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佐藤俊介、オオタニサンレベルでしょ。
普段、モダンオーケストラのコンサートにはあまり興味がないので熱心に情報収集をしていないんだけど、ダラダラTwitterを見てたらちょっとした衝撃情報。
「佐藤俊介来日するんかい!しかもルベルやる、それも東響と?」
「んー、オケがモダンかー」とも思ったけど、公演一週間前だったのでとりあえず慌てて予約。
【当日券・電話予約/会場販売】
— ミューザ川崎シンフォニーホール (@summer_muza) June 20, 2021
6月20日(日)14:00開演
ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
「名曲全集第168回」
指揮&ヴァイオリン:佐藤俊介
ヴィヴァルディ:「四季」ほか
10時より当日券販売。学生券(1000円!)は13時より。詳しくは下記ご確認ください。https://t.co/sKyTKKxj3M pic.twitter.com/zh0smA8L3h
0. 川崎は地獄か?
ミューザ川崎シンフォニーホールは初めてのホールで、良いという噂(と震災で崩壊したという話)を耳にしてたのでそれも楽しみ。
コンサートの予習は置いておいて、川崎の予習にこの本を買って爆読しました。
川崎の暗部が「悪意あるだろ?」てくらい血生臭く描かれていて、めちゃめちゃ面白かったんだけど、帯にデカデカと「ここは、地獄か?」と書かれてたので、川崎に着いたらそっとカバンにしまった。
1. ミューザ、めちゃめちゃ良かった
建設に230億かけて、震災で内装が崩壊して改装に18億かけて、その責任について裁判にもなっていたというミューザ川崎シンフォニーホール。
これがめちゃめちゃ良かった!サントリーより良いんでない?
いわゆるワインヤード型の、ステージを丸く囲む客席は、特に上方向に客席が重なっていて2,000近いキャパにも関わらずどの席からもステージが近い。
内装も椅子も良いし、音響もとても自然。
ここでマーラーとか聴いたら迫力がありそう。
これを使える東響は恵まれてるんじゃないかなー。
2. 東響(も当然)うまい
いや、うまいのは当たり前なんだけど佐藤へのリスペクトも感じられるし、演奏様式の理解と表現もとても丁寧。ルベルの冒頭の長い不協和音に、とても自然なシェイプが着けられているのを聴いて、いやこれはオケすごいなと。
メンバーの半数くらいはバロック弓を使っていた。
音だけ聴くと、たまに「フライブルク・バロック管は、川崎にあったんでしたっけ?」て思う時も。
いわゆる6型の(プログラムにしては)大編成だったけれどアンサンブルも素晴らしいし、かと言って安全に過ぎないのが良い。
コンマスは水谷。チェンバロは重岡麻衣。
3. 佐藤俊介、バケモン
さて、佐藤俊介のバケモンぶりをどう言葉にしようか。
正直、四季の装飾(というかもはや曲の再構築)はオランダ・バッハ協会のYouTubeで耳にしてるし、装飾お化け的なプレーヤーは他にもいる。
驚きは前半2曲(ルベル:四大元素、ハイドン:昼)にあった。
ルベルは、楽器を持たずに純粋に指揮のみ。不協和音が多数出てくるんだけど、決して咆哮せず丁寧。フルート、ピッコロと弦のバランスが終始適切に保たれていた。あと、何気に指揮うまいw
この日の圧巻はハイドン。1stのソロパートを弾き振り。スコアの解釈も大胆。
そして度肝を抜かれたのが、急に2ndVnを弾いてみたり、Vlaを弾いてみたり、手で振ったり、とんでもないリーダーシップでオケを引っ張る。
あんまりそういうことやりすぎると、音楽が不自然になるものだけれども全くそれがない。
ヴィヴァルディは、佐藤の本領発揮って感じで本当に凄かった。ヴァイオリン一台で七変化を見せた演奏はあっという間に4曲駆け抜けて、アンコールは冬の二楽章。当然本編とは全く別なパターンの装飾。
佐藤のハイドンで見せたリーダシップと視野の広さは、普段オランダ・バッハ協会という最高峰のアンサンブルで、毎週合唱とオケを弾き振りしてることを考えれば当然なのかもね。
まさに世界の最前線で活躍する演奏家(というより芸術家)の凄みを嫌というほど見せつけられた一日だった。
高いクオリティでありながら、予定調和がないのがまさにアートのあるべき姿。
いやー、あれはオオタニサンクラスの日本人だよね。
当然客席も豪華で、有名な演奏家の姿もちらほら。
嗚呼、川崎は地獄ではなく天国だった