読書感想文「「松本清張」で読む昭和史」原 武史 (著)
現在と地続きの「昭和」である。令和にとって平成が前例となるが,その平成に色濃く影響したのが,昭和である。昭和とは何か。ずっと続いたのが,昭和である。昭和という元号があまりにも長く続いたせいで,昭和が当たり前になり過ぎて,年の表記が昭和であることの不便さや非効率さが感じられなくなった。当たり前すぎる世間としての昭和に,いや,そうじゃねーだろ,と言ったのが松本清張である。上っ面の昭和史に異議申し立てをしたのだ。
それを入念な事実や証拠を突きつけて,掘り出した「暗部」に裏付けを積み重ねた。そうした批判を跳ね除ける綿密さが,今なお,読者を惹きつけている理由だろう。
令和はコロナとともにスタートした。人,モノ,情報が溢れ,行き交った時代から,慎重になることを求められる時代として,である。「お言葉」もダイレクトではなくなくった。しかしながら,平成と令和の関係のみではなく,昭和から今を照射するために手に取ってみてもらいたい一冊だ。
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