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バックミラー

一足先に、妻の実家を後にしました。
 
「息子に乗っけてもらって、後から帰るわ」
近所のダムに釣りに出かけているので、日が暮れたら帰ってくるのです。
妻と私は、一緒の車でやってきたのですが、後から息子が合流して実家で過ごしていました。
 
お昼は、おせちをご馳走になりました。お腹いっぱいです。その上、コタツで昼寝なんかもします。ああ、幸せ。
「ジムは、いつからだっけ?」
あと2日もあるのか。食べた分、しっかりと汗をかきたいな。
 
陽が沈むころ、「お土産」をもらって、私は車に乗り込みました。ゆっくりと運転せねばなりません。なんせ、茶わん蒸しが助手席に乗っているからです。
 
「また来ます」そう言って、実家を出発しました。いつものことです。
 
ふと、バックミラーに目をやりました。義母が手を振っています。車内で手を振るわけにはいかないので、私はコクリと頭を下げました。

何か気になって、もう一度バックミラーを見上げます。
「ひょっとして、ずっと手を振ってくれているのかな」
陽が落ち、冷たい風のなかを。
 
やがて、手を振る姿が見えなくなりました。私が、遠ざかって行ったからです。
「今まで、ずっと手を振ってくれていたんですね」
あったかくなったのは、エアコンが効いてきたからではありませんでした。
 
ほどなくして、妻と息子が、仲よく帰ってきました。
「お母さん、いつも見えなくなるまで見送っているよ」
 
今年の、正月の風景です。


☆心があたたかくなったお話です。よろしければ、ご覧になってください。


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