「ついやってしまう」体験の作り方
この本は体験デザインに関する本です。以下の3つのテーマについて扱っています。
「つい」やりたくさせてしまう
ここでは、「直感のデザイン」という体験デザインが使われています。直感のデザインとは、シンプルで簡単な体験をデザインし、ユーザーになにをすれば良いのかを「直感的」に伝え、物語全体の簡単な予感を抱かせる方法です。人間に共通する性質を利用することで、直感的にわかりやすく伝え、ユーザーの自発的な体験・学習を誘発し、「やってしまう」体験をデザインしています。
人間の脳は仮説を抱いて試行し、それが正しかった時に歓喜する性質があります。この体験ループ自体が、「ゲームが面白い」という状態です。なので、「つい」やりたくさせてしまうために、直感デザインを用い、以下のような体験ループが使われています。
ここでポイントなのは、いかにこの体験がシンプルでわかりやすいかということです。この本の中では、マリオが例に使われていますが、マリオの初期画面はユーザーにいかにわかりやすく「右に行く」というルールを伝えるかが最重要視されており、そのわかりやすさのために面白そうという見た目を犠牲にしているそうです。
「つい」熱中させてしまう
直感のデザインは体験の基本となるデザインですが、欠点もあります。それは連続するとユーザーに疲れと飽きをもたらし、体験自体を止めてしまうという点です。
そこで必要となってくるのが、「驚きのデザイン」です。
「驚きのデザイン」は、ユーザーが持つ日常への思い込みや「こうなるだろう」という思い込みを覆し、驚かせることで、直感のデザインの疲れを拭い去ります。
ですので、「驚きのデザイン」の構造は以下のようになっています。
驚きのデザインのポイントは、前提や日常への思い込みを外すということなので、以下の10のタブーを意識することで、良い体験デザインが作れます。
「つい」誰かに言いたくさせてしまう
「直感のデザイン」と「驚きのデザイン」を組み合わせることで、直感的かつ飽きることのない長時間の体験をデザインすることができます。しかし、その体験に意義がなければユーザーの心は動きません。そこで必要となってくるのが「物語のデザイン」です。
物語のデザインに入る前に考えなければならないのは、「そもそもゲームの意義は何か」ということです。時間の無駄と思われてしまえばそれまでですし、何かゲームをプレイする意義がなければなりません。
著者によると、ゲームの意義は「プレイヤーが成長すること」です。ゲームの中で展開される架空の物語は、あくまでプレイヤーが成長する体験をデザインするための手段にすぎません。
なので、ゲームという物語を通して、ユーザーがどのように成長するかということを考慮しなければならず、また、ゲームという物語に入り込んでもらわなければなりません。そのために、まずはユーザーを翻弄するところから始めます。
脳は物語を語る臓器だといえるほど、たくさんの目の前の情報を処理しながら、過去のストーリーと照らし合わせ、結局今目の前で起こっていることは〇〇だとストーリーを作り出します。その性質を利用し、一見わからない断片的な情報を提示し、翻弄するのです。
その翻弄の具体的なテクニックは以下の3つがあります。
次にどのようにユーザーを成長させるかについてです。ここでいう成長は定義が難しいのですが、よりできるようになる、知識を得る、決断力を得るというように認識しておくと良いと思います。
ユーザーの成長を促すために使われるテクニックは以下の3つがあります
次にユーザーに究極の選択をさせ、自ら物語を進めるという意志を持たせる段階です。この段階を経験することで、ユーザーは他の誰かに自分の物語を語りたいという気持ちを持つのです。
究極の選択の例としては、今まで歩んできた同行者を殺すか殺さないか、旅を終わらせるか終わらせないか、などゲームによって様々です。テーマとしては、命のやり取りがある、未知の体験であるといったものが重要となります。
以上をまとめると、物語のデザインの構造は以下のようになっています。
多くのゲームが最終的にスタート地点に戻ってくるよう設計されているのは、ゲームを開始した時と終了した時のプレイヤー自信を比較させることで、成長を実感させているのですね。
最後に、体験デザインの正体について考慮します。
体験デザインとは、幾多の感情を一手ずつ繰り出し、その時その時の文脈を作りながら、ユーザーの心を動かしていくということです。
整理すると、体験→感情→記憶という順番で処理され、心に残っていきます。
この分野は、多くの専門分野にまたがり、まだまだ研究されている段階で、急速に知見が溜まってきているそうです。この後どのように発展していくのか楽しみです。
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「ついやってしまう」体験の作り方
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