<読書>自転しながら公転する
久しぶりに山本文緒さんの小説を読みました。
25年くらい前に著者の小説に出会いました。
そのストーリー展開の面白さに感動して、その後次々と出版された著作を読みました。
確かTVドラマにもなり、著者は人気作家となりました。
それから、しばらく新作の発売がない時期がありました。
その時期、私も出産~育児で非常に忙しく、大好きな読書からも離れて過ごしていました。
数年前から、少しずつ読書に時間をとれるようになりました。
仕事も少ししていますし、相変わらず私が家事をしなくては、我が家の日常はまわっていきません。
隙間時間に、ぽつぽつと本の世界に触れています。
そのような日々のなか、久しぶりに著者の新刊に出会えました。
自転しながら公転する 著者:山本 文緒
30歳を過ぎ、実家で両親と同居し、地元のアウトレットモールのショップで契約社員として働く都。
おしゃれで、ファッションが大好きで、年齢の割にふわふわしているように見えますが、なかなか大変な事情を抱えています。
都の母は重い更年期障害で、都が寄り添わなくてはならないし、職場でも次々と問題が起こります。
貫一と出会いますが、貫一は高学歴ではなく、収入も多くはないので、都は貫一を結婚相手として考えていいのか迷ってしまいます。
また、貫一も学歴がないことがコンプレックスで、都にプロポーズをすることを迷っている様子です。(でも、貫一は身内を大切にする人です。結婚して家族として過ごすとき、「身内の面倒なことから逃げずに向き合うことができる人か否か」、は大切なポイントの一つだと思うので、私は貫一に好感を持ちました。)
恋愛、仕事のキャリア、家族の問題。
都には向き合うべき問題が山のようにあります。
そして、それらに向き合いつつ、自分の進む方向を模索していきます。
私自身は、都の母の桃枝に近い年齢です。
桃枝は結婚をして、夫を支えながら子育てをしてきましたが、現在は重い更年期の症状があり、家族の支えがなければ生活もできない状況です。
家族に対して申し訳ないという気持ちも持っています。
しかし、心身の不調が続き、思うように動けない。
仕事や結婚についてこれから選択をしなくいてはならない都も大変ですが、一方でそれらの選択をしてきた桃枝も、歳を重ねて、新たな問題を抱えながら生活しています。
未来への選択を迫られる30代の都も、選択を終えたが順調とはいえない50代の桃枝も、ともに苦労があります。
これは、かなりリアルな感じがしました。
都の選択、都の両親の選択。色々と考えながら読み進めました。
また、都の職場の人、地元の同世代の友人たちもそれぞれ事情を抱えつつ生活している様子が描かれていて、そちらも興味深かったです。
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生活していくのは楽しいことばかりではない。
厳しい選択を迫られることもある。
でも、その選択の先に、新たな未来がある。
その様なメッセージが感じられるストーリーでした。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。