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【絵本】『ぼちぼちいこか』

あらすじ


重量級のカバ君は、船乗り、飛行士、ピアニストと、次々に新しい仕事に挑戦しますが?おかしな結末をユーモラスな絵で語ります。

偕成社HP『ぼちぼちいこか』紹介ページより

感想

次々と新しいことに挑戦するも失敗を繰り返すかばくん。
大きい体にとぼけたお顔が可笑しくて癒されます。

そんなかばくんの魅力を存分に引き出しているのが関西弁の翻訳
訳者であり、大阪出身の今江祥智さんによると、

思慮深か気にノーンビリした顔を、書斎の棚で毎日のように見かけては、「やあ!」とか「オハヨ」とか「お元気ですやろか?」などと呼びかけているうちに、——カバくんがどうやら大阪育ちみたいな顔に見えてきてしまい——いざ訳そうとすると、大阪弁でしか訳せませんでした。

偕成社HP『ぼちぼちいこか』紹介ページより

編集者には渋い顔をされたそうですが、今江さんはもうカバくんは大阪育ちとしか思えなくなり、OKが出るまで待ったそうです。

原題は『What can a hippopotamus be?』。
直訳すると『かばくんは何になれる?』ですが、それを『ぼちぼちいこか』とつけるセンス。秀逸すぎる…!

本文は、英語では大部分が「Can a hippopotamus be a ○○?」「No.」の繰り返しなのですが、今江さんの訳では言葉遊びを交えながら、ユーモアたっぷりの関西弁で笑わせてくれます。

かばくんが関西弁をしゃべっていてもまったく違和感のない、というかむしろ、関西育ちにしか見えない。(アメリカで生まれた絵本なのに!)
かばくんのキャラクターをより魅力的に、原作の良さを一層味わい深くしてくれる訳なのです。

(ちなみに私は、訳者の今江さんと同じ大学の同じ学部出身です。嬉しいご縁😊)

***

『ぼちぼちいこか』は子どもの頃からずっと大好きな絵本。大人になってからも折りにふれて読んでいます。

どんなときにこの絵本を読みたくなるかというと、ひと休みしたいとき、です。

新しいことに次々と挑戦し、失敗しても諦めない。だけど、ちょっと疲れたら、立ち止まってひと休み。

頑張るけれど無理はしないの精神を、かばくんに教えてもらっているような気がします。

私の息子にもいつかきっと訪れる。
大きな壁にぶつかるとき。
行き詰まってうまくいかないとき。

そんなときは

「ぼちぼちいこか」

の気持ちで受け止めたい。

そして、
頑張りすぎてちょっと疲れてしまったとき、自分自身にも「ぼちぼちいこか」と言ってあげたいです。

書誌情報

『ぼちぼちいこか』
作:マイク・セイラー
絵:ロバート・グロスマン
訳:今江祥智
出版社:偕成社
発行年:1980年

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