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【キャリア】なぜ中年以降でローパフォーマーが増えるのか?
はじめに
今回取り上げたいのは、新興動画メディアPIVOTで取り上げられていた「人事ガチャの秘密。なぜ中年ローパフォーマーが増えるのか?」に関して。
なんともセンセーショナルでショッキングな内容であるが、まとめておこうと思う。
パーソル総合研究所 上席主任研究員の藤井 薫さんが提唱されている内容になる。藤井さんは『人事ガチャの秘密:配属・異動・昇進のからくり』という本を出版されている。
ミドルパフォーマーが放っておかれやすい理由
ここでミドルパフォーマーは、どの組織や組織でも構成される「262の法則」つまり「優秀な2割」、「平均的な6割」、「貢献度の低い2割」のうちの、真ん中に属する「平均的な6割」を指す。
ハイパフォーマー:積極的な配置転換
まず優秀な上位2割に関しては、その中でもさらに2つのグループに分かれる。
次世代経営人材(ハイポテンシャル人材):全体の1%。部長の中でも優秀層
その他の優秀層:普通の部長
ハイポテンシャルの次世代経営人材をどう見つけて育成するかは、どの会社も至上命題なので、この優秀層に関しては、全社単位で定期的にローテーションさせるなどして人事部も事業部門も目配りしている。
ただ、この優秀層はより良い成長機会を求めて、会社外への転職も積極的に行う人たちが多い。
なので、たとえばグローバル企業で1部門半年間でジョブローテーションを3-4年行って、次世代経営人材として手塩にかけて育成したとしても、その後に「ありがとうございました!XXX企業に転職します」と逃げられてしまうことも多いので、人事部としては、どうやって引き留めるかと観点で悩みの種になることもあるだろう。
ローパフォーマー:新たなマッチング先を探す
いわゆる下位2割に属する人たち。
日本は解雇規制が強い国なので、仕事の出来が悪いからといってすぐに解雇はできない。
それが故に、所属部門から人事部に対して『私の部門下だと パフォーマンスが芳しくないために、他の部門への異動を検討いただけますでしょうか?』 と相談が来て、 新たなマッチング先を探すという点で、ハイパフォーマーと同じく目配りされている。
ミドルパフォーマー:戦力としては機能している
実際には2:6:2の6割よりも多く、8-9割が属するとのことだが、しっかり機能している人たち。
相対評価で行くと、『標準・並』となるが、絶対評価で行くと『 毎年の業務目標はほぼ達成していて、戦力としては問題がない人たち』。
一見悪くなさそうだが、だからこそ事業部門から育成の対象として見過ごされやすい。
事業部門や人事部は、ハイパフォーマーの育成とローパフォーマーの配置転換で手一杯
ミドルパフォーマーは、ハイパフォーマーのように積極的に部門異動させて新しい経験を積ませて、次世代経営人材として育成するほどの対象ではないので、同じ部門で仕事をすることになり、そこでの成果は上げているので、事業部門からすると「可もなく不可もなくで、よく頑張っているね」ですまされやすい。
という理由から、ミドルパフォーマーは異動検討対象外になりがち。特にここでは30半ば〜40半ばを指す。というのも、入社して最初の10年は人事部も事業部門もある程度は目をかけているので。
とはいえ、「戦力として機能していていれば問題ないのでは?」と思うが、これが中年になってくると話が変わってくるという。なぜか?
なぜ、ミドルパフォーマーは40半ば以降でローパフォーマー化するのか?
これには大きく、 下記の2つの理由があると言う。
気力・体力・判断力の衰え
年功序列制なので、給料に期待値が見合わなくなる。
気力・体力・判断力の衰え
1つ目の「気力・体力・判断力の衰え」は身も蓋も無い話だが、さらに2つに分かれると思っている。
1つ目は、流動性知能(生得的な頭の良さ。地頭)は30代から40代に急速に低下しはじめるという人間一般的な現象。前頭前皮質が担う『推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力』などは、40を過ぎると衰えてくる。これは仕方ない。詳細は以前下記の記事で記載した。
これに関しては、積極的に結晶性知能(過去の経験による知識や知恵)を活用する戦いに移らないといけない。
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もう1つが、これはミドルパフォーマー特有だと思うが、異動対象外になりがちなので、10年近く同じ部署で同じような作業を行うことになる。そうすると当然ずっと同じことをやっているので成長意欲も落ちていくし、変化が乏しければ発想力なども衰えてくるのは必然であろう。
年功序列制で、給料に期待値が見合わなくなる
日本は年功序列制なので、同じミドルパフォーマーでも30代半ばよりも40代半ばの方が給料が上がっていることが多い。
戦力的にも特に問題がないので、毎年の給与査定では平均して年4%くらいずつ給与アップを繰り返す人も多いだろう。そうすると、給与ベースでの周囲からの期待値は漸増していくことになる。
30代半ばでは周囲からの期待値とパフォーマンスがトントンで見合っていたが、40代半ばになると、期待値だけ給与という側面で上がり、パフォーマンスは同じ業務を繰り返しているので相対的に下がってきたと見なされてしまう。
酷な話ではあるが、これが40代半ば以上でミドルパフォーマーがローパフォーマー化すると主張している所以である。
そして40代半ば以降にローパフォーマー化した人たちに会社は頭を悩ませることが多くなり、早期退職勧奨などを通じて放出対象となる。その前の10年は、ミドルパフォーマーとして何も戦力的にも問題がなかったように見えたために、会社も気づいていなくて、いきなり問題が出てきたように映ってしまう。
年功序列制の場合、こうしたミドルパフォーマーの人たちは、 典型的には大体40代で課長になるが、課長から部長になるのはその中の2割であり、部長になるほどの優秀層ではないので、残り20年間をずっと課長のまま過ごすことになる。
そして中間管理職として1on1 などのピープルマネージメントや、書類業務などをマネジメントルーティーンで時間を取られるようになり、自分の専門性がなかなか身に付かないまま定年を迎えることになる。という典型的な未来が待っている。
では、現在30代前半〜半ばのミドルパフォーマーの人たち(管理職にはなれなさそうと感じ始めた人たち)は、きたる40代中盤以降に備えて、キャリア形成として何をしておく必要があるのか?
複数の専門性を身につけて、スペシャリストを模索する
今の専門性とは別の専門性を身につける
今までの話からいくと、 ミドルパフォーマーの人たちがその会社の中で管理職になるのは、競争も熾烈だし厳しい。
というわけで、専門性を身に付けてスペシャリストを模索するのが一つの解決策になる。
具体的には、社内で新しいプロジェクトにチャレンジするような手挙げの機会がある場合には、積極的に参加して新しいスキルを身につけるなどをする。
ちなみに、1つの専門性を身につけてそこで生きる(つまりジョブ型)を実践するのもあると思うが、ジョブ型は良い面ばかりではなく、例えばジョブ型を採用しているドイツでは、管理職になれなかった人たちは40代でほぼ給与は頭打ちになる。同一労働をしているのだから当然であろう。日本だと年功序列制がまだ残っているので、そのままでも給与が漸増することがあるが、ジョブ型ではそうならない。
これに関しては、下記の「ジョブ型とメンバーシップ型の功罪」に関する記事で詳細を記載した。
というわけで、今所属している部署で身につけている専門性を深めつつ、他の専門性も模索して、1つではなく複数の専門性を身につけるという戦略を取る必要がある。
流行りのリスキリングなどもこの文脈に入るだろう。会社がリスキリングの機会を提供しているとは限らない(まだそこまで整備が整っていないか、そこまでの余裕がない)場合がほとんどなので、、、、
続きはこちらで記載しています。
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