読書感想文「「富士そば」は、なぜアルバイトにもボーナスを出すのか」丹 道夫 (著)
立ち食いそばチェーン・富士そば経営者・丹道夫の立志伝である。
仕事は人がする。その仕事の目標を達成するために組織を動かしていくことを経営とするならば,丹は,どう経営してきたか。その経営観である。リーダー・マネジャーからの権限委譲が重要と,経営書には繰り返し出てくる。では,何をどこまで委ねるのか。担は言う「基本的に,大体のことは『自分で判断しなさい』と,社員に任せる」。そして,「私の好きな言葉は『うまくやってくれ』」。規律や規則があって人がいるわけではなく,人がいて規律や規則がある。「うまくやってくれ」の一言で,組織が機能する方が当然,いい。
経営者の仕事とは「どうしたら従業員の意欲が出て,働きやすくなるかを考えること」の一つだけ,と言う丹。そのために経営者は儲かる仕事を見つけ,業績・売り上げを上げ,利益を配るのだ。貧しさに耐えながらも,孤独のつらさには耐えかねた経験が,人を大事にする経営となった。
わかりやすく手本としやすいこの本は,多くの人に教科書の役割を果たしていくことだろう。