【ひよわな校長の処方箋64】楽しい仕事
学校は職場として楽しいところである。子供の成長を通して、生きるということの本質を学べる。日々、命の躍動を感じることができる。
ところが近年、教員は職として人気がない。採用試験の競争倍率が2倍を切ってしまった自治体もある。
その原因の一つは、マスコミなどによって強調されたブラックなイメージではないかと思う。実際、時間外労働は残業手当もなく時間も無制限だし、生徒や保護者などとの話し合いがうまくいかず人間関係で滅入ってしまうこともある。
確かにそうした問題は軽減されなくてはならない大きな課題ではあるが、そこから派生した職としての暗い印象がどんどん独り歩きしてしまい、もともとあった授業の楽しさや教育の味わい深さといったものが薄められてしまったようだ。
ブラックなのは確かにブラックだが、面白いのは確かに面白い。その面白さ、楽しさを伝える必要がある。このままだとますます教員のなり手がいなくなってしまう。教育は未来を創っている。教員のいない国に未来はない。
教育の面白さや授業の楽しさを一番知っているのは当事者の児童生徒や教員である。いろいろな情報媒体がそこにアプローチして学校の魅力を伝え広めてほしいのだが、学校自身もその努力をすべきだろう。
自分は勤務校で、授業だより「こねくと」と銘打って、普段の授業の楽しそうな様子を書き、保護者に配付してホームページにも発信している。行事の紹介や報告、また学校からのお願いなどを書いた昔ながらの学校だよりは目線が高くなりがちなのでやめた。「これだけがんばってやってます」という自己弁護のようにも見えるし、お願い、お願い、の連発も気になる。
授業だよりは、教師や生徒が「これだけがんばってます」というような内容ではなく、子どもの成長が感じられる授業中の一コマや、教師と生徒、また生徒同士の楽しそうな対話を切り取って、リアルな様子が伝わる写真と一緒に掲載している。「こねくと」というタイトルには、授業の中で子どもたちがつながっている様子を描きたいという思いもあるし、学校を外とつなげたいという思いもある。先日、ある保護者が校長室にわざわざ訪ねてこられ、「こねくと」を楽しみにしている、とただそれだけを伝えに来てくださった。
もちろん、教師自身が他の教師の授業の場面を読んで、ヒントにすることもあるし、掲載された教師は自分の授業を見直すきっかけにもなっている。まず、自分たちが楽しむことだ。
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