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ゼロ戦「無敵神話」の光と影➁ 今も生きる先の大戦の教訓
1 攻撃は最良の防御だったのか?
96艦戦の武装は、7.7mm機関銃(7.7mm機銃)2丁であったが、 全金属製単葉機が主流になると、機体にかなりの命中弾を与えても、パイロットへ の直撃などがない限り撃墜できず、優れた飛行性能だけでは名機といえなくなった。 旧軍機で初めて20mm砲を装備したのがゼロ戦であった。20mm弾は、たった1発で、敵機の主翼を飛散させるほどの威力を発揮した。これは弾の大きさ、重さ(10倍超)に留まらず、 7.7mm弾が金属の塊であるのに対し、弾の構造が違い、炸薬と信管を組み込んだ炸裂弾や焼夷弾にすることが可能であったからである。中島の小山悌 技師長が、「戦闘機は、機銃を運ぶ道具であり、更に言うならば弾丸を撃つための道具に過ぎない」と語ったとおり、戦闘機の航続力や運動性能は、弾を撃つための機動力でしかない。戦闘機は、敵機の侵攻を阻止、撃退し、撃墜する武装が極めて重要であり、破壊力と命中精度に加えて、攻撃力の持続という観点から携行弾数が搭乗員の生死を左右する。しかし、ゼロ戦の場合、最強とされる 20mm砲のシステムにこそ、主任設計技師が想像し得なかった最大の弱点が潜んでいた。
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(1)垂れて命中しない20mm砲
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