競争力を高めるポジショニング、3C(顧客・自社・競合)で考える
ビジネスでの競合は、歓迎しにくいかもしれません。
しかし、競合は必要な存在です。
自社製品の市場を開拓するためには、競合との競争が必要になるからです。
競合製品との競争と差別化は、顧客が自社製品を買いやすくするために不可欠です。
3C(顧客・自社・競合)間のポジショニングを、スマホの例を使って解説します。
競合との競争は必要
Customer(顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の3つの頭文字をとって3Cと呼びます。
顧客は、競合製品と自社製品を比べることで、自社製品の「効用/ベネフィット」を理解します。
そして、自社製品の価格が妥当かを判断します。
顧客にとって自社製品が「良いか?良くないか?」を理解し、「買うか?買わないか?」を決めるためには、競合製品との比較が必要になります。
市場を開拓するためには、積極的に競争をつくり出すことが重要になります。
競争をつくり出すことで、自社製品のポジショニングが変わってきます。
ポジショニングとは
ポジショニングについては、一般的には、次のような認識があるかもしれません。
ターゲット市場において、独自の位置を占めるために、競合製品と差別化できる価値を考える方法
しかし『キャズムVer.2 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』(参考文献1)では、次のように述べられています。
ポジショニングというのは、製品の属性を表すものであり、「そうであればよい」とか、「その方向にもっていきたい」といった将来に関わることを表す言葉ではない
ポジショニングは、製品に対して顧客が抱いている概念に根差すものであり、ベンダー(供給者)が随意に選んだ言葉で表されるものではない
ポジショニングは、製品を売りやすくするためのものではなく、顧客が買いやすくするためのものである
以上のように述べられています。
つまり、ポジショニングは客観的な事実に基づくもので、供給側が決める(つくる)ものではなく、顧客が決めるものということになります。
さらにポジショニングは、売り手視点による売るためのキャッチコピーではないということになります。
競合製品と比べることで、自社製品の購入の必然性を、顧客に認識してもらうことがポジショニングの目的といえます。
この点を念頭において、競争力を高めるポジショニングについて考えます。
ポジショニングは「顧客⇔自社製品⇔競合製品」間の関係で決まります。
競合製品について考えます。
2種類の競合製品
『キャズムVer.2 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』(参考文献1)では、競合製品には次の2種類があると述べられています。
代替(したい)製品
対抗製品
1.代替(したい)製品
ターゲット顧客の問題解決に使われている既存製品を、代替(したい)製品と呼びます。(※以降は「代替製品」と記載します)
自社製品と同じ問題を解決し、ターゲット市場で広く認知されている既存製品を代替製品に設定します。
代替製品よりも、自社製品の技術の方が優れている(または新技術である)ことをアピールできれば、代替製品が持つ市場を獲得するチャンスが得られます。
代替製品が広く認知され、大きな市場を持っているほど、効果的です。
例えば、アイフォンの市場開拓でのポジショニングは次のようになります。
自社製品:アイフォン
代替製品:ガラケー(携帯電話)
広く認知され、大きな市場を持っていたガラケーを「代替製品」とし、自社製品(アイフォン)の新技術をアピールすることで、代替製品が持つ市場の獲得を狙いました。
2.対抗製品
自社製品と同じ機能と、自社製品と同レベルの技術(または新技術)を持つ製品を、対抗製品と呼びます。
対抗製品を設定することは、代替製品の場合のように「その市場を獲得する」ことが目的ではありません。
自社製品と「同じ機能」と「同レベルの技術(新技術)」を持つ対抗製品に対して、自社製品の方が総合的に優れていることを、顧客に認識してもらうことが目的です。
例えば「アイフォンvsアンドロイド端末」競争でのポジショニングは次のようになります。
自社製品:アイフォン
対抗製品:アンドロイド端末
自社製品(アイフォン)と「同じ機能・同レベルの技術(新技術)」を持つ「対抗製品(アンドロイド端末)」に対して、自社製品のデザイン性などの優位性をアピールして対抗しました。
競争と差別化
顧客は、競合製品と自社製品を比べることで、自社製品の「効用/ベネフィット」を理解します。
そして、価格が妥当かを判断します。
競合製品との競争と差別化は、顧客が自社製品を買いやすくするために不可欠なポジショニング要素になります。
競争と差別化の例
スマホでの「アイフォン vs アンドロイド端末」の競争に対して、顧客の反応は次のようになると考えられます。
デザイン重視の顧客は
アンドロイド端末と比較して → アイフォンを選ぶ
コスパ(コストパフォーマンス、費用対効果)を重視の顧客は
アイフォンと比較して → アンドロイド端末を選ぶ
顧客が商品を買いやすくするためには「競争と差別化」は必要といえます。
最後にポジショニングの例を考えます。
ポジショニングの例
「アイフォンvsアンドロイド端末」の競争での、アイフォン側から見たポジショニングの例を考えます。
※次の例は、キャズム理論(参考文献1)の方法を参考にして作成したものです。実際のアップル社との関係はありません。
自社製品
アイフォン
ターゲット顧客
既存の携帯電話/サービスに対して不満を持っている人々
ターゲット顧客の課題
音楽を外に持ち歩きたいが、携帯電話と音楽プレーヤーの2台持ちは嫌
代替製品
ガラケー(携帯電話)
対抗製品
アンドロイド端末
「音楽を外に持ち歩きたい」人々に対して、当時のガラケーでは「音楽プレーヤーと2台持ち」になるという課題がありました。
そのような課題を持つ人々を「ターゲット顧客」にしました。
そして、ガラケーを「代替(したい)製品」に設定しました。
そのうえで、自社製品の画面のタッチ操作で音楽も聴けるという新機能をアピールしました。
その結果、アイフォンは、代替製品(ガラケー)の持つ市場を獲得していきました。
代替製品(ガラケー)は広く認知され、大きな市場を持っている製品でしたので、その効果は絶大でした。
では対抗製品のアンドロイド端末に対しては、どのようにして対抗することができるでしょうか?
アイフォンを中心にして、サービスで包み込むことができます。
そのようにしてつくられる製品を、ホールプロダクト(完全な製品)と呼びます。
ホールプロダクトについては、次回の記事で説明します。
※本記事は『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第6章 戦線の見定め」を参考にして作成しました。
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参考文献
ジェフリー・ムーア『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第6章 戦線の見定め」