【直樹の日常.12J】方便
電話を待つ。
かかってくるはずだ。
12時を過ぎてもかかってこない。
13時になって、こちらからかけた。
このまま先方が、忘れていて掛かってこないのかもしれない。
揉めると面倒くさい電話だから、待つことができなかった。
午前中にしとしと降っていた雨が
本降りになっていた。
相手はすまなそうにしている。
「ずっと待っててくださったんですか」
「いえいえ、どちらから電話するのか忘れてたんですよ」
忘れていたというのは方便のつもりだった。
電話を催促しているようで、申し訳なかった。
相手に気を遣わせたくない気持ちが、空回りした。
小心者の直樹である。