映画 Winny を観てきた
直接に何らかのご縁があった訳ではないのですが、当時の出来事をよく知っている身としては、この映画は気になってはいたのですが、お知り合いの何人かはしっかりと観に行かれたようで、ここは私も観ておかないと落ち着かないということで、映画館に足を運びました。
21世紀に入って直ぐの頃、普通の人でもインターネットを使うようになった時代、まずアメリカでナップスター事件が起こり、サーバレスなピア・ツー・ピアなサービスが注目されていました。この中で日本でも Winny というファイル共有ソフトが爆発的に広まっていました。ファイル共有ソフト自体は、ファイルを共有するという目的しかもっていませんが、それを使う人にはいろいろな目的があります。その中には倫理的に問題があったり法律に違反するようなことを目的にする人もいます。その結果、使った人が逮捕されるのは当たり前のことですが、日本の警察はソフトウェアの開発者を逮捕してしまったんですね。
Napster
Winny事件
金子勇 (プログラマー)
この映画は開発者である故金子勇氏の逮捕から判決までのドキュメンタリーです。
Winny
“ネット史上最大の事件”を描いた「Winny」撮影の裏側を東出昌大、三浦貴大、吹越満が語る
映画の中で金子さんが小学生の時に街の電気屋にあったPC-8001と戯れる場面があるのですが、私も中学に入った頃ですが、やはり秋葉原のパソコンショップでプロンプトを出して黙っているパソコンが寂しそうで、暗記していたデモプログラムを打ち込んでいたのを思い出しました。TK-80BSとかですから実際の時期は数年ズレています。私の小学生の時はまだパソコンなんか無くTTLで回路を組んでいた時代なので、あと数年若かったら人生におけるパソコンのインパクトは、もっと大きなものだったんだろうなとも思いました。
事件当時の部屋に写り込んでいるごちゃごちゃした様子を見て、機材や雑誌なども懐かしさ満載で、クラウドサービスも無く使う機材は自分で用意しないとならず資料もみんな本という時代、何だかモノがたくさんあったよなと感慨にふけりました。
映画としては俳優さんたちの演技も素晴らしく、わかりやすいストーリー展開にまとめられていてよく出来ているとは思うのですが、ドキュメンタリーなので派手な演出や意外性のある展開をするわけにもいかず、少しばかり地味な印象です。最後に本人を出演させてしまうのは、俳優さんの演技を打ち消してしまうところもあるので、もう少し控えめな方が良かったような気もします。
しかしながら、観客が望んでいると考えたのか、監督のセンスかはわかりませんが、登場人物の心情の模写が中心で、日本映画らしい浪花節感が漂います。事件の背景や、周囲の反応などはかなり省かれていて、コンプラなのか自主規制なのか、何かを言いたかったのかもしれませんが、かなり回りくどい方法でそれを表現しているような気もします。やはり刑事事件は判決が出ても配慮することが多いようで、スッキリしないものがあります。
個人的には当時は接続していたプロバイダを固定アドレスで利用していたので、間違ってもファイル共有ソフトを使えば裁判所に頼らなくても身元が特定されてしまうので、絶対にインストールしませんでした。興味を持っても、アナログ的に目で見て話を聞いて知るだけでした。それだけ危険を感じるようなソフトであったことだけは覚えています。初期のインターネット文化はアナーキーで反権力の匂いが強かったのは確かですが、個人の責任感は強く匿名と言っても、はっきり言えばユーザ管理を端折るための方便で、アノニマス接続であっても何らかの情報(たいていはメールアドレス)を知らせるのが礼儀だったようにも思います。この文化がネットの世界が広がった時に失われてしまったことが悲劇の一端ではあるのでしょう。この辺りの話は映画ではスッポリ抜け落ちています。
最後にしっかりオリジナルの情報を確認しておきましょう。
最高裁判決文
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/846/081846_hanrei.pdf
あれぇ「まん延」の「まん」はひらがななんだ。
ヘッダ画像はいらすとやさんより。
https://www.irasutoya.com/2013/07/blog-post_42.html
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