問題解決あるあるコラム#38:管理者が指標を現場に投げるからパフォーマンスが上がらない
こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。
問題解決あるあるコラム第38回のテーマは、「管理者が指標を現場に投げるからパフォーマンスが上がらない」です。組織の管理監督者であれば、監視指標を設定してプロセスの監視を指示することは当たり前です。でも、この監視指標、皆さん何か違和感を感じていませんか? 今回はその違和感について考えていきましょう。
KPIという名のKGI
このコラムのはるか昔、第3回でお話しした、KPI「Key Performance Indicator」とKGI「Key Goal Indicator」のことを覚えてますでしょうか? プロセスのパフォーマンスを測るKPIと、必達目標=ゴールの達成率を測るKGIを混同して使ってしまうと、「できてます報告が生まれる」ということをお話ししました。プロセスの監視指標は、組織の上位層から目標と共に降りてきます。組織の上にいけばいくほど、「必達」目標が設定されます。そうしてそこで決定された必達目標であるKGIが、ほぼ間違いなくKPIという名で現場に降りてきます。
自分のレイヤーのKGIを下層に下ろすと部下は結果オーライの仕事を始める
各部門の責任者がそれぞれの必達目標を考え設定することは、組織運営をする上でも必要不可欠なことです。そして、その目標をメンバーに共有することも必要です。でも、その必達目標を監視指標の「KPI」として部下に報告させるのは間違いです。なぜなら、部下がその「必達目標を達成すること」が目的になってしまうからです。そうすると、「数字=目標が達成されていればいいでしょ」というマインド生まれ、どんな取り組み方だろうと「最後に結果が出てればいいでしょ」という、結果オーライの仕事をし始めてしまいます。
自分の指標の数値は自分で集める
これは、そのレイヤーの管理者が自身で決めた、もしくは上位層によって決められた、指標の数値を「部下に報告させる」ことで招いてしまいます。KPIを部下に共有するのはかまいません。が、その数値の集計をさせることをしてはなりません。「監視」するのですから、その数字は自分で集めなければ「監視」したことになりません。ここの「監視測定プロセス」を効率化しようとして、部下に集計までさせることは、最早「監視」ではありません。「監視責任の放棄」です。
部下には自分たちの目標を決めさせる
自分の部下たちに組織の監視指標を共有したら、その指標を達成するために自分たちで「取り組む=努力する」目標を決めさせるのです。これがKPIです。「自分たちのパフォーマンスを維持・向上させることで、組織の目標を達成する」という「KPI→KGI」の関係を作ることが、本当の意味での「パフォーマンス評価」につながります。上から投げられた「必達目標」から、自分たちで決めた「努力目標」へシフトすることで、組織のパフォーマンス向上が期待できるようになります。
違和感の正体は「監視」の丸投げだった
「必達目標」は達成して当然なので、達成した後にふり返りが生まれません。仮に達成できなくても、「仕方ない」という「現状肯定」や、本気で思っていない「反省」が生まれるだけで、活動にフィードバックがかかりません。一方、「努力目標」は、達成してもしなくてもふり返りが生まれやすいのです。あそこが良くなかった、ここは良かった、これが次の課題だ、と次の取り組みへのインプットが生まれます。これによりパフォーマンスの改善が期待できるようになります。つまり、これまで「KPI、KPI」と追い回される割に良くなっている実感が感じられなかったのは、本来責任者が監視測定する数値=「KGI」を、部下の皆さんが監視測定させられていたからなのです。完全にレイヤーがずれてしまっているのです。
成果の見える化は結果オーライの弊害を生んでいた
このように、プロセスの有効性や効率を向上させようと導入されたマネジメントシステムが、その最大の売りである「プロセスパフォーマンスの可視化=measures」を重視するあまり、「KPIとKGIの誤用」と管理監督者がその監視プロセスまでを効率化し「現場に丸投げ」したことで、プロセスパフォーマンスとは程遠い「結果オーライ思考」を生み、未然防止よりも数値化しやすい「事後処理検出」による評価が正義となってしまいました。これにより、品質マネジメントシステムの「本来の目的」とは異なった運用が行われてしまっているのです。これでは、運用している側もメリットを感じられず、「アンチ」が増えてしまうのも頷けます。まずはこの絡まってしまった糸を解いていくことが必要なのかも知れません。
まとめ
品質を始めとしたさまざまなマネジメントシステムは、我々人間の特性と間違った理解、そしてちょっとした「ズレ」が積み重なり、本来の意図とは異なった使われ方をしてしまっています。でも、現状を正しく理解し、やりたいこととのギャップを明確にして「ズレ」を修正していけば、きっと多くの人や組織に「メリットのあるしくみだ」ということが理解してもらえるはずです。絡み合ってしまった糸も落ち着いてゆっくりたどっていけば、きっと解くことができます。希望を捨てずに取り組んでいきましょう!
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「仕事の基本はやっぱり5Sにあった」です。
次回もお楽しみに!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?