を感じ、
ああ、もう、この人も落目だ。一日生き延びれば、生き延びただけ、あさはかな醜態をさらすだけだ。花は、しぼまぬうちこそ、花である。美しい間に、剪らなければならぬ。あの人を、一ばん愛しているのは私だ。どのように人から憎まれてもいい。一日も早くあの人を殺してあげなければならぬと、私は、いよいよ此のつらい決心を固めるだけでありました。
「こんな惨めな醜態見てられない。どうせ死ぬなら美しいまま死んで欲しい。私が殺す(意訳)」
花は、枯れた後も美しいと思います。私は、美しさの面影が無くなった人間が大好きです。しかしユダの主張もわかります。そして、私はそんなユダが大好きです。
私の愛は純粋の愛だ。人に理解してもらう為の愛では無い。そんなさもしい愛では無いのだ。私は永遠に、人の憎しみを買うだろう。けれども、この純粋の愛の貪慾のまえには、どんな刑罰も、どんな地獄の業火も問題でない。私は私の生き方を生き抜く。身震いするほどに固く決意しました。
愛が歪み切ったら1周まわって純愛だと解釈するタイプですが、この場合はユダ自ら純愛だって言ってるので心強いですね。私も胸を張って純愛宣言が出来ます。
お祭りの当日(最後の晩餐)。イエス様は弟子たちの足を洗い始めました。皆がうろたえる中、ユダだけは「自分の死の運命を察して寂しいんだな。可哀想に」と思います。そしてその瞬間、無性に抱きしめて泣きたい感情に駆られました。
お許しください、私はなんて馬鹿な事を考えていたんだ!皆で今すぐ逃げましょう!!
心の底からの愛の言葉は口からは出ませんでしたが、その気持ちはユダの胸いっぱいに広がりました。
そして皆の足を洗ったイエス様。ペテロさんのとある天然発言で場は和みました。
「皆汚れのない身体になったよ、皆清いよ(意訳)」と笑うイエス様。
しかし…
すっと腰を伸ばし、瞬時、苦痛に耐えかねるような、とても悲しい眼つきをなされ、すぐにその眼をぎゅっと固くつぶり、つぶったままで言いました。
「みんなが潔ければいいのだが」
「おまえたちのうちの、一人が、私を売る」
そしてイエス様は、これ以上のとんでもない言葉を口にします。
「私がいま、その人に一つまみのパンを与えます。その人は、ずいぶん不仕合せな男なのです。ほんとうに、その人は、生れて来なかったほうが、よかった」
ユダの裏切りを見抜き、皆の前で晒しあげ、生まれてこない方が幸せだったと言いながら、ユダの口にパンを押し付け、「おまえの為すことを速かに為せ」
い~や地獄みたいな一部始終!!!
(東京ホテイソンさんのギャグのパロディです)
そして駆込んで訴えてる現在に繋がります。
ユダの人生のサビはどこでしょうか?駆込み訴えの全文がサビです。しかし、どこか一つだけと言われたら、私はここからだと思います。
おや、そのお金は? 私に下さるのですか、あの、私に、三十銀。なる程、はははは。いや、お断り申しましょう。殴られぬうちに、その金ひっこめたらいいでしょう。金が欲しくて訴え出たのでは無いんだ。ひっこめろ!いいえ、ごめんなさい、いただきましょう。
イエス様を売って得たお金は、日本円だとおよそ90万円くらいだそう。(諸説あり)奴隷1人分の値段みたいです。
私は、ちっとも泣いてやしない。私は、あの人を愛していない。はじめから、みじんも愛していなかった。
うお~√﹀\_︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀\_︿╱▔︺!!!!
ユダ!!!!!!!
これが落ち着いていられるでしょうか?無理です。もっと早くこの物語に出会えていたら多大なる影響を受けていたことでしょう。しかし、性癖がこじれきった今読めたことで、ユダの気持ちが痛いくらいに理解できます。いつ読んでもベストタイミング。ここが私のアナザースカイ。
駆込み訴えでは描かれていませんが、原作(新約聖書)では「この人がイエス様だ」と証明するためにユダはイエス様にキスをします。
イエス様の処刑後、ユダは激しく後悔して受け取った銀貨を返却しようとするも断られます。そして
首を吊って自殺します
聖書の作者様と太宰治先生にありったけの感謝と感想をお伝えしたいのですが不可能ですので、こちらの感想文にまとめさせていただきましたがもっと書きたいです。ver.3に早くアップデートしたいです。ユダ……
神ですら救済できぬ罪深き者…