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5月4日
雨の日の後は店主のお気に入りの日。
少しにっこり窓の外をみて、布団から出た。
今日のまん丸おにぎりはさけ。
雨上がりの太陽の色と同じ色をしたさけは
真っ白のお米に包まれてギュッとに握られた。
暑い緑茶と、まん丸おにぎりを持って
家を出た。
おはよう トト。今日はいい天気やね。
そう言って扉を開けた。
カウンターに座って〈本日のメニュー〉
に思いを巡らせる。
〈本日のメニュー〉はオムライスと決めていた。
グリンピースは入れない。
中のケチャップライスは鶏肉と、たけのこ。
ソースと、卵は、、、、
薄焼きたまごに、ケチャップにしよう。
スープもつけようかな。
具はカブとキャベツと薄いベーコン。
コンソメに塩胡椒で味を整える。胡椒は多め。
デザートは今朝仕入れた、小さめの黄色いメロン。
今日はゆっくりとまん丸おにぎりを食べた。
緑茶もゆっくり飲んで、ほっと一息ついて仕込みに入った。
11:00 オープンです。
12:30ごろ扉が開いた。
黒い髪は後ろで一つに束ねてあり、薄いメイク。
大きな目をパチパチさせながら、1人の女性は入ってきた。
いらっしゃいませ。どうぞ。
少し来客に慣れた店主は、ドキドキしつつも、落ち着いた声でカウンターを勧めた。
女性はキョロキョロしながら椅子に座り、大きめのカバンを下ろた。
〈本日のメニュー〉はオムライスです。スープと食後にメロンとコーヒーか紅茶があります。
他のメニューは、、、?
トト。 では、毎日メニューは一つなんです。
大丈夫ですか?
あ、大丈夫です。
少し不思議そうな表情と共に、女性はうなづいた。
待っている間、女性は手帳を取り出して睨めっこしていた。
店主はきっと忙しいのだろうか。
はては、予定が埋まらないのだろうか。
などと答えの出ない思いを巡らせながら、
オムライスを作り始めた。
ケチャップライスを作るときは先にケチャップだけ炒める。パチパチと飛び散るから弱目の火で慎重に。
それから鶏肉とたけのこを炒めて、ごはんを入れる。
うん、いい感じ。
薄焼き卵のドレスを身にまとったチキンライスはにっこり笑っているように見えた。
つい、ケチャップでにっこり顔を描いてしまいそうになる。
最後に女性に口紅を塗るような感じで、そーっとケチャップを垂らして。
お待たせしました。
オムライスと、季節のスープです。
いただきます。
そう言って、女性は食べ始めた。
食べながら女性は少し話をした。
チキンライスの中のたけのこが気になって店主に尋ねたところから、会話は始まった。
女性はグリンピースが苦手らしい。
仕事中でも残してしまいたいといつも思うらしい。
子どもたちと食事を共にするらしく、いつも必死に食べていると。
こんな変わり種の具材ならいいのにな。
そう言ってきれいに食べ終えた。
食後のメロンと、飲み物ほ紅茶を選び、
また話をしながら食べた。
彼の話。仕事の話。プライベートなことを聞くと、店主は少し反応に困っていた。
お会計を済ませ、女性はにっこりと ごちそうさま。 といい、 トト。 の扉を開けた。
いつもよりたくさん話をした、店主。
片付けをしながら女性の姿に思いを馳せた。
仕事の姿。彼の前の姿。ここでの姿。
答えは出ないけど、ただ思いを巡らせていた。
(オムライス グリンピースは抜きで)
2022.2.19 カズ