「本気でゴールを達成したい人とチームのための OKR」の感想と概要
少し前に流行ったOKRに関する本。人事評価のためだけの、半年の1回の「目標設定」に疑問を感じている人にはオススメです。
「なぜそれでは機能しないか?」
「なぜOKRだと機能するのか?」
なんとなくしか分かっていなかった事が、
本書を読んで、私はだいぶ整理できました。
本書について
OKRに関する本は、本書以外にもいくつかありますが、「一番実践に近い」という口コミをみて購入。実際の評判通り、自分がOKRを取り入れるイメージがしっかりと描けるくらい、導入・運用の仕方はもちろん、注意点やマインドセットなど、素人にも分かりやすく記載されており、大変勉強になりました。
また、ただのOKRの説明だけでなく、「ワクワクするような魅力的な目的でないと人は動かない」「理想を持ちながら現実を動かす」など、リーダーとしてのマインドを学べる一面もあります。
よく会社でも「属人化しないように!」「仕組み化して!」と言われる事があるかと思いますが、一回組み立てれば「はい!終了」みたいな都合の良い仕組みは無く、定期的に本気でメンテナンスしていく意識が重要なんだなと改めて認識させられました。
以下、
章ごとに個人的にメモっておきたい内容を、勝手な解釈とともに記載します。
はじめに
理想を持った現実主義者にならないといけない。理想もない現実主義者なら幾らでもいるんだよ。
というジブリの宮崎駿監督の言葉の引用からスタート。
本書を通して感じた事が、ある意味この一文に詰まっているとも言えます。OKRと対極にありそうな芸術家の引用からスタートするのがオシャレ。
私みたいな一般人は完全に惹き込まれました。
Chap.1 今こそ、組織の時代
「マーケティング、ブランディング、品質管理、技術革新、販売促進、買収といった企業活動に気をとられて、それを実現するのに欠かせない人間の情熱、やる気、目的意識といったことから目をそらしてしまう。」
『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』
ハワード・ビーハー著日本経済新聞出版社
仕事と「わくわく」のつながりを正しく理解し、意識し続けることができれば、「もやもや」に「わくわく」が勝る、全員が協力し合える組織になります。
「わくわく」することの効果として、チャレンジ促進、ストレス耐性など、普段以上の力が出る。また、目的を持つことこそが「わくわく」の源泉。
「自分の目的」と「組織の目的」があり、人は「自分の目的」に「わくわく」する。「組織の目的」にどうしても合わない場合は、別の組織にいくのが、個人にとっても組織にとってもプラス。
Chap.2 組織力の公式
組織力 = 個人の力の単純合計 + 相乗効果(プラスorマイナス)
個人力 = 最大出力 × 発揮率
高い目標を掲げて「最大出力」を成長させると同時に、エンゲージメントを高めて「発揮率」を高めることで個人の力が最大化される
【最大出力】
仕事の「経験」こそが最大出力を成長させるカギ。
成長につながるのは、背伸びしてやっと届くか届かないかの所にある(ストレッチゾーン)目標。
自ら振り返る「内省」と、リーダーからの振り返り支援「フィードバック」の2種類の振り返りでより高い成長を促せる。
※マイクロマネジメントはNG
立て直し策をメンバーが内省するのではなく、
リーダーが細かく支持してしまうと、
うまくいっても経験値にならない。
メンバーの成長を阻害してしまう。
【発揮率】
発揮率が高い組織はエンゲージメントが高い。
エンゲージメントを高める秘訣は「エンパワーメント」。エンパワーメントとは、従業員の持っている能力、意欲を最大限引き出し、自発的に仕事を進める力や権限を与えること。
権限移譲≠エンパワーメント。自立性の促進と支援という、現場リーダーからの積極的な関わりは必要。
■自立性の支援
過干渉もダメだが丸投げもNG
方向性・目的を明示し、
正しい理解をした上で任せる
■支援
適正なモニタリングとフィードバック、
承認・賞賛を行うことで、
業務環境を整える
■透明性
組織の透明性を高めることで、
メンバーへの信頼を高める。
透明性を高め、自律したメンバーが支援し合うことで個人も組織も成長できるようになることこそが、エンパワーメントの神髄
相乗効果の源泉である多様性は、諸刃の剣。多様性の負の側面を抑えるには、「共通の目的」と「必要最低限の規律」が必要。
Chap.3 変えるべきは意識ではなく仕組み
目標管理がうまくいかないのは目標が形骸化しているから。
具体的には
・適切な目標が設定されていない
・一度立てた目標が忘れ去られている
・フィードバックのタイミングが遅い
・目的(≒KGI)が共有されていない
・目標を個別管理している
・挑戦を評価できない
・目標管理の目的が人事評価になっている
仕組みが変われば習慣が変わる
習慣が変われば結果が変わる
結果が変われば意識が変わる
メンバーの意識を変えようと悩む前に、
仕組みを作ることで解決できる。
Chap.4 OKRで組織力が高まる
OKR=目的(O)+重要な結果指標(KR)
OKRは、「Objectives and Key Results」の頭文字。
1つの「目的(O:Objectives)」と、
2~5個の「重要な結果指標(KR:Key Results)」で構成。
定性的な「目的(O)」と、
数値などで表される「重要な結果指標(KR)」の
両方を併せ持つというのがポイント。
【目的を設定するポイント】
■挑戦的であること
「達成できたらすごい!」と思える
レベルで設定する事が求められる
■魅力的であること
「達成できれば最高だ!」
「ここ目指して頑張りたい!」
■一貫性を持つこと
全社、部署、チーム、個人の目的など、
全ての目的に一貫性を持つ。
【重要な結果指標を満たす4つのポイント】
■目的と結びついている
目的達成の具体的指針になっている。
■計測可能であること
成功・失敗の判断基準になる。
■容易ではないが、
達成可能な水準を目指すこと
成功確率50%くらい。
■重要なものに集中
3個程度、多くても5個まで。
本当に重要なものに力を注ぐ。
なぜ、OKRだとうまくいくのか?
■「共通の目的」に向かいベクトルが揃う
■目的、目標、進捗が共有される
透明性を実現し、全社員に公開される
■外部環境の変化にすばやく対応できる
3ヶ月ごとに目的を設定し、
週一回の高頻度でのフィードバック
■重要な事に集中できる
■高い目標を掲げる事ができる
ムーンショットを目指せる
現場リーダーにとってのOKRのメリット
■戦略の立案と整理ができる
OKRを設定するプロセスは
戦略略を明確に整理するプロセス
■リーダーシップを発揮しやすくなる
目的を明確に示せるので、
リーダーシップの第一歩を、
仕組みとしてサポートしてくれる
■ほどよい緊張感を保つ事ができる
常に公開されるので、
他の多くの人に見られる。
■マネジメントを仕組み化できる
OKRという共通言語を持つ事で、
目標、戦略がズレなく伝わる。
■メンバーの創造性を引き出せる
ゴールが大粒なので、
打ち手に対する発想も大胆になれる事が多い。
メンバー自身で考える余地が残されている。
■経営者の感覚に近づく事ができる
自らの目的を考え、高い目標を掲げる。
自チームを経営するミニ経営者になる。
MBO OKR
人事評価 査定【 目的 】組織の成長
現実的 保守的【設定水準】挑戦的 未来志向
年1回【設定頻度】3ヶ月に1回
年数回【進捗管理】毎週
上司と部下のみ【 公開 】全社、全員
100%【合格基準】60〜70%
Chap.5 OKRの始め方
ミッション、ビジョン、バリューを浸透させ、
戦略に落とし込む
ミッション
使命、任務、役割。組織の「存在意義」
ビジョン
ミッションに基づいた行動を行う中で
どこを目指すのかを示すもの。
バリュー
ミッションに基づいて、
ビジョンを目指す上で、
組織として大切にすべき価値観。
戦略
ミッション、ビジョン、バリューを
実現するのが戦略。
「やらなければならない」ことを
明確に決断する事が戦略。
【具体例:Yahoo!】
重要な結果指標(KR)を設定する
■何を目指したいのか決める
手段ではなく、目指す先を決める
■現在測定できているものを指標の前提にしない
現在の延長線上のものにしかならない
■「結果指標」を中心に設定する
仮に行動指標を設定しても
必ず結果指標とセットに。
■現状を明らかにして、期限を切る
■指標の計算方法を明確にする
■目的達成に対する影響の大きさと
影響を与えられる範囲で絞り込む
Chap.6 OKRの運用
運用の基本はフィードバック。
フィードバックを仕組み化してすれ違いをなくす。
-週初めのミーティング(チェックイン)-
■短時間で
■進捗の確認と今後の見込み
OKRの進捗は実績数値。
重要な結果指標の達成見込みの共有。
■今週のタスク確認
OKRに直結する優先タスクから
■実務上の障壁の洗い出し
-週終わりのミーティング(ウィンセッション)-
※より大きな組織単位で行うのが効果的
(最大20名程度)
■結果にかかわらず、各メンバーが
目標に挑んだことを承認・賞賛
■OKRの確認
上位のOKRから順に。
週初めのMTGで設定したタスクや
実務上の障壁について共有も。
■立て直し
責任を追求するのではなく、
問題の解決方法を考える
ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ
を意識して。
個人のフィードバック
■個人のOKR進捗状況の確認
(週一回)
■長期的な成長支援のための1on1
(月一回)
聴く8:2話す
四半期ごとの振り返りと再設定
さまざまな可能性がある中、
当初設定したOKRにとらわれすぎてはいけない。
KPT
keep:続けたいこと、良かったこと
problem:問題点、やめたいこと
try:新たに取り組みたいこと、挑戦したいこと
1、これら3点を議論しながら振り返る
2、KとPを各自考える
付箋などに記入
3、KとPを共有
4、Tを各自考える
5、Tを共有
6、リーダーが全責任をもって選定・決断
多数決はNG
ERRCぐりっどで次期戦略の整理
目的を定めた上で
何をやり何をやらないか明確化。
Eliminate:取り除いた、なくした要素
Raise:増やす、注力する要素
Reduce:減らす、注力しない要素
Create:新たに付け加える要素
OKRでコミュニケーションを活発に
■組織はコミュニケーションで強くなる
■コミュニケーション力ではなく、
仕組みに頼る
■成果についてロジカルに議論
「成果」を中心にコミュニケーション。
原因分析もロジカルにコミュニケーションを。
■OKRを共通言語化
「OKRの達成状況は?」
「このプランはOKRとどう関係?」
■OKRは組織を強くする
コミュニケーションツール
Chap.7 導入事例インタビュー
組織ごとに多様なOKRが存在する。
同じ運用は一つとしてない。
Ex.)エンジニアの個人OKRがない
単なるフレームワークにならないよう、
「わくわく」するようなやり方にカスタマイズして、
適したOKRを創り出す。