映画紹介#003「ヒューゴの不思議な発明」(2011)前編
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『ヒューゴの不思議な発明』(2011・アメリカ)
監督:マーティン・スコセッシ
製作:ジョニー・デップ
出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、ベン・キングズレー、サシャ・バロン・コーエン、ジュード・ロウほか
最近プライムビデオの見放題作品に追加されてるのを見つけて、これは是非とも紹介せねばと思った作品。個人的に大好きな作品。
この作品に出合ったとき、自分はちょうど映画の歴史に興味を持ち始めていた時期で、まだ映画が誰もがあっと驚く魔法のような存在だった頃の空気感を1930年代のパリにタイムスリップして味わえる内容に、映画そのものがますます好きになった。
監督は巨匠マーティン・スコセッシ。
『タクシードライバー』(1976)、『レイジング・ブル』(1980)、『グッドフェローズ』(1990)、『シャッターアイランド』(2010)、『沈黙 -サイレンス-』(2016)、『アイリッシュマン』(2019)など、数々の名作をコンスタントに世に送り出している。
映画史に造詣が深く、古典映画の収集や修復、再上映にも力を入れている。
重厚で暴力的に人間社会の闇を描くような作品が多いが、今作は子どもから大人まで安心して楽しめるスコセッシ監督としては異色の作品。
【見どころ① 少年少女の成長物語】
原作はブライアン・セルズニックによる、膨大な量のイラストで構成されたファンタジー小説。
大きな駅の秘密の隠し部屋にひっそりと暮らす孤独な少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)と、好奇心旺盛で冒険に憧れる本が大好きな少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)。
二人の出会いがきっかけとなって、封印されていた過去の秘密が明らかになっていく。その秘密はやがて、二人の運命をも変えていく。
子どもたちに寄り添った物語は、まさに児童文学のようなワクワク感。
今では主演作を何本も抱えるほど立派になった、エイサとクロエの演技が瑞々しく、なんとも微笑ましい。
【見どころ② 1930年代・パリの雰囲気】
第一次世界大戦から狂騒の1920年代の果てに世界恐慌を経て、ファシズムの足音がゆっくりと忍び寄る時代。
そんな中で人々は明るく賑やかに暮らし、音楽や芸術がそこここに溢れる。
イギリスきっての名優が演じる個性豊かな大人たちがヒューゴの冒険に彩りを添え、花の都パリの詩的な雰囲気を感じさせてくれる。
特に鉄道公安官役のサシャ・バロン・コーエンは、無視したくてもできないほど強い存在感。
【見どころ③ 映画への愛】
映画黎明期への愛とオマージュに溢れる本作は、実在の映画作品への言及と映像がいくつも登場する。
リュミエール兄弟、チャップリン、キートン、ハロルド・ロイド、ダグラス・フェアバンクスなどなど(現代のYouTuber、TikTokerの大大大先輩)。
映画の歴史・第一章といってもいい教科書的な内容で、楽しみながら映画、映像文化の始まりを知ることができる。
最後にひとつ。
鑑賞前に、20世紀初頭に実在したある魔術師(!?)をご紹介。
彼の名はジョルジュ・メリエス。
彼はそれまで誰もなし得なったことを実現させた偉大な人物。
この映画にどのように絡んでくるかは、観てからのお楽しみ。
大きな映画館の、一番の特等席に座っているところを想像してほしい。
徐々に照明が落ちて劇場全体が心地いい暗闇に包まれていく。
映写機に火が灯れば、目の前に広がるのは、およそ90年前のパリの街並み。
やがて一人の少年の姿が見えてくる。いよいよヒューゴの冒険が幕を開ける。さあ、映画の世界に身を委ねよう。
後編に続く。